とらのあな「ほぼ全店閉店」衝撃発表の理由とは? 店舗事業撤退の裏側を聞いてみた(1/2 ページ)
「とらのあなといえば同人ショップ」のイメージからは変わっていきそう。
同人ショップ「とらのあな」を運営する虎の穴が7月5日、池袋店を除く全店を8月31日をもって閉店すると発表しました。とらのあなはコロナ禍以降閉店が相次いでおり、残っていたのは6店舗のみ。それらの店舗も、1拠点を残して全て閉店する事態となりました。
今後はネットを使った通販を中心に、同人誌や商業誌、グッズなどの販売を続けていく方針とのこと。しかし、全国規模で展開していた店舗を閉めるということになれば、それなりに大きな影響があるのでは……。また、虎の穴が運営するファンティアなど別事業との関係も気になります。そこで、ほぼ完全閉店となる今回の事態の裏にはどのような事情があったのか、親会社であるユメノソラホールディングスの取締役であり、虎の穴の取締役でもある鮎澤慎二郎氏に聞いてみました。
ギリギリで決断した(ほぼ)全店閉店
──既にリリースなどで発表されてはいますが、今回の閉店についてあらためて具体的な理由を教えていただけますか?
以前から閉店が続いているように、コロナ禍の影響もあって店舗事業自体が厳しい状態になっているというのは、2020年以降変化していません。その状況下で、採算が厳しい店については一店舗づつ精査しながら撤退の可否を判断してきました。そんな中、7月から新しい四半期が始まるにあたって、これからの事業をどうするか議論する中で閉店を決定したという流れです。実態として、今回締めることになった5拠点は事業として採算が厳しく、それであればこの2年で大きく伸びている通信販売にしっかり投資をしていくべきでは……という判断から閉店することになりました。
──「閉店した方がいいのでは」という議論が始まったのは、いつ頃でしょうか。
2021年11月ごろです。我々は四半期ごとに来期どうしていくかを定めながら計画を組むんですが、ひとつ重要なのが夏コミと冬コミの繁忙期での売り上げの状況なんです。2021年は、夏コミが終わってこれから冬コミがくるという11月のタイミング(※)で、店舗での売り上げがそこまで上がっていませんでした。そこから「これからどうしていくか」という議論が始まりました。
※2021年は東京五輪延期の影響でゴールデンウィークにコミケを開催予定だったものの、感染拡大を受けて冬に延期となったため、夏コミは開催されなかった
──同人誌の委託販売の仕事だから、夏と冬のコミケのタイミングでの売り上げが経営判断の重要な材料になるわけですね。
そうですね。なので2022年2月ごろにも、冬コミが終わって実際どうかという議論が出ました。そこでも状況には大きな変化がなかったんですが、もうひとつ大きな商機としてゴールデンウィークがあります。コロナも落ち着いてきて制限が解除されるという中で期待を持っていましたが、7月以降の事業計画を組もうと思うと5月というのはギリギリのタイミングです。そんな理由もあって、このゴールデンウィークが過ぎたあたりの数字から撤退を決断しました。撤退するにしてもすぐ撤退できるわけではないですし、正直何度か行ったり来たりしながらの決断でした。
──店舗に関して思い入れもあるでしょうしね……。
弊社の代表も、感情的な面も含めてそこは悩んでいましたね。28年前に秋葉原で店を立ち上げて、そのままずっとやってきたので。しかし事実として厳しい売り上げの数字がある中で、ここで決めないと7月以降の計画が完成できませんでした。閉店を決めた要素として、店舗が定借であるという事情もありまして、物件を借りられる期限が切られているのでこのタイミングでの決断になったという理由もあります。本当に最近決まったので、従業員には迷惑をかけてしまいましたし、クリエイターやお客様にもギリギリの案内になってしまいました。そこは大変申し訳なく思っています。
──それだけ店舗の状況が厳しいというのは、やはりコロナという要因が大きかったのでしょうか?
短期的には集客も激減し、コロナの影響が確かに大きかったといえます。とはいえ、しっかり店舗事業を維持している他社さんもいらっしゃるので、コロナだけかと言われると違います。営業努力や、適切に店舗のありようを変化させていくというところにテコ入れできなかったところもあるので、コロナのせいだけにするべきでもないと思っています。本来ならば事業転換として店舗事業を見直すタイミングもあったと思うので、しっかりテコ入れをするだけの手がなかったというのが正直なところです。
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