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「世にも奇妙な物語」「ブラック・ミラー」に続く“家族愛×恐怖”のオムニバス 「Welcome to the BLUMHOUSE」を見てほしい

「パラノーマル・アクティビティ」「セッション」「ザ・ハント」のスタジオが贈るオムニバスです。

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 「ブラムハウス・プロダクションズ」という映画製作会社をご存じでしょうか。ハリウッドの有名プロデューサー、ジェイソン・ブラムを筆頭に設立された映画プロダクションで、「パラノーマル・アクティビティ」「セッション」「ゲットアウト」など、数多くのヒット作を世に送り出しています。先日公開された“人間狩りアクション”「ザ・ハント」も最高でした。



 一方でブラムハウスには“裏の顔”があり……若手監督による低予算の優れたホラー映画にも力を入れているのです。B級映画好きとしては本当にありがたい!!!

 制作会社まで気にして映画を観る人も少ないでしょうし、日本での知名度はまだまだ低いブラムハウスですが、僕は激押ししています。

 そんなブラムハウスが現在、Amazonスタジオと組んで「Welcome to the BLUMHOUSE」と題したアンソロジーを展開しています。「家族と愛」をテーマに、それぞれの監督の視点でホラー・サスペンスとして制作した8本の映画をAmazonプライムで配信するというもの。



 現在4作品がリリースされており、残り4本の公開日は未定。ぜひこのアンソロジーで日本での知名度も上がってほしいところなんですが、悲しいかな日本ではほとんど話題にはなっていないんですよね。ふざけてる!

 というわけで今回は、その「Welcome to the BLUMHOUSE」で配信中の4篇を鑑賞してレビューしてみたいと思います。

「THE LIE (邦題:冷たい嘘)」



 主人公は離婚した夫婦とその娘。ある日、娘のケイラは口論の末に親友を殺してしまう。その事実を知った元夫婦・ジェイとレベッカは、娘を守ろうと事件の隠蔽に手を染めるが……。

 前述したように「Welcome to the BLUMHOUSE」では“家族と愛”というテーマが共通しており、本作はそれが最もストレートに描写されています。娘を犯罪者にしたくない気持ちから嘘をつき続け、どんどんドツボに嵌っていく親の姿が非常に痛々しく、ホラーというよりはドラマと呼べる内容です。ピーター・サースガードとミレイユ・イーノスというシリアスな演技派2人によるアンサンブルも見応えあり。

 白を基調とした映像が人物たちの罪を際立たせ、鑑賞者のモラルを問うてくる様はなかなか強烈。誰しもが、自分の家族のことを思い出し、「もし自分だったら……」と考えずにはいられない作品でしょう。

 また、最悪の関係性だった元夫婦が、娘の犯した“罪”を絆にお互いと向き合うことになる展開も、この手の映画らしく皮肉が利いていて面白い。非常にミニマルな話ではありますが、サスペンスドラマがお好きな方は大いに楽しめると思います。

 ただねえ……肝心の脚本がどうにもな印象。これだけキャッチーな題材なので、ジャンルとしての面白さは当然保証されているわけですけど、終盤の展開がひどい。ネタバレするわけにはいかないので、これはもう観ていただく他ないんですけど、この展開に納得できる人っているのかなあ。いや〜俺はむりだな〜。

 というわけで、ミニマルでスタンダードな物語であるかと思いきや、終盤めちゃくちゃになってしまうという変な映画でした。ビジュアルが素晴らしく、ラストの展開に驚いてほしいので、おすすめ度は高いです。

 それにしても、「警察いけや!」と思ってしまうのは、僕が独身だからなんでしょうか。愛って難しいですね。



「BLACK BOX」



 交通事故で妻を亡くし、自らの記憶まで失ってしまった主人公・ノーラン。彼は遺された娘・エヴァと再び暮らし始めるが、自分のことも娘のことも思い出せない生活は困難を極めるものだった。そんな中、自分の潜在意識にダイブして記憶を拾い集める治療プログラムを勧められたノーラン。ところが、プログラムで見せられた“思い出”は、今の生活とは全く違うものだった……。

 自分の脳内を旅するという「インセプション」(主人公の名前がノーランというのも実は……?)や「エターナル・サンシャイン」をほうふつとさせる物語。記憶を失った主人公は、現在の自分と矛盾する記憶の謎を解明しようと奔走するわけです。非常に興味深いお話ですよね。

 で、肝心の内容ですが……傑作!!! これはめちゃくちゃ面白いですよ!!!

 前述の通り、記憶や潜在意識を描いた映画は他にもいくつかありますが、よりサスペンスフルに、よりホラーチックに描写されたそのビジュアルは独創性があって素晴らしい。脳内にあらわれる化け物が怖いんですよ……。主人公の隠された記憶が徐々に明かされるミステリーの側面も見応えがあって、単なるアイデア勝負ではなく、アイデアの面白さを最大化する脚本になっています。

 さらには「家族」の描写もすばらしい。主人公の娘・エヴァは、まだ幼い子どもでありながら、母親を失った悲しみを押し殺し、父親のケアに務めるのです。食事を作ったり、就職活動のアドバイスまで、「私がいないとダメなんだから……」と愚痴をこぼしながら父親を助ける姿、そしてそんな娘の愛に応えようとするもうまくいかない主人公の姿は、「もうこの2人のヒューマンドラマを見せてくれ!」と思ってしまうほど感動的。

