バーチャルYouTuber、マシーナリーとも子による不定期コラム第32回(連載一覧)。今や飛ぶ鳥を落とす勢いの「ウマ娘」、マシーナリーとも子も例にもれず遊んでいたようですが……本当にハマってない?
ライター:マシーナリーとも子
徳で動くバーチャルYouTuber(サイボーグ)。「アイドルマスター シンデレラガールズ」の池袋晶葉ちゃんのファンやプロデューサーを増やして投票してもらうために2018年4月に活動開始。前世はプラモ雑誌の編集をしていたとも言われているが定かではない。現在は自分のグッズを売ったりライターやったりして糊口をしのいでいる。お仕事募集中。
YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/user/barzam154
wiki:https://wikiwiki.jp/mashitomo/
ポータルサイト:https://www.machinery-tomoko.com/
ウマ娘? ハマってないですよ
なんか……はやってますね。「ウマ娘 プリティダービー」。ウマ娘、ウマ娘ね。マシーナリーとも子もご多分に漏れずやってますよ。
いやでもそんなにハマってはいないんですよ。アニメも見てたわけじゃないし……あと競馬も1回しかやったことなくて知識皆無だし……。
あとウマ娘のサービス開始って2月24日じゃない? 私始めたのそれから1カ月近くたった3月20日なんだよね。始めた理由もなんかちょうど「アークナイツ」がイベントのはざまでログイン意欲が失せてたときに「あ、なんか時間あるから周りで評判のウマ娘に触ってみるのもいい経験かもな」って思ったくらいで、なんかそんなにガツガツしてたわけじゃないんだよね。ちょっとやってみようかなと思ったくらいで。だから全然ハマってないんだよね。
最初のウマ娘
初めての育成ウマ娘に選んだのはダイワスカーレットだった。なんかさ、特にこの子の外見がすごい好みだなって思ったわけではなかったんだよね。ただこの手のゲームって基本的な遊び方を教えてくれるチュートリアルがあるじゃない?
そのチュートリアルでさ、試しに育てさせてもらえるウマ娘がダイワスカーレットなのね。トレーニングして、レース出て、ライブ見て、育成が終わるのね。それで「じゃあ後は君自身の手で頑張ってくれ!」って放り出されるわけ。
えっ? そういう?
私はいいよ、私は。でも数週間で育成放り出されたダイワスカーレットちゃんはどうなっちゃうんだよ。お前ら……それでいいのか? 大事な生徒に対してそんな……ゲームを始めたばかりのぺーぺーのトレーナーの練習に使わせて終わりって……ちょっと薄情じゃないのかい? あたしゃ放っておけないよ。そう思ったら最初のウマ娘にダイワスカーレットを選ばないわけにはいかなかった。別にこのゲームにハマったわけじゃないが……お前さんの面倒は私が見てやるよ、スカ。
既にいろんなところで言われてるので今更なんだけどこのゲーム、女の子たちの表情がすばらしい。ふだんはニコニコキャピキャピしてるかわいい女の子たちが、レース終盤では鬼気迫る表情になるのはなるほど胸にくるものがある。
でもね、私が「すげーな」って思ったのは負けたときの表情なんだよ。
ダイワスカーレットがかなり負けたとき、まあ分かりやすくガッカリする。そうだよな。残念だよな。だがこれはまだいい。これはまだ耐えられる。問題はわずかな差で負けたときだ。
2位でゴールインしたときのこの顔を見てくれ……。
過剰には落ち込まない、頭を軽く垂らし、キュッと口を結ぶダイワスカーレットの顔を見たとき、胸の真ん中に氷を刺されたような感覚が走った。この感覚はなんだ? そうだ、私はこの表情に覚えがある……。私はこの表情をしたことが恐らく過去にある。この表情は悲しかったり苦しかったりというだけの顔ではない、もっと悔しさ、ふがいなさ、納得のいかなさといったそういう、複雑な感情がないまぜになり、それでも涙を流すわけにはいかないと耐えているときの顔だ……。そうか、私はその、他の奴らに悟られるわけにはいかないという今のスカの気持ちに心当たりがあるからこんなに胸がヒヤッとするのか……。
