帝国データバンクが企業の移転動向を調査した「首都圏・本社移転動向調査(2021年)」を発表。2021年、首都圏から地方へ本社を移した企業が過去最多の351社となり、11年ぶりの転出超過となりました。
2021年は感染症の流行と拡大、その対策とともに、本社機能や主要拠点が首都圏に集中することのリスクや課題もあらためて認知された年でした。在宅勤務やテレワークが普及し、定着する中で「本社など主要拠点を都市部から地方に移転・分散する動き」が急速に進みました。
2021年に本社移転を実行した企業は2258社で、前年比1割以上増えました。1990年以降、2001年の2299社に次ぐ過去5番目。感染症対策において、県境をまたぐ移動の自粛が余儀なくされたことで2020年の移転計画を中止、延期とした企業も多く、2021年にその反動として増えたことも要因に挙げられます。
このうち、首都圏(東京、神奈川、千葉、埼玉が対象。以下同)からその他の地方へ、本社ないし本社機能を移転した企業は351社と、前年比2割超の大幅増加となりました。これまで最多だった1994年の328社を上回り、過去最多となります。
一方で、地方から首都圏へ本社を移転した企業は328社。こちらも前年比で約1割増え、2015年の335社に次ぐ2番目の多さでした。
地方の成長企業などを中心に首都圏に本社を移す動きも強まりましたが、それ以上に首都圏の企業が首都圏外へ移転する「脱首都圏」の動きが進みました。首都圏の“転出超過”となるのは2010年以来11年ぶりです。
どこでも企業活動できる、それならば移転は「思いきって」の動きに
これまでも首都圏企業の「脱首都圏」の動きは、大規模災害を踏まえたリスク軽減、少子高齢化や人口流出に悩む地方の活性化につなげるなどの目的で、政府や自治体による移転の優遇税制や補助金といった支援策が打ち出されてきました。しかし、企業側では地方に移転するメリットよりも、採用面や取引関係の維持などでデメリットが上回る認識も多くありました。
感染症の流行により、首都圏一極集中の事業リスクがあらためて顕在化し、併せて、企業も移転のメリットをあらためて見いだした格好です。
特にテレワークの一般化で「社員の出社なし」で業務を進行できる企業では、コストの掛かる首都圏でオフィスを維持するメリットが薄れており、逆に移転は企業活動においてもメリットと認識する企業が増えたからこその急増と同社は推定しています。特に売上高1億円未満の小規模企業の移転が176社と多く、意思決定速度、フットワークの軽いスタートアップによる移転意向が目立ちました。
なお、首都圏からの移転先として最も多かったのは「大阪府」の46社。大阪府への転出社数は2年連続で増加しており、2021年は過去最多数を更新しました。
次いで「茨城県」の37社、3位は「北海道」で33社でした。北海道は2019年比で約5倍に増えました。
これまで首都圏からの本社移転先は大都市部、あるいは、ほど近い北関東3県が多い傾向でした。しかし2021年は、遠地、人口密度の低い地方・中核都市が本社移転先候補となる例が増えました。このことも東日本大震災時の意向とは少し異なる企業・本社移転の新たな流れと思われます。
(少年B)
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