「怖すぎる」とネットを席巻したホラー小説『近畿地方のある場所について』はどのように生まれたか 作者インタビューで裏側を聞く(2/6 ページ)
見つけてくださってありがとうございます。
――なるほど。読んでいて「SIREN」のアーカイブ(※)の影響は大きいだろうな、と思いました。
※ホラーアクションゲーム「SIREN」シリーズには、物語の謎を解くヒントやエッセンスとなるアイテムが多数存在しており、それらは収集するべきものとして「アーカイブ」と名付けられている
背筋 はい。それからもう1つ、ジャパニーズホラーというか……日本のじめっとした怪談に、物理的に大きな怪異ってあんまり出てこないですよね。これは完全に私の趣味なのですが、それにクトゥルフ神話的な要素と「白くて大きい怪物」を登場させたらどのような反応が出るのだろうな、というのも試してみたかったんです。
――作中には心霊スポット的な場所がいくつも出てきますが、ご自身で心霊スポットや廃墟を巡る、という趣味はお持ちなのでしょうか。
背筋 あまり行ったことはないですし、自分から出向こうとは思いません。ですが興味は持っていて、心霊スポットを調べて写真を見るとか、それらにまつわる怪談話を読んだりするのは好きです。あとは「洒落怖」など、ネット掲示板の怪談話はよく読んでましたね。
――「蓋スレ」(※)とか(笑)。
背筋 はい。あれは私も大好きです(笑)。
※「蓋スレ」とは、2ちゃんねる(当時)のオカルト板で2004〜2007年ごろにかけて続いたスレッド群「本当に危ないところを見つけてしまった・・・」のこと
――特に強く影響を受けた事件や怪談はありますか。
背筋 『近畿地方〜』には事件や怪談、妖怪、伝承、未解決事件、都市伝説、ネット怪談、怪奇譚、ホラーコンテンツなどのエッセンスをいくつもオマージュ的に取り込んでいまして、これが一番、というものがないんですよ。同じ怪異でも別の話では違うものをモチーフにするなどしています。
なので「これはあれが元ネタかな?」と読んで探して考えていただけるとうれしいですし、より楽しんでいただけるのではないかな、と思います。
――『近畿地方〜』には「怪異に関わってしまった人物が、さまざまな情報をまとめて公開したもの」という設定があるかと思いますが、そういったような心霊経験はお持ちなのでしょうか。
背筋 直接的な経験はありません。ですが自身の経験や思い出が下敷きになっている話はいくつかありまして……例えば第1話の「おかしな書き込み」(※)は、私が実際に目撃したできごとが元ネタです。
※動画サイトのコメント欄に奇妙な書き込みを発見して……というエピソード
――詳しく教えてください。
背筋 昔よく見ていたゲームの攻略サイトがありまして。そこの攻略情報を交換するような掲示板にですね、住所を書いて「ここに来てください」とひたすら書き込み続けてる人がいたんですよ。ハンドル名も普通の日本人の名前で。
気になってその名前で検索してみたら、その名前のFacebookが引っかかりまして……そこにも同じ住所と「ここに来てください」というのが繰り返し書かれていたんですよね。
――不気味ですね。
背筋 次にGoogle マップで住所を調べて、ストリートビューで見てみたんですけど……さすがに神社ではなかったんですが、住宅街の中にある廃墟みたいな建物の住所だったんですよね。すごく怖いなと思って……それを広げてみたのが第1話です。
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