レースから戻ってきたスカはいつも通り気丈に振る舞っていた。だがこいつは今夜枕を濡らすのだろう。お前さんに義理はそんなにないしウマ娘のゲームにも別にハマってないが……思春期の女の子にそんな思いはさせたくない。私にできるのは彼女に適切なトレーニングをさせることだけだな……。ウマ娘の生き生きとした表情コントロールには、殺人サイボーグにそう思わせるだけの力があった。
ウマ娘とともに意地を張る
だが現実は厳しい。ダイワスカーレットとの日々はオークス入賞ならずで終わった。3位にすら入れず、脇を固めるポジションとなったウイニングライブはその華やかさとは裏腹に苦いものを私の胸に残した。
意外に思ったのはいわゆる「バッドエンド」的なものがなく、ゲームから「今回は残念でしたね」といわれるだけで育成が終了してしまったことだった。私は納得がいかなかった。私のふがいない育成について、スカに罵ってほしかった。まあ、ヤツはああ見えて優しい女の子だから仮にこっちから「ふがいない私をなじってくれ」と頼んだとしても「バカ!」とその行為に対してやめるよう言うだけだろう。それでも……最後にひとことあいさつさせて欲しかった。
だがそれもシステム上叶わぬこと……仕方ない。私は導かれるままに育成完了のボタンをタップした。
するとダイワスカーレットは私に向かって手を振り、こう言うのだ。「ありがとう」と。
やめろ、罵るならいざ知らずお礼なんか言うんじゃねえ。私はお前をEプラスにしかできなかったふがいないトレーナーなんだぞ……。お前は私を憎むべきなのに、なにガラにもなくありがとうなんか言ってんだよ……。
分かった、分かったよスカ。私はこのゲームには全然ハマっちゃいないがとことん付き合ってやろうじゃないか。お前の一番にな。
それから私たちは走った。しゃにむに走った。
何度も愚直にダイワスカーレット育成を繰り返した。
育成はYouTube配信をしながら行っていたので都度都度視聴者からアドバイスをもらうことができた。
だがその中には……「ウマ娘」をやっていれば当然だがこんな意見が頻出していた。
「他のウマ娘を育てていい因子を持ってきた方がいい」
ウマ娘はさまざまなウマ娘を育て、彼女らの能力の片りんである「因子」を次のウマ娘に渡し、魂をつないでいく継承のゲームだ。強い因子があればそれだけ能力が伸び、強力なスキルが手に入り、強いウマ娘を仕上げることができる。
そして各ウマ娘にはユニークなスキルや、強力な因子を生み出す固有の特性というものがある。だからさまざまなウマ娘を育てることが好きなウマ娘を強くすることにつながるゲームシステムになっているんだ。
だが……私は意地になって他のウマ娘を育てようとはしなかった。
出会いを考えれば当然のことだ。私はこの娘をチュートリアルでだけ触れて、別れることを選ぶことができなかった。半端な状態にこいつを置いておきたくなかったんだ。だからまずは……まずはスカーレットだけと戦い、勝ちたい。たとえ非効率でもだ。
そして6回目の育成でついにたどり着いたファイナルステージ、URAファイナルズ決勝。ここまで苦労したがなんとか最後の戦いの舞台まで連れてくることができた。視聴者によれば最大の難関は準決勝になりがちだという。あとはお前の舞台だ。思いっきり走って……センターをもぎ取ってこい!
ミホノブルボンとサイレンススズカ、強力な逃げウマ2人をと戦闘を争うダイワスカーレット。この調子で2着をキープできてるのはいい! いいぞ! 過去何度も煮え湯を飲まされたスズカを抑えられてるのもえらい!
そして最終コーナーを越え、ラストの直線。ここでミホノブルボンから1位をもぎ取り、同時に先頭にいるときに速度を維持する固有スキル、「レッドエース」とラストで速度が伸びる「末脚」が同時に発動する。勝てる。ラスト近くでこのスキル発動は勝ちパターンだ。ついに見られる。見られるんだ。ダイワスカーレットのうまぴょい(※)を……!
※編注:イメージソング「うまぴょい伝説」。URAファイナルズに勝つと聞くことができる
勝利をほぼ確信した私の目に飛び込んできたのは信じられない光景だった。
ウオッカ!!!!! おい!!!!!!!
過去何度も立ちふさがってきたダイワスカーレット最大のライバル、ウオッカがここにきて猛然な差しを見せた。私たちはまたしても敗れた。
君の愛バが
なぜだ? なぜ勝てない?
私たちになくてウオッカにあるものはなんだ?