 しかし、本作はサスペンスホラー。事態は思わぬ方向に転がっていき、最後にはまったく予想外の結末に着地します。しょうもない映画がうたう陳腐な「二転三転するストーリー!」ではなく、脳を驚きでひっくり返すような正真正銘の二転三転です。

 純粋なスリラーを期待する方はもちろん、“家族愛”というテーマに触れたい方も大いに満足できる、まさに「Welcome to the BLUMHOUSE」を象徴する作品。とにかく泣けるんですよ。ブラムハウスの映画で泣いたのって初めてかもしれません。ジャンルを超えて、幅広い人たちにオススメしたい傑作です。ぜひご鑑賞ください。



「EVIL EYE」



 出身地であるインドを離れ、アメリカで生活している主人公・パッラヴィー。彼女は、干渉的な母親・ウシャから、毎日のように電話で結婚を急かされていた。そんな中、パッラヴィーにはついにサンディープという恋人ができる。しかし、彼の存在を知ったウシャは、かつて自分を支配していたDV男との共通点を感じ……。

 母娘の関係を描いた本作。「あんたいつ結婚すんのよ」と地元から電話をかけてくる母親とウザがる娘という、言ってしまえばあるあるな風景がそのままサスペンスになっていく点が見どころといえるでしょう。

 舞台はアメリカながら、インドの宗教観・結婚観が色濃く反映された会話もなかなか興味深いです。「結婚するまで同棲はダメ」など、より“家族になる”事に重きを置いた母親の(作中では古いとされている)考え方と、現代的な思想を持ち、当然反発しながらも母親を尊重したいと考える娘のドラマは素直に見応えがあります。

 しかし、うーん、これは作品としては中途半端でしょう。ドラマ部分は確かに興味深い点が多いんですが、サスペンスとしてはあまりに予定調和すぎて……。

 いうなれば、空気の読めない映画、というか。ドラマが面白くなってきた部分でサスペンスが入ってきて、サスペンスに興味を持ち始めた時点で急にドラマっぽくなっていくというか……。ドラマとしては処理しづらい部分をサスペンスで、サスペンスとして処理しづらい部分をドラマで片付けてるような、消極的な印象を感じてしまうんですよねえ。いじわる言い過ぎかなあ。

 そもそもが邪悪な眼(=EVIL EYE)をテーマとしたお話なので、こういう着地になるのは仕方がないというか、「う〜ん…」と思ってしまう部分そのものが作品のキモではあるんですけど、しっかりドラマとして描き切ってほしかったのが率直な感想です。サスペンスとしては相当無理のある設定ですからね。

 まあ、これは僕がひねくれているだけなので、何も考えずに観れば楽しめる作品なのは間違いありません。トンデモ展開に興味のある方はぜひ。



「Nocturne」



 偉大なピアノ奏者を目指し、音楽学校に通う16歳の双子姉妹、ジュリエットとヴィヴィアン。学校を代表する実力の持ち主として注目を浴びる姉・ヴィヴィアンの影で、ジュリエットは嫉妬に駆られながらも努力を続けていた。そんな中、オーディションでヴィヴィアンに勝った女生徒が謎の自殺を遂げる。彼女の遺品である不気味なノートを拾ったジュリエットは、徐々にそのノートに取りつかれていき……。

 大人が主人公だった前3作とは打って変わって、ティーンエージャーの視点で描かれた本作。さらに、“嫉妬”というテーマを主軸に置いて、姉妹のゆがんだ関係性を描き出す、4作品の中でもダークな一面の強い作品。そういったお話なので、映画全体も直接的なショックシーンが頻発するというよりは、雰囲気重視で、アート寄りというかインディペンデントっぽい作り。この辺は好みが分かれるところかもしれません。終盤の展開の解釈も、観る人にとって変わってくるでしょう。

 で、中身なんですが、「ブラックスワン」をほうふつとさせられて、なかなか面白かったです。音楽にのめり込む主人公像は、同じくブラムハウス製作の「セッション」風味も感じられたり。

 ノートに潜む“悪魔”の存在に取りつかれ、だんだんと我を失っていく主人公は恐ろしくありつつも、しかし報われない努力、姉への嫉妬心が丁寧に描かれる序盤戦のおかげで、否応にも感情移入してしまう切ない存在。本当、見ててしんどいというか、主人公が、ストイックでいい子な分、それこそ親が子を見守るような気持ちになってしまいました。本当イヤな奴ばっかなんですよ、出てくるやつら。

 登場人物たちがまったく信用できない中、主人公がティーンエイジャーということでちょっとした恋愛描写も。とは言ってもオマケ程度で、まあ、個人的にはもっと青春ホラーの側面が強ければうれしかったんですが、主人公の性格同様、作品自体もストイックに仕上がっているというところでしょうか。ちょっといつも扱っているようなボンクラ映画と毛色が違う分、感想を書くのがむずかしいですね。

 正直かなり地味な映画です。でも個人的には「BLACK BOX」に次いでお気に入り。ソリッドな映像表現と、「ブラックスワン」のようなゆがんだ主人公像に興味のある方は必見だと思います。





 というわけで、今回は「Welcome to the BLUMHOUSE」内の4作を紹介させていただきました。とにかくオススメは「BLACK BOX」ですが(4本に1本くらいのペースで傑作がある、というのはブラムハウス作品全体にいえることです)、低予算映画としてはどれも一定のクオリティに達している作品ばかりで、残りの4本が配信されるのが待ち遠しいところです。本当悲しいくらい話題になってないので、もっといろんな方に鑑賞していただいて、ブラムハウス作品に興味を持っていただきたいですね。

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