ITmedia ガジェット 過去記事一覧
検索
ニュース

「好きだったインターネットが急に敵に見える恐怖感」―― 新鋭にゃるらが「NEEDY GIRL OVERDOSE」で描いたもの(1/3 ページ)

企画・シナリオを手掛けたにゃるらさんに、同作やインターネットの“承認欲求”について聞いた。

advertisement

 2020年に制作が発表され、“インターネットの闇を煮詰めた育成ゲーム”として注目を集めた「NEEDY GIRL OVERDOSE」Steam)が、去る1月21日にいよいよ正式リリースを迎えました(1月28日まではリリース記念で10%OFFセール中)。

NEEDY GIRL OVERDOSE 「NEEDY GIRL OVERDOSE」キービジュアル(Steam商品ページ

 同作のヒロインは、ワガママで承認欲求強めな女の子“あめちゃん”。プレイヤーはそんなあめちゃんの「ピ」(パートナーのようなものらしい)となって、あめちゃんと一緒に生活しながら、彼女を最強のインターネットエンジェル(配信者)へと育てていくことになります。

 企画・シナリオを手掛けるのは、著書に『僕はにゃるらになってしまった 〜病みのインターネット〜』や『承認欲求女子図鑑』などを持ち、ライター・オタクとして活動する“にゃるら”@nyalra)さん。なぜにゃるらさんが同作に関わることになったのか、ヒロインの属性や「配信者育成」というテーマはどのように決まっていったのか、「承認欲求」についてどう考えているのかなど、同作やインターネットについて話を聞きました。

取材・文:文章書く彦
構成:池谷勇人(ねとらぼ副編集長)


NEEDY GIRL OVERDOSE 実況PV

にゃるら プロフィール

1994年生まれ。沖縄県出身。上京後に即大学を中退し、主に家でアニメや漫画・インターネットを繰り返すだけの人生をおくる。オタク。
著書『僕はにゃるらになってしまった 〜病みのインターネット〜』(KADOKAWA; New版)、『承認欲求女子図鑑』(三才ブックス)など。



企画書見せた瞬間に「じゃあこれやろう」

―― 最初に自己紹介からお願いします。

にゃるら:にゃるらと申します。普段はTwitterで活動していて、文筆業的なことをやってます。「NEEDY GIRL OVERDOSE」では企画とシナリオで入っています。

NEEDY GIRL OVERDOSE にゃるらさん。本作では企画とシナリオを担当

―― ありがとうございます。まずはこのゲームがどのような経緯で作られることになったのかを教えてください。

にゃるら:プロデューサーと「久々にお茶しようぜ」ってなったときに企画書を見せたんです。それで「これいいじゃん」ってなって、そこからチーム集めをはじめました。

―― それはいつごろのことだったんですか?

にゃるら:2020年の6月ぐらいじゃないですかね。

―― では、製作期間は1年半ぐらい?

にゃるら:そうですね、でも企画練ったり詰めたりという時間が長かったので実質1年ぐらいです。

―― にゃるらさんはどんなきっかけでこの企画を考えられたんですか?

にゃるら:別のエロゲ会社の人から、「エロゲの企画考えてみてよ、面白かったら実現するよ」とは言われていて、企画を考えていました。ただ、僕がやりたかったことがビジュアルノベルではなかったので、いろいろなインディーゲームをプロデュースしてる人に話を持っていってみようと。セガサターンとか90年代のゲームに多かった「ゲームシステムのある作品」を目指したかったので、彼が適任だと思ったんです。

―― アイデアを考えはじめたのはいつぐらいですか。

にゃるら:本当に直前なので5月ぐらいですかね。

―― じゃあホントに素早く企画が決まっていったんですね。

にゃるら:そうですね、企画書見せた瞬間にプロデューサーさんが「じゃあこれやろう」って言って、僕もびっくりして。ディレクターにその場で電話して「お前はゲームを作るんだ」って言ってました。

―― すごいスピード感ですね。では、まずゲームの見た目の話からなんですけど……本作はドット絵の印象が強烈ですが、これは最初からイメージが決まっていた?

NEEDY GIRL OVERDOSE ドット絵で統一されたビジュアル

にゃるら:自分が最初からドット絵でやりたいなと思っていました。PC-98的な4:3比率のゲームをいくつか挙げて、こういうのやりたいなと。

―― にゃるらさん、年齢的にはドット絵世代ではないですよね。なぜ「ドット絵でやりたいな」と思っていたんですか?

にゃるら:セガサターンのギャルゲーが特に大好きで、あの時代のドット絵が好きなんですよ。だからあの時代のシステムを再現するならドット絵で行くべきという確信がありました。

―― PVなどを見るとバグやグリッチ(※)のような表現も見られるんですが、そういうのも最初からコンセプトの中にありましたか?

※グリッチ:コンピュータの故障やエラーによって生じるノイズのこと。ビデオゲームのみならずアートや映像表現などで意図的に用いられることがある

にゃるら:そうですね。ヴェイパーウェイヴ(※)的なものは取り入れようと思っていました。また自分が好きなゲームにPS版「serial experiments lain(※)」があって、特にCMで使われたPVのネット的な表現が好きなんです。それは意識していましたね。

※Vaporwave:2010年代に産まれた音楽ジャンル。音と同等かそれ以上に退廃的なビジュアルイメージが特徴的で、ビデオゲームジャンルにも影響を与えている

※Serial experiments lain:1998年にテレビ東京系列で放映されたアニメ。インターネットについて当時としてはかなり先進的な表現が為されておりいまだにファンも多い。プレイステーションで発売されたゲーム版は、プレミアがついている「高額ソフト」としても有名

NEEDY GIRL OVERDOSE 「serial experiments lain」(Amazon.co.jpより)

―― 主題歌はAiobahnさん(※)が担当されていますが、これも最初から決まっていたんですか?

※Aiobahn:大韓民国出身の音楽プロデューサー/DJ。本作の音楽を担当

にゃるら:Aiobahnに関しては自分の友達だったって感じなんですが、もちろん友達だからというだけではなく、彼の実力も知っていたので。ゲーム音楽にゲームとあんまり関係ない人を入れてみるのも面白いかなと思って選びました。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る