ティーンエイジャーになったピーターの成長に注目
今作でも、叱られているときに耳栓をしたり、悪態をついたりと、ピーターの茶目っ気は健在。一方で、一緒に暮らすことになったマグレガーさんの言うことをなるべく守ろうするなど、ピーターの成長ぶりも感じられます。前作を見ていると、相変わらずウザさ満点、さらに急に父親ぶり口うるさいマグレガーさんに対し、飛び蹴りをくらわさず我慢しているピーターの姿は「とても偉い……!」と感動してしまうほど。
どんどん成長するピーターに対し、成長は全く見えてこないマグレガーさん。ピーター=子どものことを信頼できていないマグレガーさんの様子は、親として他人事とは思えませんでした。
前作から数年経ったピーターを「本当の自分」を模索するティーンエイジャーとして描く今作は、自分の気づかいが周りの人に全然気づかれないときの虚しさや、本当の自分を理解してもらえないときの悲しさが、面白おかしくも丁寧に表現されています。生い立ちやこれまでの行動によって、周囲から「悪者」扱いされ葛藤するピーターの姿には、胸がちくりとしました。
出版社の思惑に翻弄されるビア
そんな中、ピーターたちについて描いた絵本が見初められた画家のビアは、出版社を通して作品を大々的に売り出すことになります。しかし、商業主義の出版社により、彼女の作品はどんどんと変更させられていきます。
周りの反応を見ながら、こうすればウケるだろうと考え、自分が最初ににやりたかったことや作りたかったものと離れたものが出来上がってしまった、という経験は誰しもあるはず。自分のやりたいことよりも世にウケるものを優先させがちな筆者も、身につまされる部分がありました。
しかし、筆者が今作で一番面白いと感じたのは、出版社が提示してきたハチャメチャなストーリーを実際に映像で再現してしまうシーンなのです! 自分の世界観を大事にしていこうという話だったはずなのに、ド派手なアクションシーンこそが面白い、という矛盾は、イギリス流の皮肉なのでしょうか……?
あるキャラクターがピーターを指して言った「バカじゃない、若いんだ。失敗もする」「良くも悪くもピーターは挑戦者」というセリフが印象的な今作。失敗を恐れずに挑戦をしてはじめて自己のアイデンティティは形成されるのだ、というメッセージは、名作絵本を実写化するという批判されやすい偉業を成し遂げた作品だからこそ沁みるものがあります。
ところで、今作の邦題は「ピーターラビット2/バーナバスの誘惑」です。バーナバスって誰……? という部分は、ぜひ劇場でお確かめください。
前回までの「おこのみ若者映画いろいろ」
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