【ライター望月の駅弁膝栗毛】
「駅弁」食べ歩き20年・5000個の放送作家・ライター望月が、自分の足で現地へ足を運びながら名作・新作合わせて、「いま味わうべき駅弁」をご紹介します。
ドラマで話題の渋沢栄一。渋沢は日本の多くの鉄道会社の設立にも関わっており、鉄道と縁のある人物です。あの東京駅丸の内駅舎も渋沢が設立した会社が作った赤れんがで作られました。また、発行が予定されている新しい1万円札には、渋沢の肖像と一緒に、赤れんが駅舎も描かれると伝えられています。そんな話題の人物に思いを馳せながら、東京駅限定のプチ贅沢な駅弁を手に取ってみました。
ターミナル駅の駅弁で感じる旅気分(第3回/全3回)
高崎線からの普通列車熱海行が、日暮里駅を横目に駆け抜けて行きます。平成27(2015)年の「上野東京ライン」開業以来、東北本線(宇都宮線)・高崎線の各駅でも、熱海・沼津・伊東といった静岡県の駅名が、駅の電光掲示に表示されるようになりました。とはいえ、埼玉から北関東の皆さんにとっては、東京・品川へ乗り換えなしで行けるようになったメリットは、とても大きいことでしょうね。
赤れんがでおなじみの東京駅丸の内駅舎。平成24(2012)年の復原工事の完成により、大正3(1914)年の竣工当時の姿が甦りました。当時使われたれんがの多くは、ドラマで話題の渋沢栄一が設立した埼玉・深谷の日本煉瓦製造株式会社で製造されました。これに因んで高崎線・深谷駅は、丸の内駅舎をモチーフとしたデザインになっているほか、新1万円札には、この東京駅丸の内駅舎が描かれることも発表されています。
そんな復原された東京駅の丸の内駅舎が掛け紙に描かれている駅弁は、東京駅限定で高い人気を誇る「東京弁当」(1850円)です。日本ばし大増の製造により、「駅弁屋 祭」をはじめとしたJR東日本クロスステーションフーズカンパニーの駅弁売店で販売されています。現在の形となったのは、令和元(2019)年のリニューアルから。東京が誇る老舗8つの店の味を1つの折でいただくことができる贅沢な駅弁です。
【おしながき】
- ご飯 刻み梅
- 浅草今半の牛肉たけのこ(浅草)
- 魚久のキングサーモン京粕漬(人形町)
- すし玉青木の玉子焼(築地)
- 神茂の御蒲鉾(日本橋)
- 酒悦のつぼ漬(上野)
- 新橋玉木屋の葡萄あさり(新橋)
- 舟和の芋ようかん(浅草)
- 日本ばし大増の江戸うま煮(里芋 筍 南瓜 椎茸 蓮根 絹さや 人参 牛蒡)
- 肉団子
- 金平ごぼう
秋田県産「あきたこまち」の白いご飯に、幕の内の基本・焼き魚は人形町・魚久の「キングサーモン京粕漬」。さらに浅草今半の「牛肉たけのこ」、築地・すし玉青木の 「玉子焼」、日本ばし大増の「江戸うま煮」、新橋玉木屋の「葡萄あさり」、上野池之端・酒悦の「つぼ漬」、日本橋・神茂の「御蒲鉾」、浅草・舟和の「芋ようかん」……と老舗の味が目白押し。これが1つの折で楽しめるのは、じつは凄くおトクかも知れません。
上野東京ラインによって東京駅とつながった東北・高崎・常磐の各線は、渋沢栄一が設立に大きな役割を果たしたとされる明治時代の私鉄「日本鉄道」をルーツとする路線です。この路線がなければ、いまの東北・上越・北陸の各新幹線もなかったかも知れません。いまはお家で、東京駅から東北・信越地方への旅立ちにいい時期には、渋沢栄一の足跡に思いを馳せながら、いつもよりちょっと贅沢な駅弁をいただいてみてはいかがでしょうか。
(初出:2021年6月2日)
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/
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