ガイア動物病院 院長 松田唯(まつだゆい)
埼玉県生まれ。北里大学獣医畜産学部卒業後、千葉県内と東京都内の動物病院で勤務。
2019年7月、ガイア動物病院(東京都杉並区)開設、院長に。治療法や薬について分かりやすく説明し、治療法のメリット・デメリットを理解して飼い主様が選択できる診療を心掛けている。
――今回の漫画のケースのように、段ボールが原因で猫にアレルギー症状が出ることはよくあることなのでしょうか
「よくあるか」に関しては段ボールアレルギーについてのデータがあるわけでは無いので、明言することはできませんが、私の経験ではそう多いわけではありません。ただ、アレルギーの原因がはっきりしないことも多いため、もしかしたらあったのかもしれません。漫画中にもあるとおり、衛生的な環境で保管されているかどうかは分からないので、段ボール箱にはさまざまな物が付着している可能性があります。
カビやダニ、花粉などが原因の猫のアレルギーは比較的多いものと認識しております。
――猫のアレルギー症状の診断、治療方法はどのようなものがありますか
アレルギーと一言でいってもさまざまな物が含まれます。大きく2つに分けると、アレルギーの原因が「食物」によるものとそうでないものがあります。今回は、食物アレルギー以外のものとして書いていきます。
実は、猫のアレルギーは診断が非常に難しいのです。さまざまな検査が提案されていますが、どれも100%診断できるものでは無いからです。多くの場合、まずは「除外診断」という方法が取られます。痒みや似た症状を起こす病気の全てが否定されたときに、アレルギー性皮膚炎を疑います。具体的には、ノミダニ・カビ・細菌などの感染症や腫瘍を否定していく作業です。
これでもまだ「疑い」なのは、精神的な問題(多くはストレス)からくる痒み、腫れ(痒ければかいて腫れてしまうので)が残っているからです。この段階でステロイドなどのアレルギー治療薬を使って痒みや腫れがなくなった場合や、アレルギー検査を行った場合にアレルギーの可能性が非常に高くなります。この様に、診断には非常に長い時間と手間がかかるものです(ここまできても、痒みや腫れの根本が食べ物なのか食べ物以外なのかは区別がついていません)。
また、運よくアレルギーと診断がついた場合、ステロイドなどの免疫調節・抑制剤を使用して治療を行なっていきます。アレルギーは完治するものではないので、どの様に付き合っていくのか(どこまでお薬を減らせるのか、食べ物で何とかなるのか、サプリメントなどを併用する必要があるのかなどなど)を検討する必要があります。
――「唇が腫れる」以外に、猫のアレルギー症状と思われるものがあれば教えてください
唇が腫れるという症状は比較的珍しい方かと思います。(といっても、月に何件かは遭遇する症状です)。一般的には過剰なグルーミング、脱毛、皮膚炎、といった痒みが原因となる症状が多いです。他にも、背中がボツボツしている、デキモノができるといった症状が見られます。
――受診の目安となる症状(腫れがひかない、呼吸が苦しそう等)があれば教えてください
本人(ネコ)が気にしているのであれば早めに受診する方がいいでしょう。かき壊して出血、感染を起こすと治療期間は長くなってしまいます。また、一部だけではなく顔全体が腫れている、大きくなってきている、呼吸がおかしい、食欲がない、吐き始めたという症状も要注意です。アレルギーといっても、数日で治るものから命に関わるものまでさまざまなのは人間と同じですね。
――段ボール箱の他にも、猫のアレルギー症状の原因となり得るものがあれば教えてください
アレルギーは世の中に存在するすべてのものが原因となる可能性があります。その中でも原因となりやすいのは、ハウスダストや花粉、カビ、ノミあたりです。芳香剤や消臭剤もアレルギーの原因となりやすいですが、こちらは呼吸器系のアレルギー(ぜんそくですね)を起こす可能性が高いです。食べものであれば、乳製品や鶏肉、牛肉、穀類が多く見られます。
(了)
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画像提供:楠 あやと(@Kusunoki_Ayato)さん
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