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さかなクンをのんが演じてさかなクンが不審者を演じる映画「さかなのこ」レビュー(1/3 ページ)

性別の違いはささいなことである。

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 さかなクンの半生をのんが演じる映画「さかなのこ」が9月1日に公開された。

さかなクンをのんが演じてさかなクンが不審者を演じる映画「さかなのこ」レビュー 『さかなのこ』 9月1日(木)よりTOHOシネマズ 日比谷 ほかにて全国ロードショー 配給:東京テアトル (C) 2022「さかなのこ」製作委員会

 本作のキャッチコピーには「さかなクンがさかなクンになるまでのすっギョいおはなし」とある。実際の本編を見ると確かに「すっギョい……(いろんな意味で)」と思わざるを得ない、普通の実話ものではあり得ない特徴がわんさかとある映画だった。

映画「さかなのこ」予告

のんとさかなクンは確かに似ていた

 さかなクンをのんが演じるコンセプトを聞いて、誰もがまず「……性別は……?」と思うだろう。だが、沖田修一監督はこのように公式のコメントを残している。

「さかなクンを描くのに、性別はそれほど重要ではないと思いました。実際と顔が似ているとか似ていないとか、そういう問題を取っ払って、もっと自由に、さかなクンの映画を作りたいと思いました」

 自分の先入観や視野の狭さを思い知らされるコメントである。実際、映画本編を見ると確かにのんとさかなクンが似ているとか似ていないとか、性別が違うとかは本当に良い意味でどうでもよくなってくる。

 その理由の筆頭が、さかなクンの底抜けな明るさを、のんが抜群の笑顔や、自然な一挙一動を持って見事に表現しているように思えることだ。その明るさは決して「さかなクンのモノマネ」などではなく、のんというその人が本来持っている「らしさ」そのまんまにも見えてくるのだ。

さかなクンをのんが演じてさかなクンが不審者を演じる映画「さかなのこ」レビュー (C) 2022「さかなのこ」製作委員会

 しかも、その明るさ以外でも、漠然とした「のんとさかなクンって確かに似ているのかもな」という印象が、映画を見ている間じゅう頭に植え付けられるような、独特の感覚があった。では、何が具体的に似ているのか?と問われれば、これがまったく言語化ができなくて困る。「よくわかんないけど、なんか似ているんだよ!」と言うしかないので、各自が実際に映画を見て確認していただきたい(丸投げ)。

ほぼ完璧な不審者として登場するさかなクン

 本作のさらなる衝撃、それはさかなクンの幼少期を描く序盤のパートにて、さかなクン本人が「ギョギョおじさん」というキャラクターを演じていることである。ギョギョおじさんは下校途中の小学生を見るにつけ足早で近寄り、「ねぇねぇ、君はお魚さん好き?」と聞いたりする、客観的に見れば純度99.9%の不審者だった。

さかなクンをのんが演じてさかなクンが不審者を演じる映画「さかなのこ」レビュー さかなクンにしか見えないが、劇中では不審者そのものな「ギョギョおじさん」というキャラクターである。(C) 2022「さかなのこ」製作委員会

 だけど、幼少期のさかなクンこと、当時「ミー坊」と呼ばれていた少年はもちろんその頃からお魚さんに興味津々であり、おまけに人懐っこい。望むところだと言わんばかりに両親へ「ギョギョおじさんのお家に遊びに言っていい?」と聞くのだが、父親からは「イタズラでもされたらどうするんだ!」と猛反対される。当たり前の親心である。

 そして、ギョギョおじさんのお家に遊びに行ったミー坊がどうなったのか? という顛末は、ぜひ映画本編を確認してほしい。お魚の話をするのが楽しくって夜までお家にいてしまい警察に通報されてしまうのは「でしょうね」と完全に想定内だったが、その後のまさかの光景がぶっ飛びすぎていて、「どういう気持ちになれと?」と思うしかなかったのだから。

さかなクンをのんが演じてさかなクンが不審者を演じる映画「さかなのこ」レビュー (C) 2022「さかなのこ」製作委員会

 もちろん、このギョギョおじさんは実在しない映画オリジナルキャラクター。脚本家の前田司郎によると、ギョギョおじさんは「さかなクンの影というか、もしも歯車が1つズレていたらと思って」創作した人物だそうだ。

 なるほど、後述もするが、現実のさかなクンも映画の中のミー坊も、人の「縁」や本人の「お魚が好き」という気持ちのおかげで成功していくのだが、ギョギョおじさんのように「そうなれなかった」人物は現実の世界にはいるかもしれないのだ。

さかなクンをのんが演じてさかなクンが不審者を演じる映画「さかなのこ」レビュー (C) 2022「さかなのこ」製作委員会

トラウマ化する大好きなタコさんをめぐる出来事

 衝撃はまだまだある。例えば、ミー坊は幼少期に「大好きなタコさん」をめぐってショッキングすぎる出来事に遭遇することになるのだが、こちらはほぼ完全に実話。笑っていいのかどうかも分からない、嘘のような本当にあった出来事がすさまじい絵面となっていた。

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