子どもとYouTubeとの関わり方をどうすればいいのか――。保護者のみなさんは年々難しさを感じているのではないでしょうか。スガカズ(@sugakazu)さんの家庭の、「親子(父と子)でYouTube動画を初めてみたら思いのほかよい経験になった」エピソードを紹介します。
外出自粛生活の中で思いついた「一緒にYouTubeを始める」
現在、夫と子供2人の3人が、YouTubeのライブ配信や動画編集といった活動をしています。きっかけになったのはCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)による外出自粛。当分これまで通りの生活はできそうにないと思ったとき、「今の生活の中で新しい経験ができないか」と夫が考え始めたことです。
現在9歳の次男は、元々小2の時から「YouTuberになりたい!」と言っていました。おそらく子どもにとって「華やかで楽しそうな職業」に見えたのかもしれません。小4になった今は、中1の長男と一緒にゲームにハマっていました。
夫はそこに着目して、コロナで自粛中の期間にYouTube配信を経験させて「見る側から作る側へ」「現実(作る側の大変さ)を知る」きっかけを作りたいと考えたといいます。
「一緒にYouTube始めてみようか」「えっ やってもいいの?」――中1の長男は一人で好きな事を取り組むタイプなので少し喜んだ程度なのですが、小4の次男は元々興味があったので大変喜んでいました。
配信する上で決めた家庭内ルール
ハマっていたゲームが実況などの配信を許可していたので、ゲームプレイのライブ配信をすることに。始める前に決めたのは「ルール」です。
- アカウントやコンテンツは全て父親が管理、同伴
- ゲームの前は必ず2時間勉強
- 1日のゲーム時間は2時間(配信に使うも使わないも2時間の中でおさめる)
- 親子で継続させる
- 言葉遣い、個人情報に気をつける
- クラスメイトに口外しない
未成年者が動画を投稿・配信する際に、アカウントを保護者が管理することは、YouTubeのポリシーです。そこは大前提とした上で、家庭内でのルールを決めました。
「やりたいこと」(ゲーム、ゲーム配信)だけではなく、「やるべきこと」(勉強、習い事)も大事にしてほしいので、時間に関する制限を設けました。マナーの観点からは、誰が見ているのかわからないので、きちんとした言葉遣いや不快な気持ちにならない言動を心がけるよう指導しました。
また、学校では特にYouTubeに関する禁止事項などはありませんが、クラスメイトに「配信をやっている」と口外しないように言いきかせました。「YouTubeを配信している」という子ども同士だけの情報だと、背景が組み取れずこちらの目的が歪曲して伝わってしまう恐れがあるからです。
次男の小4という年齢は、そういう「こういう理由があるから言っちゃだめだよ」という理屈が通じ始めるころ。遅くはないが早すぎるわけでもなさそう……と感じました(もちろん各家庭の判断によると思います)。
次男の行動に変化が
長男、次男、そして夫(父)がゲームをプレイしながら、何気ないトークをするようなライブ配信です。顔出しはしておらず、あまり「子どもが配信しています」と前面に押し出さないようにしています。
最初は視聴者もいないので子どもたちも気軽にやっていましたが、続けていると少しずつ視聴者が増えてきました。「初めまして」の人や、プレイにコメントしてくれる人からのチャットに、緊張してしゃべれなくなってしまう次男。でも自分から「難しいけどやっぱり見てくれる人がいるのはうれしい!」「がんばって喋る!」とやる気を出しています。
また、配信をするようになってから、次男の日常の行動に変化が見られました。YouTubeという昔から挑戦したいと思っていた事ができるのがうれしいようで、
- 自分から勉強を始める
- 約束した内容を毎日守る
- 自分の行動に気をつける
- やりたいことのためにやらなければいけないことについてより理解する
――というふうに変化しました。「勉強を2時間する」「配信込みでゲームの時間は2時間」という“縛り”があるので、「お父さんが仕事終わるまでに宿題をやる」「遊ぶゲームの時間は30分で、残りの時間を配信に使う」など、自分で時間配分を考えるようになっています。
意外に親が大変
私は、始めのころ「子どもが余計なひと言を喋るのでは……」と心配で、夫にしつこく「管理する側として気をつけてね」と言っていました。言葉遣いなども心配ですが、本名や住所などの個人情報をうっかり言ってしまわないか気がかりでした。
ですが思った以上に子ども(特に次男)が頑張っているので、今ではこっそり応援中。サムネイル(アイキャッチ)やアイコンなどの画像づくりなどを手伝っています。
しばらく継続してみて思ったことは、「子どもも勉強などのやるべきことの両立が大変だが、管理する側(夫)はもっと大変」ということ。
- 私(妻)に納得してもらう
- 生活と仕事とは別で時間を確保する必要がある
- 配信環境やデバイスなどの環境調整を行う
夫はサービスのユーザビリティ向上を企画段階からやるエンジニア。仕事のやりがいポイントを「何のためにやるか。言葉によって相手がどう思うか」「要件を考えて実装することが楽しい」と話していて、今回は子どもたちに作る側の面白さや、他人の前に出る経験、物事を継続することの大事さを伝えたいようです。
継続の大事さを伝えるためには、最初に決めたルールを大人だけの都合で破ってはいけません。子どもと同様、仕事(やるべきこと)と配信の両立はけっこう大変なようです。ちなみに「親もルールを守る」というのは、ゲーム内課金についても同じ。まだ子ども自身、お金に関しての意識が低いと感じるため、課金は基本的には反対の立場で、親も「課金をしない」という子どものルールに合わせています。
……と、大変といいつつも、現在は親も子どもも楽しみながら続けています。実は夫が一番楽しんでいるようで、「こんなに楽しいとは思わなかった。自分が管理できる間は絶対に続けたい」と言っています。
「リスクを気にするとキリがないけど、リスクを減らせるならYouTubeは十分に社会勉強になると感じました。YouTubeに限らず、SNSはこの先絶対一人で利用するシーンが出てくるので今のうちに指導していこうと思っています」(夫)
また、当初考えていた「作る側の大変さ」については、長い時間をかけて教えていくものだと思うため、ライブ配信の次のステップとして動画の構成案にチャレンジしてもらう予定です。この活動を通じて、ネットリテラシーの勉強やクリエイティブ経験を積めるといいな、と父子の様子を応援しています。
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