「ファスト映画」投稿者らに全国初の有罪判決 公判では被告らのタワーマンション移住検討も明らかに
主犯格には懲役2年(執行猶予3年)と200万円の罰金が言い渡されました。
映画の映像やストーリーを短く編集し、YouTubeに投稿していたいわゆる「ファスト映画」問題で、宮城県仙台地裁は被告人らに懲役2年(執行猶予4年)および罰金200万円などの有罪判決を言い渡しました。ファスト映画を巡る事件としては、全国初の判決となります。
一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構(CODA)の発表によると、今回起訴されていた3人とも、起訴内容については認めているとのこと。3人は2020年6月〜7月にかけ「アイアムアヒーロー」「冷たい熱帯魚」などの映画作品5タイトルを無断で10分程度に編集し、ナレーションをつけてYouTubeにアップロードなどしていた疑いで著作権法違反の罪に問われていました。
公判では被告らが金銭目当てで組織的にファスト映画投稿を行っていたことや、過去に著作権侵害申告を行った映画会社をリストアップし、それらの会社を避けて投稿作品を選定していたなど、悪質な運用実態も判明したとのこと。また摘発に協力した中島博之弁護士(CBEP・リーガルディレクター)によると、公判では被告らが当時、タワーマンションへの移住を検討していたことも明らかになったといいます。
「コロナ禍で映画業界が苦境に立たされていたことを考えると、不法に得た利益でぜいたくを行おうとしたり、人を雇ってファスト映画投稿を拡大しようとしていた点なども遺憾に思います」(中島弁護士)
判決では、主犯格とされる被告Aに対し懲役2年(執行猶予4年)と罰金200万円を、被告Bと被告Cに対し懲役1年6カ月(執行猶予3年)、罰金100万円などが言い渡されました。CODAによれば、今回の判決は妥当であり、さらなる「ファスト映画」による被害拡大を防ぐための大きな成果として捉えているとしています。
中島博之弁護士コメント
本日、ファスト映画投稿が著作権侵害であると日本で初めての判決が出ました。
初公判では、被告人らが権利侵害主張を行ってきた映画会社をピックアップし、その会社を避けてファスト映画投稿を行い、作品の削除を回避し、YouTubeアカウントが停止されないように計画的、組織的に運営されていたことが明らかとなりました。
映画が作られるまでには映画会社、監督、演者、関係者など多くの人々の労力、時間、費用がかかっています。何の製作の苦労もしていない第三者が、映画に関わった方々の表現意図・思いなどを無視して、映画を無断で編集して次々と投稿し、利益を得ようとする行為は悪質としかいいようがありません。
今回、判決では映画を無断で編集して短くまとめて投稿する、いわゆるファスト映画作成の過程が著作権のうち翻案権も侵害していると明示されました。映画に関わった方々の表現意図・思いなどを無視して、映画を無断で編集する行為も犯罪と認定して頂き、映画製作にかかわった人々の思いに寄り添った判決とも言えます。
今後もコンテンツ海外流通促進機構(CODA)などの権利者団体と協力し、悪質な著作権侵害には毅然と対応をしていきたいと思います。
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