化学薬品を使って人型の紙を自然発火させる実験「呪いが強大すぎて燃えてしまう式神」が、アニメやホラー映画の世界のようで衝撃的です。
科学の魅力を伝えるサイエンスアーティストの市岡元気(@genkiichioka)先生は、紙を自然発火させる実験に成功。ダンボールの箱の上に置いた式神(形代)のような紙が、自然発火してほんの数秒で燃え尽きる様子を投稿しました。
式神から小さな火が上がると同時に黒い煙が噴出。紙全体があっというまに火に包まれ、黒焦げになった式神だけが箱の上に残されました。何も知らずに動画だけ見ると、自然を超越した異常な出来事のようにも見えます。
元気先生に今回の実験について聞きました。
――式神だけが燃えて下の箱に燃え移らないのが気になりました。実験にはどのような素材を使っているのでしょうか?
実験では黄リンを二硫化炭素に溶かしたものを使いました。黄リンは空気と触れると発熱し60℃で発火します。二硫化炭素は発火点が90℃と低いため、紙は燃えていますが温度が100℃以下でとても低いので、下の段ボールを燃え広がらせるまでの熱量はありませんでした。段ボールの発火点は200℃以上と言われています。
――黄リンを取り扱う上での注意点は?
自然発火するうえ強い毒性を持つため、保管も水中保存です。万が一地震で瓶が倒れて割れたり、忘れていて水が乾燥したら発火するので基本的には手に入れないほうがいいと思います。
購入できる最低量が500グラムとかからで、それが約6万円。今回使った量は1グラムに満たないくらいでした。使い切るには10年くらいかかりますし、ちゃんと管理する人が必要です。黄リンのヒュームを吸い込むと死亡したりする恐れもあるので、今回のような実験はトラップつきのドラフトチャンバー(※有害な気体が発生する科学実験などで使う装置)の中でしかできません。
黄リンは「第3類危険物」に指定されており、取り扱いには資格が必要。基本的に個人では購入できず、水につけておかないと自然発火するため管理も大変です。夏休みの自由研究に……というわけにはいかなそうです。
ちなみに今回の実験を思い付いたきっかけは、過去に元気先生が動画で公開した人魂を再現する実験だったとのこと。こちらの実験でも黄リンが使われていて、入手する大変さやとても危険であることが語られています。式神が燃え上がる様子はアニメや漫画のようでカッコイイですが、なかなか見ることができない珍しい実験であることが改めて分かります。
動画提供:市岡元気(@genkiichioka)先生
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よくあるやつですね。