散歩中に踏切を渡ろうとした犬が線路に触れたら感電したらしく、踏切が苦手になってしまった……というツイートがTwitter上で3万件以上のリツイートを集める話題となっています。
この事案は、飼い主が愛犬・マリナちゃんとの散歩中、電車が通過した直後の踏切で発生したもの。足の裏が踏切に触れた瞬間にマリナちゃんが「ギャン!」と悲鳴を上げ、それ以来踏切嫌いになってしまったといいます。悲鳴は線路上の電気によるものだったのか? 飼い主はネットで調べてもはっきりしたことが分からなかったため、思い切って阪急電鉄にメールで質問を投げてみました。
すると阪急電鉄から線路を通じての感電が事実であり、現状は抜本的な解決が技術的に難しい……という丁寧な回答がありました。
回答では電車の通過直後は避け、少し待ってから通過したほうが感電しにくくなる、といった役立つアドバイスも。ねとらぼ編集部ではあらためて、阪急電鉄に取材。こうした現象が起こる理由と、注意点を聞いてみました。
阪急電鉄によると、電車が走る全ての線路には2種類の電流が流れているとのこと。
その電流の1つは、電車の動力であるモーターを動かしたり、空調を稼働させたりするための電流です。モーターを電池につなぐとき「電池の一方の極→モーター→電池のもう一方の極」という形になることから分かるように、電池から流れた電流がモーターに流れ、さらに電池に戻っていくことでモーターは回転します。同じように、電車は屋根に取り付けたパンタグラフから電流を取り込み、駆動用のモーターや空調などで使ったのち、使用した電気をレールを通して電力供給源である変電所に戻します。この変電所に戻る電流を「帰線電流」と呼びます。
もう1つの線路に流れる電流が、列車の位置に応じて信号機の制御を行うための電流。信号現示の制御には列車の位置情報を用いており、その検知のための電気が流れている……というわけです。ちなみに信号機を動かすための電流は線路上には流れていません。
このように、線路には「鉄道が走るための軌道」という役割だけでなく、「電気の通り道になる」という役割もあるのです。
阪急電鉄によれば、この常時流れている線路の電流はタイミングによって強くなる場合があります。帰線電流は列車の加減速などの運転状況や編成の両数、運行している列車の本数などさまざまな要因で変化します。例えば、列車が加速する際には普段よりも強い電流が流れるため、結果的に帰線電流は強くなります。
電車がモーターで動く以上、こういった電流の流れや強弱を完全にゼロにすることは難しく、阪急電鉄としてもいろいろと検討を重ねているものの、完璧な対策は難しいとのこと。線路の電流を弱めるための措置をとると列車の安全運行に影響が出る可能性もあり、即座に解決できない課題になっているということでした。
というわけで、ペットなどが安全に線路上を通過するためには、とにかく抱っこをするなどして「レールを踏ませないように通行する」というのがシンプルかつ即効性のある解決策。「大小はあるものの、線路には常にそれなりの電流が流れている」という点を忘れないようにしつつ、愛犬と楽しく安全に散歩をするのが大事……ということを教えてくれるツイートでした。
取材協力:阪急電鉄
関連記事
- 「水につかった車両は水が引いても使用しないで」 感電事故や車両火災のおそれあり、国交省が注意喚起
対処方法を説明しています。 - なぜ日本では「電線の地中化」が進んでいないのか?
いろいろ理由がある。 - ドイツの信号機は待ってる間にゲームで遊べるらしい
反対側で待ってる相手と対戦できます。 - これはエモい! 役目を終えた「信号機の墓場」が撮影される 異世界に迷い込んだような不思議空間
物語が始まりそう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.