当時のスター「テレビカー」、仰天ギミックの通勤電車「5000系」 京阪電車で感じる「昭和あの頃」ぶらり旅(2/2 ページ)
昭和な人も、昭和を知らない人も……。京阪電車で愛でる「昭和」をお届けします。
3000系テレビカーも「昭和のスター」だった
ひと昔前の京阪電車のスターといえば「テレビカー」を思い浮かべる人も多いでしょう。
テレビカーは、文字通り車内にテレビがある車両のことです。現在ならば動画コンテンツなど手元のスマホでサッと見られますが、ひと昔前は「車内にテレビがある」「出先でもテレビが見られる」ことにみんな驚き、喜んだものです。そんな昔のことではないですよね。筆者が子どもの頃、平成初期までは少なくとも……。
京阪テレビカーの歴史は意外と古く、1954(昭和29)年に登場。カラーテレビになったのは3000系が登場した1971(昭和46)年のとき。この頃に受信区間が全路線になり、テレビ放送コンテンツの王道だった野球中継や大相撲中継などに乗客は釘付けになったそうです。テレビカーは8000系が登場した平成時代までありましたが、2013年に廃止されました。
そんな昭和のスターとも重なる3000系テレビカーは、枚方市・樟葉の大型商業施設「くずはモール」で展示されています。3000系でまず注目すべきは塗装。黄色と赤の組み合わせは長年「京阪特急色」として親しまれていました。現在は塗装変更により見られなくなりました。
京阪特急のシンボルである「鳩マーク」もきちんと掲げられています。この鳩マークは後継の2代目3000系でも使われています。
車体側面には誇らしげに「テレビカー」の文字。各編成の1両がテレビカーでした。
テレビ画面は車端部にありました。運行当時はブラウン管テレビでしたが、展示車両では液晶パネルに変わっていました。いま、実際に映像を流すならば仕方ないか……。画面では京阪3000系の活躍を記録した動画が流れています。
車内は特急専用列車にふさわしく2+2列の転換クロスシートが並んだ構成です。京阪特急は座席指定車両の「プレミアムカー」(関連記事)を除いて特別料金が不要。転換クロスシートが少なかった昭和時代において、関西圏でない人は特に、特別料金不要の3000系に驚きを禁じ得なかったとか。当時の京阪ならず関西私鉄ご自慢の車両でした。
展示車両では、実際に転換クロスシートに座ることもできます。現在の車両にはあまりない、ソファのようなふわふわの座り心地。ちょっとレトロな白カバーとともに昭和ノスタルジックが倍増します。転換クロスシートだけを見れば現在も十分通用する車両だと思います。
車内には1972(昭和47)年当時の京阪電車路線図+地図もありました。当時は京都方の終点は三条駅となり、大津方面へ向かう京津線と接続していました。また七条〜三条間は現在のような地下路線ではなく、鴨川沿いを走る風光明媚な路線として知られていました。
ドア付近に「補助いす」が設置されているのも見逃せません。珍しいですね〜。「補助いすは京橋〜七条間でご利用下さい」と書かれた三角形の案内板もいい味を出しています。
3000系は1971年の登場以降、約40年にわたり京阪特急のシンボル的列車として活躍しました。一部の車両は富山地方鉄道で現在も使われています。テレビカーは廃止されましたが、料金以上の豪華な内装という3000系のDNAは後輩の8000系や2代目3000系に引き継がれています。
3000系テレビカーが展示される「SANZEN-HIROBA」には、京阪電車に掲げられていた各種ヘッドマークも展示されていました。琵琶湖を描いた「びわこ連絡」のヘッドマークに注目。3000系にも掲げられていたこのヘッドマークは、京津線経由で琵琶湖遊覧船に接続する特急列車に掲出されていました。
くずはモール最寄り駅の樟葉は淀屋橋から特急で約30分。運賃は360円です。
2021年6月、間近に控えた京阪5000系の引退で、今なお昭和が色濃く残る京阪電車でも“あの頃の思い出”がまた一歩遠のきます。さみしいことではあります。でも、京阪の良き伝統は確実に伝承されていることも感じます。需要の移り変わりが激しいこの時代、単にノスタルジックに浸るのではなく、どのように京阪の伝統が継承・発展するかに注目したいです。
新田浩之(にったひろし)
1987年神戸市生まれ。関西大学文学部卒、神戸大学大学院国際文化学研究科修了。主に鉄道と中欧、東欧、ロシアの旅行に関する記事を執筆。2018年からチェコ政府観光局公認の「チェコ親善アンバサダー2018」を務める。
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