好奇心でつい図書室の『かいけつゾロリ』を破損してしまった――。主人公が罪の記憶に苦しむ漫画が、心に刺さると話題です。ゆかいな本の話題なのにチクッとしてざわざわして、それでいてほろりとくる良い話。
漫画は施川ユウキ(@ramuniikun)さんの著書『バーナード嬢曰く。』の一編。ライトな本好きの町田さわ子と、SFマニアの神林しおり、図書委員でシャーロキアンの長谷川スミカら、学生たちが図書室で読書のスタイルや名著などについて語り合うシリーズです。
作者がTwitterで公開した『かいけつゾロリ』のエピソードは、彼女たちの「シリーズのタイトルを言い合う遊び」からスタート。「おならでなんとかする話のタイトルが出てこない」「『おならでなんとかする話ばっかだよ!』ってツッコミたいんだけど……」などと盛り上がっています。そのきっかけは、長谷川が家から持ってきた、『かいけつゾロリのめいたんていとうじょう』でした。
ところがその表紙を見ると、町田は急に表情を曇らせ、図書室の隅でふさぎ込んでしまいます。いつも明るい彼女らしからぬ振る舞いに、何かを感じ取った神林が声をかけると、町田はゾロリシリーズの楽しみの1つ、“カバーに隠れた小ネタ”にまつわる苦い思い出を語り始めました。
それは町田が小学生時代、図書室の『めいたんていとうじょう』を借りたときのこと。カバーの下見たさに、保護フィルムをはがそうとしたというのです。
しかし、しっかり貼られたフィルムはうまくはがせず、本はところどころ破けてしまいました。どうにかカバーをめくれる状態にはしたものの、そこまでして見たかった小ネタは、罪の意識で見られずじまい。結局、町田は本を直せないまま返却し、全てをなかったことにしてしまいました。
長谷川の本を見るまで罪の記憶を忘れていた自分を、「全部なかったことにしたら記憶からも消えてたなんて……」と悔やみ涙を浮かべる町田。神林はかける言葉が見つからず、最近読んだ小説から引用しようと思案するも、とっさには思い出せず難儀してしまいます。
そのあたふたする様子がおかしくて、少し笑顔を取り戻した町田は、「元気づけてくれるなら神林の言葉で聞きたい」とひと言。神林は赤面しながらも、「思い出してちゃんと反省できるなら大丈夫だ!」と、言葉を絞り出しました。
シンプルな激励を受けて、町田はようやく立ち直った様子。あらためて長谷川から『めいたんていとうじょう』を借り、あのとき見たかったのに見られなかった“カバーの下”と向き合うのでした。
「神林の、町田の気持ちの気付き方や励まし方が最高」「ゾロリの話題で感動する日が来るなんて思わなかった」など、大きな反響を呼んだこの漫画。「もしはがしちゃったら素直に言えば図書の人は直してあげます。こっそり返したら泣いちゃいます」と、優しく声をかける図書館関係者のリプライもみられます。
作品提供:施川ユウキ(@ramuniikun)さん
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