主人公の最上(もがみ)だけが、「自分はこの漫画に出ている登場人物」だと知っている、メタフィクション漫画が不思議な味わいです。作者は漫画家の松木いっか(@IKKA_neko)さん。
川辺でのんびりダベって過ごす最上。隣では友人の伊達(だて)が漫画に憧れて、「転生してぇ〜〜〜〜!」などと騒いでいます。
「転生なんかする必要ないだろ」と素っ気なく返事をすると、最上は急に我々読者を指さします。「だってそもそも俺ら漫画の中のキャラクターだし」と。さらには「ほら、俺らのこと見てる人いるだろ」と、唐突に世界の理(ことわり)をバラし始めました。こっち見んなし。
「うそだぁ景色とかすげぇリアルだぜ」と反論されれば「写真(を取り込んだ背景)」、「なんで俺は漫画だと気付けないんだ」と聞かれれば「だって伊達はそういうキャラって設定だもん」と、伊達の疑問に答える最上。漫画は自由だから、さっき望んだ転生だって、なりたいものを言えば“次のページ”で叶えられると言い出します。
最上のペースにのせられて、伊達は困惑しつつも「なんか火ぃ吹くかっけぇドラゴン」を希望しますが、次のページでも元のまま。どうやら、作者がドラゴンは苦手で描けなかったようです。確かに漫画は自由――ただし作者の力量の範囲内で。
軽妙な掛け合いも楽しいこのメタ漫画は、好評を受けてシリーズ化し、松木さんのTwitterアカウント上で、これまでに3話分が掲載されています。「これから始まる漫画の作業時間」を予想したり、女子の髪色をスクリーントーンの濃度で言い表したり、最上は相変わらず身もフタもないことばかり言っていますが、なんだかモテています。主人公補正かな。
作品提供:松木いっか(@IKKA_neko)さん
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