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卵生産者、値上げへの非難に「もうこれ以上値段をたたかないで」 苦境を語るツイートに反響、実情を聞いた(1/2 ページ)

発信した半澤鶏卵の代表取締役に詳しい話を聞きました。

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 鳥インフルエンザの流行がもとで鶏卵が不足する昨今、消費者からの値上げへの不満に対し、卵生産者が悲鳴を上げたツイートに注目が集まっています。ツイートを投稿した半澤鶏卵の代表取締役、半澤清哉(@hanzawa_seiya)さんに詳細を聞きました。

ALT 卵は「価格の優等生」のイメージが強いせいで、やむなく値上げすると非難を浴びることもあるようで……

 半澤鶏卵は、鶏の育成から卵および加工品の生産・販売、直営カフェでのスイーツ販売まで手掛ける会社。卵が値上がり傾向にある最近では、消費者から「卵1パック200円台は高すぎ! ぼったくりすぎ!」などといわれることがあるといいます。

ALT 「高すぎ!」といわれてもどうしようもない事情があるようです

 半澤さんはこれに対し、「もうこれ以上、値段をたたかないでください」とツイート。「僕たちの利益は2%程度」「鳥インフルエンザが1羽でも発生したら、まわりの鶏も全て殺処分となり、1年近くもの間売上がゼロになる」と事情を語りました。

 この苦境に対し、Twitterでは「卵の高騰は正直痛いですが、そもそもの価格が安すぎたのではないかと思います」「今までが安過ぎたんですよね。でもそれが当然だと勘違いする人が多い」と、理解する声が多数。「大変だと思いますが乗り切ってください」と、応援の声が寄せられました。

 編集部は半澤さんを取材し、価格の決め方や、鳥インフルエンザがもたらす被害など詳細を聞きました。

―― 卵の価格は値上がり傾向にありますが、どのように価格を設定されていますか?

半澤さん 主に下記の2パターンがあります。

  • 年間固定:主に鶏卵の生産コスト(飼料や水道光熱費、配送費など鶏卵の生産から販売までにかかるコスト)から算出する方法
  • 相場連動:毎日更新されている、JA全農たまごさんが発表している鶏卵相場を元に算出する方法

 相場連動についても、毎日変動、週変動、月変動、四半期変動など、お取引先によってさまざまな使い分けをします。

―― 鳥インフルエンザが発生した場合、売上が1年近くゼロ円になるとのことですが、その原因や背景を教えてください

半澤さん 鳥インフルエンザが1羽でも発生した場合、そのまわりで飼っている鶏は全て殺処分となります。「新しいヒナを入れればいいじゃないか」という声もありますが、ヒナは生き物ですから、手配したらすぐに仕入れられるものではありません。どこの生産者さんも年間スケジュールを組んでヒナ屋さんには1年以上前から予約しておりますので、すぐには手に入りません。

 また、鳥インフルエンザ発生後は消毒や検査、30羽ほど鶏を入れて異常がないかといったテストに最低3カ月は必要です。ヒナの導入後も、製品として出荷できる卵を産み始めるまでに、少なくとも200日近くは育てなければなりません。ヒナの導入が先延ばしになれば、約1年近くは卵を出荷できない状態が続きます。ゆえに、その間は売上が出ないのです。

―― 業界全体では、価格についてどのような声がありますか

半澤さん ただでさえ薄利多売の商売で、各生産者さんにおいては厳しい経営状況が続いています。にもかかわらず、今期は鳥インフルエンザの感染拡大や、飼料、電気、資材等の高騰で、養鶏場にとっても過去に例がないほどの危機的状況です。

 これは業界としての責任もありますが、競争の原理が働くと、売り場のシェアの取り合いで価格競争が生まれ、安いイメージがついてしまっている卵は、より安い品が一番売れます。このため大手の生産者さんが有利となり、小〜中規模の生産者さんは収支が合わずにやめていかれるケースが多くなっており、厳しいという声はよく聞こえてきます。

―― 今回のSNS上での反響をどのように受け止めていますか?

半澤さん 想像していた以上に、皆さまからのコメントやメッセージが温かい言葉にあふれていて、業界の方々全員に見てほしいくらい、励みになるものばかりでした。本当に感謝しかなく、思い切って投稿して本当に良かったです。

 また、卵業界の課題として、業界の外に発信する力がまだまだ不足していると感じております。2022年の同じ時期にも、卵の「カラザ」についてTwitterで投稿した際にもバズった経験があり、そのときに、今まで業界では当たり前だと思っていたことが、きっと一般の消費者にとって当たり前ではないことが多いぞ! と感じました。

 それ以来、さらに自身の発信に信用度と影響力を持たせたいと思い、2022年の7月、当時日本にはまだ5〜6人しかいなかった、卵関連資格の最高峰「五ツ星タマリエ」に挑み、史上最年少で取得することができました。今後も業界を代表して、生産者と消費者がお互いに歩み寄れるような情報発信をしていきたいと思っています。

―― では卵について、他にも消費者に知ってほしいことがありましたら教えてください

半澤さん 卵は生命が誕生できるほどの栄養が詰まっている完全栄養食品ですので、できるだけ無駄にはしてほしくはありません。お伝えしたいことは山ほどあるので、今後も定期的に投稿していきますが、特にお伝えしたいのが「賞味期限が過ぎた卵を捨てないで!」ということです。

 卵の賞味期限は、「安全に生食できる期間」を指します。賞味期限の定義もお伝えしようとすると長くなってしまうので割愛しますが、25度以下で保存(冷蔵庫での保存を推奨)してあれば、賞味期限が過ぎても十分加熱調理する前提であれば、2週間程度は問題ないとされています(参考:日本卵業協会内閣府 食品安全委員会)。もちろん、割った後に明らかに異常をきたしている状態のものが見つかったら、使用は控えてください。

協力・画像提供:半澤清哉(@hanzawa_seiya)さん

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