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「女の子は何でも許してくれる女神ではない」 「ヒーリングっどプリキュア」は子どもたちに何を伝えたかったのかサラリーマン、プリキュアを語る(2/2 ページ)

ヒープリで何が描かれたのか、公開されている文献を中心に紐解いていきます。ヒープリ、最高でした。

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女の子は何でも許してくれる女神じゃない

 香村氏は、さらに続けます。

近年の「プリキュア」では、敵と和解して彼らを救済する結末が続いてきていたと思うんです。それは本当にいいことだと思っています。
ただ、時にそれが、今の世にはびこる女の子への社会的圧力や扱い等と合体すると、それは女の子たちを追い詰めてしまうことはあるかもしれない、と。
無意識に「女の子だから優しくしなきゃいけない」という強要にすり替わって、悪いヤツにつけ込まれて酷い目にあったりしないかしらと。
もちろん和解や救済はすばらしいことだと思うんです。でもそれにこだわるあまり、自分の心が死んでしまっては元も子もないのでは……。
(徳間書店『Animage(アニメージュ)』2021年03月号 P70から ※強調表現は記事作成者による)


 「プリキュアは優しい」といった表現が、いつの間にか「プリキュアだから優しくないといけない」にすり代わり、さらに「女の子だから優しくないといけない」という抑圧へと遷移し、悪い存在に利用されることを危惧していたようです。

ヒーリングっど プリキュア アニメ ニチアサ
「女の子だから優しくしないといけない」ということはない

 そして香村氏は「女の子は何でも受け止めて何でも許してくれる女神ではない」と答えます。

香村 そうですね。女の子は何でも受け止めて何でも許してくれる女神ではありません。観てくれている小さな女の子たちにも、今まさにダルイゼンみたいな存在がいないとも限りません。
日常の中で、女の子だからとつけ込まれてしまったり……。そんな時に、「自分を一番大事に思っていいんだよ!それで何か責められたとしても、プリキュアはあなたの味方だよ!」ってそういう事を伝えたくて。
「とにかく、あなたにすこやかに生きていてほしい」という願いを込めて、一年間やってきたんです。
(徳間書店『Animage(アニメージュ)』2021年03月号 P70から ※強調表現は記事作成者による)


 自分の心を殺してまで、他人を救う必要はなく、まずは自分を一番大事に思い、助けられる範囲で周囲を助ける生き方もあることを子どもたちに示したのです。

ヒーリングっど プリキュア アニメ ニチアサ
プリキュアたちはどこにでもいる、普通の女の子

負けないために戦う

 終盤、花寺のどかは「勝つためではなく、負けないために戦う」とネオキングビョーゲンに啖呵(たんか)を切ります。

 「負けないために戦う」とは、すなわち「わざわざ敵を見いだし攻撃することはしないけど、自分の尊厳を脅かす存在が攻撃してくるようであれば、断固として戦います」という姿勢です。

 「ヒーリングっどプリキュア」で描かれたのは「生存競争」としての勝ち負けではなく、「私たちは、ただ受け入れ許すだけの都合の良い存在にはならない」というメッセージだと思うのです。

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「負けないために戦う」

 花寺のどかは優しい娘です。しかし、その優しさが自己犠牲のような「一方通行の誰かが与えるだけの優しさ」では世界は広がらないのです。

 その優しさを自分にも向けて、みんなで優しさを持ち寄って手をつなげば、きっと「すこやかな世界」になる、そのために戦う、ということを「ヒーリングっどプリキュア」は描いたのです。


最終回で描かれた「人間だってビョーゲンズと同じ」

 そして最終回では、これまで「ヒーリングっどプリキュア」がおそらく意図的に避けてきた「人間だって自然を破壊し動物の命を奪っている。ビョーゲンズと同じだ」といったテーゼも提示されました。

 ヒーリングガーデンの女王テアティーヌは、人間が過度に地球環境を破壊するようであれば、「人間をも浄化する可能性」を示唆します。人間だって道を間違えば、ヒーリングアニマルに浄化される対象になりうる、というややビターな展開となりました。

ヒーリングっど プリキュア アニメ ニチアサ
ヒーリングガーデンの女王、テアティーヌ(左)とネオキングビョーゲン(右)

 プリキュアたちは「最悪な結果にならないように、何ができるのかみんなで考えていく」とし、未来に希望を持ち続けます。「生きることは戦うこと」はビョーゲンズとの戦いだけではなく、この先の人生でも続くのです。「すこやかに生きる」ために、彼女たちはそれぞれできることで戦い続ける、そんな最終回となりました。

ヒーリングっど プリキュア アニメ ニチアサ
ヒーリングガーデンで風鈴アスミと再会する3人

「プリキュアは、自分を大事にするあなたの味方だよ」

 「シリーズで1番優しいプリキュアにしたい」として始まった「ヒーリングっどプリキュア」は「優しくあるために、戦い続ける」という地点に達しました。

 最後に「自分ができることは何だろう?」「まずは知ることが大事」を子どもたちに問いかけ、幕を閉じました。

 そしてずっと貫かれてた「プリキュアは、自分を大事にするあなたの味方だよ」というメッセージ。

 その思いが、1年間プリキュアを応援してくれた子どもたちの「未来の勇気」になるのであれば一人の娘を持つ親としても、とてもうれしい。

 いつだってプリキュアは子どもたちの味方なのだから。


「ヒーリングっど プリキュア」
毎週日曜8時30分より
ABC・テレビ朝日系列にて放送中
(C)ABC-A・東映アニメーション


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