日本独特の伝承の1つに「人魚の肉を食べると不老不死になる」というものがあります。ですがその逆に、人魚が人間の肉を食べると、一体何が起きるのでしょうか。
今回ご紹介する作品は、その答えという訳ではないのですが……「人間の肉を食べると不思議なことが起きる人魚」を主人公に置いた、不思議で切ない物語。作者はイラストレーターのかもみら(@hc_feee)さんです。
主人公の人魚が住む海崖は、毎日のように人が死にに来る「自殺の名所」でした。人魚がそれまでどこに住んで、どのように生きてきたのかは分かりませんが、ともかく身を投げて亡くなった人間の肉を初めて食べたのは15歳の時だったそうです。
人魚には「人間の肉を食べると、その人の記憶が断片的に見える」という不思議な能力がありました。自殺者はおのおの異なった理由から絶望し、この場所で命を投げ捨てていました。人魚は死肉を喰らっては、人々が死を選んだ理由を少しずつ知っていきます。
そうやって、人魚は数え切れないほどの「絶望し死を選んだ人物の記憶のカケラ」をのぞき見ていきました。ですが生まれてからずっと1人で生きてきた彼女には、人間が死を選ぶ理由はさっぱり分からなかったのです。
ところがある日、人魚は海で溺れている男性を気まぐれで助けます。その人はとても明るい性格で、助けられてからというもの毎日のように人魚に会いに来たといいます。初めは男性を疎ましく思う人魚でしたが、毎日のように顔を合わせ言葉を交わすうち、彼女は男性を「好き」になっていきました。
ふたりの親交が深まる一方で、男性が身の上を語ることは一切なく、人魚は彼の名前以外を知りません。そうして2人で過ごす期間が随分たったころ、男性は突然「しばらくここには来られない」と人魚に告げます。心配する人魚に対し「必ず戻ってくるから」と笑顔で答えた男性でしたが……その後、何カ月待っても彼は姿を現しませんでした。
それでも男性を信じ、待ち続けていた人魚。しかし後日、人魚は「海に浮かぶ、ぐちゃぐちゃになった男性の死体」を見つけてしまうのです。
初めて好きになった人が、ただの冷たい「モノ」になって戻ってきた……人魚は肉片をかき集め、抱きしめ、悲しみに暮れます。そして彼の死肉を食べました。生前の男性が一切口にすることのなかった、彼の「記憶のカケラ」に少しでも触れ、すがり付くために……。
人魚が垣間見た、男性の「記憶のカケラ」は一体どのようなものだったのか。男性は何を思って人魚と交流し、なぜこの海崖で息絶えていたのか。気になる物語の結末は、漫画を読み進めてお確かめください。
なお、作品のタイトルである『海に落ちていた「モノ」を売る人魚』の意味や、人魚がどうして肉を売り始めたのかに関しては直接的に描かれていません。続きを執筆予定だというかもみらさんによると、それらは「漫画の続きで描きます。Twitterでのお話の更新をお待ち下さい」とのことです。
作品提供:かもみら(@hc_feee)さん
記事:たけしな竜美(@t23_tksn)
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最後に明らかとなる本名にも驚き。