創作活動をずっと続けていると、初期の作品を黒歴史のように感じて、記憶の底に封じ込めてしまいがち。漫画家・イラストレーターの歩(@ayumi_draw)さんは、自分が初めて描いた作品を偶然見つけ、あることに気づいたと言います。
夜10時に次の漫画のネタを考える歩さん。ふと本棚に手が伸び、初めて描いた漫画「サルヴァドール」の原稿を見つけ出します。絵がつたなかったと記憶していた歩さんでしたが、実際に見てみると思っていたよりも繊細なタッチで描かれていて、執筆当時の情熱がよみがえってくるようでした。
1年余りろくに友達にも会わずひきこもり、使う紙や画材にこだわって制作。完成後は自腹で翻訳者さんに依頼し英訳、漫画をYouTubeで動画化するなどの熱の入れよう。その頃を思い出し、歩さんは思わず笑ってしまいます。
しかし、こうも思います。この作品に対する情熱はまるで歌手のファーストアルバム……技術や歌詞はつたないものの、その時だけに宿る特別な何か“初期衝動”があったと。
初めて漫画を描いたころは今より知識も少なく、制作は情熱だけが頼り。しかし、この作品で絶対に次の扉を開けてやるんだという強い想いがありました。
そんな意気込みで描いた「サルヴァドール」ですが、思うようには評価されませんでした。一方で、次に描いた商業デビュー作「ECHOES」は好評。そんなこともあり、歩さんは初めて描いた作品を「あんな作品よく人に見せてたな〜」と自分から切り離し、記憶の奥底にしまい込んでいました。
漫画を読み返し当時を思い出した歩さんは「必死に頑張ってくれたから、絶対あきらめなかったから、ちゃんと失敗してくれたから今の自分がある」と当時の自分を認めます。そして、過去の自分をバカにしていたことを反省し、「あのクレイジーさと身の程知らずっぷりは 受け継いでいきたい」と前向きにとらえ直すのでした。
漫画には多くのクリエイターが、「過去の作品にはそれなりの情熱が籠ってる」「初期衝動のすばらしさが伝わる!」など共感の声を寄せていました。
また、「過去の自分をバカにしたら、今の自分も否定したことになりそう」「創作だけじゃなくて、人生そうだなぁと思って。(中略)過去の自分もその時のベストで頑張って生きてた。その経験のおかげで、今がある」という声も。過去からの積み重ねの上に今の自分があるということなのでしょう。創作に限らず、今までの自分の頑張りと現在の自分に思いをはせる様子がさまざまなコメントから伝わってくるようでした。
「サルヴァドール」は電子書籍化され8月25日に発売されました。また歩さんは現在、女子バスケットボール部を舞台とした「BREAK THE BORDER(ブレイク・ザ・ボーダー)」を連載中です。
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