現実の「将棋電王戦FINAL」に着想を得た映画「AWAKE」 モヤモヤが残る対局に付けたもう1つの“決着”(1/4 ページ)
映画「AWAKE」は先入観なく見てほしい傑作エンタメだった。
映画「AWAKE」が、2020年12月25日より公開されている。
本作は、2015年に開催された「将棋電王戦FINAL・第5局」という、現実で行われたプロ棋士と将棋ソフトウェアによる戦いに着想を得ている。
本作はその実際の対局をリスペクトしつつも、創作となるストーリーに多大な“意味”を持たせた、誰もが楽しめる傑作エンターテインメントだった。具体的な魅力を、以下に紹介していこう。
1:かつてのライバルと再戦する青春物語
本作のあらすじを簡潔に記しておこう。20歳の時にプロ棋士になる夢を諦めた英一(吉沢亮)は大学に進学し、「人工知能研究会」の扉をたたく。そこでAI(人工知能)のプログラム開発に没頭し続けた英一を待っていたのは、開発した独自のAI「AWAKE」で、かつてのライバルでもある人気棋士・浅川陸(若葉竜也)と対局するという運命だった。
もっとかいつまんで言えば、「苦心して開発したAIで天才棋士と対決する」という物語だ。人間VS人間ではなく、人間VS (人間が開発した)AIという対決の構図がある。
同時に、これは(プロ棋士という)夢に敗れた青年が、かつてのライバルと決着をつけるという、“再戦”の物語でもある。その戦いまでの両者の内面や葛藤は、彼らの幼少期から丁寧かつテンポよく描かれており、特に「将棋しかしてこなかった」主人公がいったんは夢を諦めるというどん底に落ちても、新たな夢を見つけ、それに向かって突き進む様は、大いに感情移入ができるだろう。
その過程はエンターテインメントとして面白いだけでなく、夢に敗れたことがある人、もしくは夢を見つけられていないという人が見れば、勇気や希望につながるメッセージとしても受け取れる。将棋という題材はもとより、人生の意義を見つけようと“もがく“青春物語を期待する人にも、この「AWAKE」は大いにオススメできるのだ。
2:素晴らしい“意味”を持たせた物語
本作は、乃木坂46のミュージックビデオなどを手掛けてきた、気鋭の映像ディレクター・山田篤宏監督の本格的劇場映画デビュー作だ。しかも、2017年の第1回木下グループ新人監督賞グランプリに輝いた、オリジナルシナリオの映画化作品となっている。
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