グルーガンを使って涙のしずくを造形し、顔に貼って漫画的な泣き顔を作る「涙メイク」が一部で流行。使用される接着剤の成分が、人体に悪影響を及ぼすのではないかと物議を醸しています。
グルーガンは、熱すると溶け冷えると固まるホットメルト接着剤を、ヒーターで溶かして押し出す工作用の道具です。涙メイクでは接着に使わず、接着剤自体を造形素材に使用。涙の形に整形して冷やし固め、つけまつげ用ののりで顔に貼る方法がネットで紹介されています。
この大胆な手法はネットで広まり、テレビ番組の紹介がきっかけでますます注目を集めることに。とっぴな発想に驚く声が上がる一方で、ホットメルト接着剤の成分が人体に悪いのではないかと懸念する声が上がっていました。
肌への影響がないとは確認できていない
SNSの反応を見ていくと、「ヤケドするのではないか」というものがまず目立ちます。しかしこれは上述の通り、冷まして成形してから顔に貼り付けるという前提を知らず、熱いまま顔に接着するという誤解に基づいた反応です。
※グルーガンで熱したホットメルトは100度以上にもなるので、そのまま触れると当然ヤケドします。絶対にやめましょう
では冷ましてから顔に接着するという「正しい」手法なら問題ないのでしょうか? また、夏場に直射日光などで熱し続けると一度固まったホットメルトでも融解してしまうという指摘も。溶け出した成分が肌に付着した場合にリスクはあるのでしょうか?
グルーガンやホットメルトなどの化学品を専門に扱う商社に取材したところ、そもそもホットメルトが溶け出す温度は、材質により前後はするものの、60度以上の高温になることがほとんど。そのため、溶け出す温度になるまで顔に付けたままになる状態が想定しづらいという指摘がありました。他方で問題として挙がったのが、固めたホットメルトを顔に接着する際に使用する「のり」の方。
ネット上では涙メイクの仕上げとして、「つけまつげ用ののり」を使用し、顔に貼り付ける手法が多く紹介されています。しかしこののりに含まれる溶剤が冷えて固まったホットメルトに反応し、成分が溶け出す可能性があるというのです。
つけまつげ用ののりの主成分は、一般的に「アクリル樹脂」や「ゴムラテックス」が使われています。接着剤やホットメルトを手掛ける、大手化学メーカーを取材したところ、次のような回答がありました。
- つけまつげ用のりの溶剤により、ホットメルトの成分が溶出する可能性は大いにある
- アクリル樹脂での接着は何らかの溶剤を使用している可能性が懸念される。また、ゴムラテックスでもアレルギー等の懸念があると思われるため、皮膚への影響が無いとは言えない
- EVA系のホットメルトには、若干の人体へ影響のある物質が残存している場合がある。石油系の樹脂が含まれており、肌への影響がないとは確認できていない
まとめると、「1, ホットメルト自体の成分による肌への影響が懸念される」「2, 固めたホットメルトの成分が、つけまつげ用ののりにより溶出する可能性がある」「3, つけまつげ用のり自体にアレルギー等を起こす可能性がある」と、3つの懸念点が浮き彫りに。
SNSではグリッターや涙ジェルなどのメイク用品の使用を勧める声も。確かにホットメルトを本来の用途外で使うよりも、そちら方が安全そうです。
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