スマホゲーム版「KOF98」に課徴金609万円 措置命令から3年後、「ガチャ不当表示」への対応なぜ消極的?
ガチャ不当表示について都議会で質問した、栗下善行議員にも話を聞きました。
スマートフォン用ゲーム「THE KING OF FIGHTERS '98 ULTIMATE MATCH Online(KOF98 UM OL)」のガチャ不当表示を巡り、消費者庁が3月、同ゲームを運営するアワ・パーム・カンパニー・リミテッドに対し、609万円の課徴金納付を命じていたことが分かりました。同社は納付命令について真摯に受け止め、再発防止に努めるとしています。
問題となったのは、同ゲーム内で2016年12月31日から2017年1月4日まで提供されていた「クーラ限定ガチャ」。ピックアップキャラクターの「クーラ」が3%の確率で排出されるように表記されていましたが、実際の出現率は0.333%と表記より著しく低かったことから、景品表示法に違反しているとして2018年に消費者庁から再発防止などを求める措置命令が出されていました(関連記事)。今回の課徴金も同じガチャに対してのものですが、措置命令から3年以上たって課徴金が科せられるというのはかなり珍しいケースといえます。
ガチャの不当表示を巡っては2020年12月、栗下善行議員が都議会の中で、東京都と消費者庁に対応を求めるよう質問を行ったことも話題に(関連記事)。編集部は栗下議員に、今回の件を含めた対応状況についてお話をうかがいました。
ガチャ不当表示対応、現状に追い付かないのはなぜか
―― 都議会での質問後、何か具体的な動きはありましたか?
栗下議員:3月12日に私と、スマートフォン用アプリの法律問題に詳しい東京フレックス法律事務所の中島博之弁護士とで、「KOF98 UM OL」における優良誤認広告、有利誤認広告その他について、東京都生活文化局・消費生活部・取引指導課に対し以下のような具体事例の説明を行いました。その際、2018年に措置命令が出された「クーラ限定ガチャ」についても、課徴金の命令が大変遅いことを中島弁護士から指摘しました。
- 「1回必ず復活」という説明文のキャラクターが、ガチャ排出時の性能では説明文どおり「必ず1回復活」する仕様ではなく、復活するには、武器の獲得や強化などの追加の課金が必要であったこと
- 「最大3回まで致死ダメージを耐える」とゲームの公式ページで説明していたキャラクターが、後日、誤表記であったとして、「1回まで耐える」内容に変更が行われたこと
- 指が触れただけの誤タップ・ワンクリックでそのままゲーム内有償通貨の決済が行われてしまい、それをユーザーの操作であるから取り消せないと説明するなどの対応を過去に行っていたことに関し、電子商取引及び情報財取引等に関する準則違反が疑われること(※)
※本来であれば確認画面をはさむなど、ワンクリック請求が行われないように確認措置をとるべきである(現在は改善されている)
なお、3月29日に消費者庁からアワ・パーム・カンパニー・リミテッドに対し課徴金納付命令が出されましたが、この間、東京都生活文化局と消費庁の間で「クーラ限定ガチャ」の問題を含め情報共有がされていることは、東京都生活文化局から確認がとれています。
―― 「KOF98 UM OL」について、このタイミングでの課徴金というのはかなり遅く感じたのですが、栗下議員はどう感じましたか。
栗下議員:3年以上前に措置命令が出された案件(違反行為自体は4年以上前)について、対応があまりにも遅すぎると感じています。東京都生活文化局との打ち合わせの中でも、一般的な課徴金納付命令のプロセスから考えても長い、ということを確認しています。
―― ガチャの不当表示について、都や消費者庁の対応は十分だと思いますか。
栗下議員:指摘されている違反行為の規模や数に対し、対応が全く追い付いていないように見受けられます。法令やガイドラインなどを順守するメーカーがバカを見るという状況を作り出してはならないと思います。
―― なぜ対応が追い付かないのでしょう……?
栗下議員:他の優良誤認広告・有利誤認広告と比較して、ゲームに組み込まれた違反行為への調査・対応が消極的であることが最も大きな理由だと考えます。調査や対応が進まないのはなぜなのか、担当職員にヒアリングしたところ、対応するためにゲームの知識が必要になってくること、ガチャの問題などは再現性が低い、公務員が業務時間中に調査のためとはいえゲームを操作することに抵抗感がある、などが挙げられました。
―― 現状について、どうすれば改善できると考えますか。
栗下議員:まずはゲームに組み込まれた不当表示に対する調査や措置命令が、今以上に活発に行われることが第一ではないでしょうか。また今回のような事例が増えれば、不当表示への強力な抑止力になります。ただし公平性については担保されるよう、調査についてはできるかぎり幅広く精微に行われることも重要と考えます。
栗下議員が指摘するように、スマートフォン用ゲームの不当表示については以前から度々ネットでも話題にのぼっているものの、措置命令や課徴金など、具体的な対応まで行われたケースはそのうちのごく一部にすぎません。もちろん全てのゲームでこうした不当表示があるわけではありませんが、栗下議員が言うような「法令やガイドラインなどを順守するメーカーがバカを見る」という状況を招かないよう、またユーザーが安心してゲームを楽しめるように、より踏み込んだ対応が期待されます。
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