「ただいま、この電車は***のため●分遅れで運行しております」──。
「まじかよ、急いでいるのに……」
鉄道遅延に遭遇すると、仕方ないと思いつつもイライラしてしまいます。
時間正確性、定時運航率が世界一とされる日本の鉄道は、私たちが誇るべき素晴らしい公共交通機関。さまざまな事情や不慮の事態により多少の遅延や運休などはあります。しかし少なくとも、何のアナウンスや説明もなく、止まったまま遅れたまま結局列車さえ来なかった……と、乗客が何も分からずそのまま放置されることはありません。
「遅れる」ことはよくあります。では逆に「早く出てしまう」とどうなるのでしょう。以前、つくばエクスプレスが“20秒早く”発車してしまったことで「深くお詫び申し上げます」と首都圏新都市鉄道が謝罪文を出し(関連記事)、「たった20秒なのに?」「シビアな世界だ」と国内外で話題になったことがありました。
遅延より「早く出てしまう」方がダメ
「定められた発車時刻より早く発車してしまう」つまり、「早発」は法令で禁じられています。列車の運行ルールを定めた「鉄道営業法」およびその省令「鉄道運輸規程」の第22条第1項で以下のように定められています。
鉄道ハ時刻表ニ指示シタル列車ヲ其ノ時刻前ニ出発セシムルコトヲ得ズ
早発の禁止は明治時代からの決まりごとです。遅延したとしてもいつか列車は来るでしょう。しかし先に出てしまったら「もう乗れない」人が出てしまいます。
「次の列車に乗ればいいじゃないか」というのは別のお話。事業者としては旅客の運送等の契約である以上、それを守るのが前提です。そのため、予定よりも駅に早く着いたとしても、早く行きたいと誰かに望まれても、早発してはなりません。定められた発車時間になるまで時間調整します。
前述したつくばエクスプレスは、一般人としてはたった20秒のことといえど、法令に反した「事件」だったのです。
なお、JR東日本の首都圏・列車本数の多い路線では、主要駅のみで到着・発車時刻を定めています。つまり、「主要駅以外の駅」では到着・発車時刻を定めていないことがあります。掲示される発車時刻はあくまでも運行上の目安。この場合は駅掲示の時刻より早く発車することもありえますが、法令に反してはいません。当然、そうだとしても時間正確性の高さが大きく変わらないのはすごいことといえるでしょう。
新田浩之(にったひろし)
1987年神戸市生まれ。関西大学文学部卒、神戸大学大学院国際文化学研究科修了。主に鉄道と中欧、東欧、ロシアの旅行に関する記事を執筆。2018年からチェコ政府観光局公認の「チェコ親善アンバサダー2018」を務める
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「ニャにか?」。それならば仕方ありませんよね。