ITmedia ガジェット 過去記事一覧
検索
ニュース

不正利用への懸念で物議をかもしたイラスト生成AI「mimic」が再始動 運営が語る“炎上”の原因とは(2/3 ページ)

「実態と異なる架空のmimicのようなものが広がってしまった」――。

advertisement

原因は“情報伝達と信頼の不足”

―― まず、mimicを開発した背景からお聞きしたいです。

RADIUS5:弊社ではこれまでもクリエイター向けのAIサービスを開発してきました。そんな中、出来上がったAIをご利用いただくだけでなく、クリエイターにAI自体をお渡しした場合、どのように役立てていただけるのかというアイデアから、mimicを開発することになりました。

mimicインタビュー クリエイターのメリット(mimic公式サイトから引用)

―― クリエイターをサポートするということが主な目的だったのですね。

RADIUS5:そうですね。現在、私たちのサービスも含め、AI技術が万能かのように捉えられている部分があると感じているのですが、少なくともmimicに関しては、クリエイターの方が作られるものには到底及ばないと思っています。

 描ける範囲もまだ顔だけですし、そもそもアップロードした画像がうまく認識されない場合もあります。クリエイターの方のイラストを仮に100点とすれば、mimicが生成できるものはせいぜい70〜80点程度で、とても代替になるようなレベルではありません。あくまで、創作活動の補助という立ち位置で開発を進めました。

―― 他の画像生成AIと比べ、mimicが特にクリエイター向けである点を教えてください。

RADIUS5:他のサービスは単語や文章を入力してイラストを生成するため、使いこなすにはある程度慣れやコツが必要になってくると思うのですが、mimicは絵を読み込ませるだけでいいので、クリエイターの方に利用していただきやすい仕様となっています。

 また、クリエイター専用のイラストメーカーが作れるという利点もあります。実際にテスターの方とお話させていただいた印象としましても、AIに自分の絵を読み込ませることで、創作の幅が広がる可能性があると実感しました。

―― 数あるAIサービスの中でmimicだけ“炎上”してしまったのはなぜだと捉えていますか?

RADIUS5:いくつか要因はありますが、やはり、私たちのサービスの内容について正しくお伝えできなかったという点が一番大きいと考えています。例えば、ベータ版では生成される画像は30個までという制限があったのですが、自由に何個も作れてしまうと解釈されてしまったりだとか、そういった実態と異なる架空のmimicのようなものが広まってしまった。そこには、私たちへの信頼不足や、mimicの仕様が分かりづらかったということなども影響していると思います。

―― なるほど。批判の中で最も多かったのは不正利用への懸念でしたね。

RADIUS5:当初は事前のテスター募集時の反応などから、ここまでのリクエストをいただくことは想定していませんでした。そのため、もともとはアップロードされた画像を、目視でチェックする予定でした。また、生成される画像には全てサービス名・ロゴの透かしが入るなど、安易に不正目的で利用できないように対策はしておりました。

 しかしながら、想定を上回る数のリクエストをいただき、不正対策そのものを見直す必要があると判断し、サービスを一時停止することにしたという次第です。

―― 利用規約には「作った画像を運営元がマーケティングで利用する」旨の記述があり一部物議をかもしていましたが、具体的にどのような用途を想定していたのでしょうか?

RADIUS5:ユーザーが公開を許可している画像に関しては、SNSでのシェアや、取材掲載などの素材として利用させていただく想定でした。またこの記述によって権利がユーザーから私たちに移転するような規約にはなっておらず、生成された画像の知的財産権はあくまでユーザーに帰属する内容となっております。

mimicインタビュー 利用規約より引用

―― “炎上”後、批判だけではなくさまざまな反応が寄せられたと思います。それらを受けて、最後に今後の展望について一言お願いします。

RADIUS5:ベータ版のサービスリリース後、たくさんのご意見を頂戴しましたが、励ましやサービスに対する応援のメッセージもたくさんいただきました。私たちとしてはあらゆるご意見を踏まえ、クリエイターに安心してご活用いただけるAIを目指して、サービス内容を検討していきたいと考えております。

 


 

 AIに他人の著作物を学習させることの是非については、今なお議論が分かれるところです。一応、第三者の著作物でも「情報解析」においてAIに学習させること自体は、2019年に改正された著作権法第三十条の四で認められています(関連記事)。

 しかし、mimicでは当初から他者のイラストを学習させることを、利用規約の範囲で不正利用として禁止していました。また、先日発表された「mimicベータ版2.0」ではさらに厳格な対策が講じられています。当初こそ取り締まりの方法が不十分であったものの、mimicは人間の創作活動をリスペクトした運営姿勢を打ち出していると言えそうです。

 RADIUS5は「mimicベータ版2.0」の発表にて「全ての不安を解消することはできないかもしれませんが、そんな中でもmimicをお試しくださるクリエイター様がいてくださるとしたら、弊社としては大変ありがたく思います」とコメント

 発表に対してTwitterのリプライ欄では、「改善内容ほんと神すぎる」「想定よりはるかにちゃんとしていてびっくりした」など好意的な反応が多く寄せられています。mimicの今後の展開に期待です。

 

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る