フィルムアート社は2月4日、他社製の映画パンフレットで初出となっていた原稿を適切な手順を踏むことなく書籍に収録していたとして、関係する13社と著者に対し謝罪しました。
※フィルムアート社の謝罪は道義的理由によるものでしたが、記事初出時に「法的問題によるもの」であるかのように誤解を招く表現がありました。お詫びの上訂正いたします(2月9日15時30分)
問題となったのは2022年12月に発売された映画批評集『映画よさようなら』。著者である佐々木敦さんが映画パンフレットに寄稿していた論考が、パンフレットを手掛けた各社への確認を取ることなく、書籍に収録されていました。
映画会社のサニーフィルムが、パンフレットに収録していた原稿4本が無断で転載されているとTwitter上で訴えたことで、問題が公に。
サニーフィルムは佐々木さんからは丁重な謝罪があったとしつつも、フィルムアート社の担当者からの説明は「映画会社を軽視しすぎ」な内容であったと指摘。
「転載のご連絡の件ですが、私や私の上司は、ISBNがふられた出版物からの転載の場合、つまり出版社さんには転載のご報告をしておりますが、映画会社さんには転載のご報告をしておりません ただ、セルゲイ・ロズニツァの論考に関しては数が多く、またパンフレットも頁数があるものでしたので、転載のご連絡をするべきでした。大変失礼いたしました。以後気をつけます」(サニーフィルムが公開した、フィルムアート社担当者からの謝罪メール)
こうした編集体制について、「ISBNやページ数云々は関係なく、他社(者)の原稿を使用するならば事前に断りを入れることは当たり前じゃないでしょうか」と批判した上で、「後から謝れば良いという根性は許せない」として、関係各社への説明を求めていました。
フィルムアート社は謝罪声明において、担当編集者の認識に誤りがあったことや、それをチェックする体制が十分に機能していなかったと説明。本来は初出媒体全てに事前連絡すべきであったとして、「出版に携わる会社として決して許される行為ではなく、猛省しております」と謝罪しました。また、この件の責任はフィルムアート社と同社社員にあり、著者の佐々木さんは知り得るものではなかったと強調しています。
謝罪先の13社
- ビターズ・エンド
- 東北新社
- イメージフォーラム(ダゲレオ出版)
- サニーフィルム
- マジックアワー
- リアリーライクフィルムズ
- 長谷工作室
- 松竹
- チャーム・ポイント
- シネマトリックス(創人舎)
- 東風
- 東京テアトル
- ヨアケ
サニーフィルム公式アカウントはフィルムアート社の謝罪声明について「全体的に納得出来る内容」であることや、同社担当者らによる直接の謝罪も予定されていることから「一旦これ以上はコメントは控えます」としています。
追記(2月8日13時40分)
フィルムアート社は7日、誤解を招く文面があったとして謝罪声明に追記しました。同社は謝罪声明に業界全体の方針を明記する意図はなかったとしつつ、当初、転載原稿の初出媒体全てに事前承諾を得る必要があると記していた箇所を、「可能な限り転載の概要に関しご確認いただくべきと考えております」と訂正しました。
《訂正前》当然のことながら、過去に他媒体で掲載された文章を集めて書籍としてまとめて出版する際には、初出である媒体すべてに事前に連絡し、転載の概要に関しご確認とご承諾をいただく必要がございます。
《訂正後》弊社は過去に他媒体で掲載された文章を集めて書籍としてまとめて出版する際には、初出である媒体すべてに事前に連絡し、可能な限り転載の概要に関しご確認いただくべきと考えております。
同社が「承諾」という表現を削除したのは、サニーフィルム側が一連の抗議ツイートの中で、フィルムアート社に対し「二次使用料を請求する事を決めた」と投稿していたことを受けたものと考えられます。
原稿の契約形態にもよりますが、一般的に著作権(財産権)の譲渡を伴わない契約の場合、著作権は執筆者に残るため、初出であることを理由にパンフレットの製作元が二次使用料を求めるのは不自然です。そのためSNS上では、「著作権が執筆者からサニーフィルム側に譲渡される契約になっていなかったのであれば、サニーフィルム側がフィルムアート社側に二次使用料を請求することはできないのではないか」といった指摘や、フィルムアート社の声明に対する疑問の声が上がっていました。
著者である佐々木氏も、本件は「いわば礼儀の問題」であったとして、「一次媒体(サニーフィルム)には拒絶する権利も二次使用料を請求する権利もありません」とツイートしています。
またSNS上では、ねとらぼの本記事に対しても、著作権が譲渡されていない原稿の二次使用料請求を是認する内容だとして、批判の声が上がっていました。
本記事の本文上では当初、“フィルムアート社が関係13社と著者に対し謝罪した事実”を主として扱っており、サニーフィルムが二次使用料を請求している件には触れていませんでした。これには、上述のような“是認”を避ける意図がありましたが、ミスリードを避けるためにも、より詳細な説明が望ましかったことは間違いありません。読者の皆様の声を真摯に受け止め、今後のより良い記事作りに生かしてまいります。(ねとらぼ編集部)
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SNS上で問題が指摘されていました。