次の日、私は悩み、目を閉じ、あぐらをかいて深い瞑想に入った。ここまで、やるだけはやっている。かなり育成も改善できている。トライアンドエラーを繰り返し、今できる最適解の育成ができたと自負している。だが……ウオッカに勝てなかった。奴を離しきれなかった。
いま、ダイワスカーレットに足りないものはなんなんだ……。
解答にたどり着き、私はカッと目を見開いた。
ダイワスカーレットに足りないもの……勝負服か(※)。
※編注:ウマ娘たちはアイテムを集めて「才能開花」させることでレア度が上がり、ウマ娘によっては専用のコスチュームが手に入る
そして迎える7回目の育成……ダイワスカーレットは……勝った。URAファイナルズ決勝で圧倒的走りを見せ、薔薇の花のように美しく勝った。
そしてウイニングライブが始まった。
なぜだろう、なぜ、こんなよく分からん歌がこんなにも胸を打つのだろうか。正直に言おう、私はうまぴょい伝説のライブで言葉を失ってしまった。「かっこいいね」とか「かわいいね」とか「すごいね」とか言えなくなってしまった。
頭の中にはただ、ウマ娘を始めた日から今日までのダイワスカーレットとの日々が、走マ灯のように駆け抜けていくだけだった。
あの日キミに感じた何かを信じて
それから数日……。私は普通にウマ娘を遊んでいた。サクラバクシンオーやハルウララを育て、因子を得て、さらに強いウマ娘を育てる……。あらためてダイワスカーレット育成のことを思い出すとなんて非効率的なことをしていたんだろうと笑えてくるほどに効率よくウマ娘を育て、彼女らのうまぴょい伝説を見届けた。
だがなんというか……やはり敵わないんだな、最初のうまぴょいを見たときの衝撃にはよ。あの体験は、きっと一度しかできないのだろう。そんな体験が全ウマ娘プレイヤーにはそれぞれあるのだろう。だがまぁ……私は取りあえず最初のうまぴょいを、ダイワスカーレットと意地を通して見ることができたことに誇りを覚えている。楽しかったぜ、お前とのレースはよ……。ウマ娘にはハマってないけどな! ホントだぜ。ふつうのスマホゲームとして接してるさ。
ところで各ウマ娘に個別のストーリーがあるのを忘れてたよ。育成ばっかりしてたからな。どうやら出会いの物語が書かれてるらしいからダイワスカーレットのストーリーを読んでみるか。どれどれ……。
……なるほどな。ダイワスカーレット、お前は1番に憧れるあまり、強がっていたんだな。本当は必ずしも自分が1番ではないと内心で思っていながら……そう言い張ることしかできなかった。プライドが許さなかったわけだ。そうでない自分を認めることができなかったんだな。
いや、別にそのことにどうこう言うつもりはないよ。それは長所になり得ると思うよ。ん? なに笑ってるんだって? いや、いや、すまん。バカにする意図はもちろんない。むしろ私はお前さんをいますごく尊敬してるんだよ。私にそういう思考はなかなかできないからな。ただ……ただなんで、私がお前の話を聞いて、泣きも怒りもせずに笑ってるのかと言うとな、お前が私の尊敬する女の子にそっくりだからさ。お前とは見た目も性格も生き方もまるで違うが……根っこはすごく似てる。憧れのために自分を曲げることを知らない、強い女の子だ。
いや、ようやく自分で合点がいったよ。なんでお前さんのことをほっとけないのかよ……。私はどうしてもこうなる星の下に生まれたらしいな。お前さえよければ、もうちょっとこれからも世話させてくれよダイワスカーレット。ウマ娘にはハマってねーけどな。
まあそんなわけで……非常によくできたいいゲームですよ。「ウマ娘 プリティダービー」はね。新しい、気が合う相棒とも出会えたしね。
これだけ遊んでるけど実はまだアニメが未視聴なんだよ。でもまあ逆にこれから楽しめるってことでもあるのでゆっくり作業用BGVにでもして楽しもうと思うよ。競馬もまた試しにやってみたりもするかもな……。変わったところで面白かった変化としては、これまで単なる面白い漫画としか思ってなかった『銀と金』や『スティール・ボール・ラン』について、多少馬のことが分かったことで物語の見え方がかなり変わった。生活にバフがかかるってのはいつも楽しいもんだぜ。オススメです。
とはいえくれぐれもハマってない、ハマってないですよ? ウマ娘関係のお仕事いろいろしてみたいなとは思ってはいるけどハマってないぜ。本当だぜ? じゃあそろそろこの原稿については筆を置いて、ダイワスカーレットの育成に戻らせてもらう。まだまだ強い因子を作らなきゃいけないんでね。それじゃあな。
おまけ:土日(4月3日と4日)に一挙放送やるので見に来てね
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