ITmedia ガジェット 過去記事一覧
検索
ニュース

KADOKAWA夏野社長「当時はまったく知らなかった」 社内で贈賄の指摘受けてから約7500万円支払っていた(1/2 ページ)

夏野社長は角川歴彦容疑者らの「後任を立てるつもりはない」と述べています。

advertisement

 KADOKAWAは10月5日、取締役会長 会長執行役員の角川歴彦容疑者の逮捕および起訴を受け、記者会見を実施しました。代表取締役社長の夏野剛氏が、角川歴彦容疑者らによる辞任の申し出を取締役会が承認したこと、その影響などについて語りました。

KADOKAWA代表取締役社長の夏野氏ら 左から順に取締役の村川忍氏、代表取締役社長の夏野剛氏、代表取締役の山下直久氏(撮影:上代瑠偉)

 代表取締役社長の夏野剛氏は冒頭で、読者やクリエイター、取引先などに対して「当社への信頼を裏切ることになってしまい、多大なる心配とご迷惑をおかけしていることを深くお詫び申し上げる」と謝罪。東京五輪に関わるアスリートやボランティア、観客などの関係者にも謝罪の意を示しました。

 夏野氏は続けて、取締役会が角川歴彦容疑者らによる辞任の申し出を承認したことについて報告。この判断は逮捕・起訴にいたったことを厳粛に受け止め、スポンサー契約時の「経営者としての責任」を鑑みたものである、と説明しました。あわせて、KADOKAWAの信頼回復に専念するため、夏野氏が務めている政府の規制改革推進会議の議長を辞任する意向も示しています。

社内で贈賄の指摘受けてから約7500万円支払っていた

 外部の弁護士で構成される調査チームによると、KADOKAWAは東京2020オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の元理事側からの要望にもとづき、コンサルティング事業委託契約を「コモンズ2」(逮捕された大会組織委の高橋元理事の知人の会社)との間で、2019年6月17日に締結。贈賄(ぞうわい)に該当する可能性があることは法務部門から事前に指摘されていたにもかかわらず、7665万円(消費税込み)を分割で支払っていたことが明らかになっています。

 弁護士の國廣正氏は「最終的に刑法犯になるかどうかは裁判所が決める」としつつも、「賄賂と評価され得る疑わしい行為であったことには間違いない。コンプライアンス上、あるいはコーポレート・ガバナンス上、極めて問題の大きいものであった」と指摘しました。なお、これらはこれまでの調査で分かった内容であり、最終調査報告ではありません。

KADOKAWA代表取締役社長の夏野氏ら 左から順に弁護士の大野徹也氏、弁護士の國廣正氏(撮影:上代瑠偉)

夏野氏「まったく知らなかった」

 夏野氏は当時、法務部門からの指摘について把握していたのかという記者から質問に対して、「当時、私はKADOKAWAの取締役社長ではなかったので、報告はまったく存じ上げなかった」と回答。東京五輪のスポンサー契約への関与についても、「本件については一切関わっていない」と明言しました。

 また、元代表取締役社長の川上量生氏の関与について、夏野氏は川上氏が親会社であるカドカワの代表取締役社長を務めており、子会社には関わっていなかったとして、「川上さんの関与はなかったと会社は考えている。今回の調査の対象にもなっていない」と説明しています。

KADOKAWA代表取締役社長の夏野氏ら 代表取締役社長の夏野剛氏(撮影:上代瑠偉)

夏野氏「元会長の後任を立てるつもりはない」

 一方で、角川歴彦容疑者らの逮捕・起訴は会社経営には少なからず影響が出ています。現時点での影響は「それほど大きなものではない」(取締役の村川忍氏)とはいえ、一部クライアントからは広告などBtoB領域での出稿見直しなどの動きが見られます。また、実際にKADOKAWAから離れるという動きを見せる作家は「ほぼいない」(代表取締役の山下直久氏)ものの、今後のKADOKAWAの経営姿勢などを見て、判断するという意見もあるとのこと。

 しかし、実際にもっとも大きな影響は「角川歴彦容疑者の喪失」によるものかもしれません。KADOKAWAは角川書店の時代から、創業者で角川春樹氏と角川歴彦容疑者の父である角川源義氏、角川書店の元社長で角川歴彦容疑者の兄である角川春樹氏、角川歴彦容疑者と、それぞれ独自の手腕を見せた角川家の経営者により、大きな成長を遂げてきたからです。記者からは角川歴彦容疑者の辞任による影響についての質問が多く寄せられました。

KADOKAWA代表取締役社長の夏野氏ら 代表取締役社長の夏野剛氏(撮影:上代瑠偉)

 夏野氏は会長職と副会長職について、「後任を立てるつもりはない」と言及。角川歴彦容疑者については「業界をリードしてきた偉大な功績のある経営者だと思う。その知見と経験、判断能力は社員あるいは会社は大変頼りにしてきた」と評価しつつも、「すべての事業に関して、元会長のおうかがいを立てるような時間や余裕はない。ほとんどの事業は会社、あるいは組織として動いていた」として、会社経営への影響はさほど大きくないという見方を示しています。

 夏野氏は今後について「きちんとしたコンテンツを世の中に送り出していく作業を、地道に続けていくことが最大の信頼回復(につながるもの)だと思っている」と発言。「角川歴彦容疑者の喪失」をどのように補っていくのかという編集部による質問には直接的には回答せず、「私もまだ1年半だが、最高業績を出すなど事業の拡大は順調に進んでいる。経営者の端くれとしてできるだけのことをして、さらに会社を成長させていきたい」と意気込みを述べました。KADOKAWAが信頼を無事取り戻し、引き続き成長の道を歩めるのか、今後の動向が注視されます。

※初出時、川上量生氏について代表取締役社長を務めていた会社名を「KADOKAWA」、役職名を「前代表取締役社長」と記載していましたが、正しくは「カドカワ」および「元代表取締役社長」でした。お詫びして訂正します【10月6日1時45分】

※初出時、元KADOKAWA取締役副会長の松原眞樹氏について「逮捕および起訴」されたと誤解を招く記載をしておりました。松原氏に逮捕や起訴の事実はなく、本件について自宅を捜索された後、取締役副会長を辞任をしています。お詫びして訂正します【10月6日15時50分】

       | 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る