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「娘の誕生日祝いに動画を作って」クリエイターを狙った詐欺の手口が巧妙 実際にだまされそうになった報告が恐ろしい(1/2 ページ)

もらう側が取られる側に。

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 知らない人からSNSで仕事の依頼を受けたら、お金をだまし取られそうになった――アメリカ在住でドキュメンタリー作品を撮っている椎木透子さん(@tokophotoko)が引っ掛かりそうになったInstagram経由の詐欺がかなり巧妙な手口です。今回のケースは日本ではなじみのない電子小切手を使った手口でしたが、米国在住、または米国に移住される方はもちろん、「お金を振り込んでもらうはずがいつの間にか自分が支払う側になっていた」という還付金詐欺と似たものがあり、日本に住むわれわれも注意が必要です。

詐欺師のいらすと 要注意です(画像は「いらすとや」より)

 椎木さんによると、相手はまず自身のInstagramのダイレクトメッセージ(DM)で「娘の誕生日の為に、スライドショウの編集を依頼したい」と連絡してきました。報酬額は300ドル(日本円で約3万4000円)。スライドショーで使う写真と「オリジナルの曲」だという音楽も送ってきました。

 椎木さんがその音楽を聴くと、体が弱い娘を持つ、母親の愛情が伝わってくるような歌詞だったといいます。人の良心を利用し、応じやすくするための手口と見受けられます。写真も30枚程度と膨大な量ではなかったため、椎木さんは受けることにしました。

 しかし、メールでやりとりする段階になって、椎木さんは変だと思いました。相手のメールアドレス上の名前がInstagramで名乗っていた名前とまったく違ったからです。ただ「誰かのメールを使っているのかな」と椎木さんは考え、依頼通りスライドショーの動画を作成。相手に送りました。相手は「気に入りました!」という文章とともに、報酬額を電子小切手で送ると返事してきました。

 数日後、相手から「どうやら間違って10倍の金額を記入し小切手を作成してしまった。そのまま受け取ってもらって残額を送り返してほしい」という内容のメールが届きます。椎木さんは、電子小切手でないといけない理由が分からず、「あなたを信じている」と電子小切手を受け取ったうえで返金するよう執拗に迫ることなどから「めっちゃおかしい!」と感じたといいます。

 そこで調べると、換金できない偽の小切手を送って「過大に金額を送ったので返金してほしい」と促し、送金させるという詐欺があることが判明。そして「もしかして……」と思い、送った動画のリンクの履歴を調べると、ダウンロードしていないだけでなく、一度も動画を見ていないことが分かりました。見もしないで気に入ったと言っていたならやはり詐欺だろうと思いました。椎木さんが「誕生日プレゼントだと思って受け取ってください。お金はいりません」と伝えると連絡が途絶えました。椎木さんは「落ち込み頭をぶつけ、痛いし馬鹿だなと悲しいし」と投稿しており、金銭的な被害こそなかったものの、精神的なダメージは大きかったようです。

詐欺の構図 相手のいうことを信じてはいけません(画像は「いらすとや」より)

 リプライ欄では、「とんだ災難でした。。。 ほんと、あの純粋な気持ちを返せ!!ですよね」「ホントに人様のお金を騙し取ろうとする輩は、悪知恵が働くものなんですね 怖いわぁ」というコメントなどが寄せられています。

 騒動後、あらためて椎木さんにお伺いしました。

――どこで違和感を覚え、どこで詐欺と確信しましたか?

椎木さん  完成した動画を送るために、相手にメールアドレスを教えてもらったときです。Instagramでは女性の名前だったのですが、メールアドレスは男性の名前になっていて、「あれ?」と感じたのが最初の違和感でした。

 あとは今にして思えばなのですが、送られてきた写真や動画のファイル名が、いかにもFacebookなどからダウンロードしたような機械的な文字列になっていて、「どうせならSNSなどに載せたものではなく、元の画像を送ってくれればいいのに」とも思っていました。

 ほかに手段はあるのに、電子小切手を使わないといけないのはなぜなのかも疑問でした。相手は、「電子小切手しか使えない、間違えた小切手をマネジャーがまだ送らずに保管している」と説明していました。でも、そもそも金額を間違えた小切手をまだ送っていないのなら、キャンセルすればいいんです。そのうえ、「電子小切手を受け取って返金してほしい。あなたを信じているから」とかなり勧めてくるので「おかしい」と思い、送った動画のリンクをチェックしたら観ることもダウンロードもされていなかったので疑いが確信に変わりました。

――電子小切手は一切振り込まれなかったのでしょうか?

椎木さん 先方の話を私が拒否したので、最終的には送られてきませんでした。

――「e小切手(電子小切手)」はアメリカでは一般的なのでしょうか?

椎木さん e-check(電子小切手)を使っている人はまわりではあまりいません。通常の小切手を使う人はいまでもいます。

――なぜ相手は小切手にこだわったと思いますか?

椎木さん 銀行で小切手を換金して自分の口座にお金が入るまでには数日かかります。(偽物の小切手でも)正式な小切手と同じようにいったんは銀行に受理されるので、先方から「お金が必要なのですぐに多く払ったものを返金してほしい」と催促されれば、まだ現金の受け取りが確認できていないのにすぐに送金してしまう人もいるかもしれません。 特に小切手は日本では使わないので、そのことを知らないと引っかかってしまう人はいるかもしれないなと思いました。

――米国に住んでいてこうした手口に遭わないために気を付けていることなどはありますか?

椎木さん  まず、電話なら切って今後受け取らないようにし、メールやショートメッセージも今後受け取らない設定にします。まったく知らない人からSNS経由で依頼が来た場合は詐欺か疑う方がちょうどいいかもしれないですね。また、本来なら契約書をつくってから仕事に入るのですが、小一時間でできる簡単な仕事なのでそれも飛ばしてしまいました。もしかしたらうその名前でサインされていたかもしれないですが……いずれにしても証拠として手元に残るものは多い方がいいですね。


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