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アニメ界の“最終防波堤” 「作画崩壊」でトレンド入りした演出家に直撃インタビュー 「作画監督が10人とかいるアニメは無駄の極み」(4/5 ページ)

“落ちそう”なアニメの裏側。

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――クルーザーは貸し切ったんですか?

佐々木 いやいや(苦笑)。2時間コースで、せいぜい1万数千円ですよ。

――スタジオレオの船じゃなかったんだ……。

佐々木 スタジオレオをどんな会社だと思ってたんですか!

アニメーターA 突然「行くぞ」と誘われて。近所の焼肉ぐらいだったら良いですけど、忙しかったので断りました。

佐々木 息抜きに制作の子と行ってきました。

――過去に「年収が4000万円近い」と投稿していた件は?

佐々木 あれは会社としての売上です。

――個人の年収ではなかったんですね。

佐々木 でも、それぐらいは少し検索すれば想像つきそうなものだと思うんです。先ほどの「みんなにアニメ業界のあり方について考えてもらいたい」という話に戻りますが。グロス(下請け)1本が500万円ぐらいなので、8本作れば4000万円近い金額になる。もっとそういう業界構造に目を向けてもらいたいですね。

――お金の話でいうと、「予算を抜いた」「100万円儲けた」といったツイートも物議を醸しました。

佐々木 あの一連のツイートも、アニメ制作におけるお金の流れを知っていれば違和感はないはずです。まず俺はスタジオの代表で、会社を維持する必要がありますから、管理費として予算から適当な金額を「抜く」のは当然です。100万円についても、先ほどの単価で計算すると、レイアウトが2000円×250カットで50万円。演出料が20万円。コンテが25万円。全体の金額95万に10%の管理費が乗るため、プラス9.5万で104.5万円になります。

――そう説明されれば納得できますね。

佐々木 ボランティアではないので、当然スタジオの家賃、光熱費、ネット代、駐車場代といったものも賄わなければなりません。維持費だけでも、月に60〜70万円は必要になる。それを払うためには作業に見合った「報酬」や「管理費」が必要です。アニメを見る側にもそうした資本主義の根本と、経営者目線を知ってもらいたいんです。

スタジオレオ設立と、コンビ結成

――スタジオレオについても聞かせてください。設立はいつごろですか?

佐々木 2018年ですね。それまでも所属していた会社で演出・制作・営業などを兼ねた動きをしていたんですが、それが自分にとって一銭にもならなかった。そこで、これは自分で会社やったほうが良いんじゃないかと思ったんです。

――社内には現在何人いらっしゃるんですか?

佐々木 今は4人ぐらい。一時期は10人ほどいましたが、コロナ禍もあって、自宅作業が増えてます。

――Aさんはいつからスタジオレオに?

アニメーターA 僕は去年(2021年)の夏ぐらいから。佐々木さんとは以前ちょっと仕事をしたことがあり、知人のアニメーターが佐々木さんに会いたいというので、その仲介を兼ねてスタジオに遊びに来たのがきっかけです。

佐々木 お互いの仕事のスタンスが似ているから、相乗効果があると思って誘ったんです。

――今はどういう分担でお仕事をされてるんでしょうか。

アニメーターA 基本的にレイアウトの絵の部分は僕が全部描いて、タイムシートは時間が無いと佐々木さんに投げてますね。机が横に並んでいて、信頼関係もある相手だから、ここまで描けば演出上がりとして仕上げてくれる、というのが分かる。

佐々木 あとは作監に入れるだけだから、本当に無駄がないんです。

スタジオレオの作業部屋。佐々木さんの机(右)のすぐ左隣にAさんの机がある

――第1原画の演出上がりまでは2人でほぼ完結してしまうと。

佐々木 そこから先の第2原画※は時間が無いので、海外のスタジオにお願いしています。

【※第2原画】アニメーターが作業した「1原(レイアウト+ラフ原画)」は演出や作画監督などによるチェック・修正を経てアニメーター本人に戻され、原画の清書作業をするのが基本の流れ。しかし2000年代以降はスケジュールなどを理由に、後半の清書作業を「第2原画」として国内外の別のアニメーターに担当してもらうケースが増えている。

アニメーターA 時間がないのは画面全体に現れてますよね。でも、もともとの時間がないんだからそれはどうしようもない。作品単位でスケジュールや金額の条件を改善してもらえるなら、自分ももっと時間をかけてやれるんですが……。

 ギリギリのスケジュールで拘束費も出ず、単価も安いのでは力を入れられない。そこに力を入れてしまうと、他のちゃんとした条件の仕事が何もできなくなって、赤字で食えなくなってしまう。

――良いスケジュールで、ガッツリ作り込んでみたいという野望もある?

佐々木 無くはないですけど、そんな仕事は来ないです(笑)。周りもそれを分かってるというか。業界にはつねにやばい、どうにかしなくちゃいけないタイトルであふれている。俺はまず、それをどうにかしなくちゃならないんです。

アニメーターA それに、1本をとことん作り込むタイプの人間でもない。自分と同世代の若手に凝り症な人もいますけど。僕は普通よりもちょっとクオリティーが高いぐらいのところに上げるのは全然やりますが、デジタルを使って凝りに凝るというタイプじゃないんです。

――手掛けたい理想のアニメ像みたいなものは?

アニメーターA 佐々木さんはどうか知らないですけど……僕は、今の主流のアニメを面白いって思ってないんです。アニメーターになってから面白いと思った作品はほとんどなくて、好きなのは子どものころに見ていたものが多いです。富野由悠季監督、出崎統監督、古橋一浩監督、望月智充監督作品は好きなものが多いですね。

――最近主流のアニメはどういったところが合わないんでしょうか?

アニメーターA 基本的に「作画アニメ」が全然好きではないんです。「良いアニメ」は良い作画と内容が結びついて、ちゃんと相乗効果として良いものになってる。仕事だから作画については詳しいですが、別に「作画アニメ」って面白かった試しがないので。

佐々木 トータルで作品として面白くあるべきで、突出した「神作画」が作品のためになるとは限らない。クリエイターの顔が見えるかどうかも、本来作品の良しあしには関係ないことですし。

アニメーターA そうですね。面白ければ、作画なんて普通ぐらいで良いんです。作画が悪目立ちしすぎて、むしろ内容がぶれることもある。アニメオタクの人ほど、そこら辺が割と盲目な人が多い。だから同世代の監督とも意見がぶつかることが多いです。

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