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「95歳の祖父がつくったトンボ・蝶の標本箱をもらってくれる方いませんか?」 孫への愛がつまった作品に称賛と感動の声続々(1/2 ページ)

「昆虫が好きな子どもにゆずれないか」と相談を受けたのがきっかけ。

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 「祖父(95)のトンボ・蝶の標本箱をもらってくれる方いませんか? これは昔、昆虫好きだった僕のために祖父が採集したものです」――。そんなTwitterの投稿が大きな反響を呼んでいます。編集部は詳しい話を聞きました。

 投稿者はwanchan(@wanchan_air)さん。wanchanさんの祖父は、孫であるwanchanさんのために、長年トンボと蝶を採集したくさんの標本箱を作ってきたそうです。祖父の自宅でコレクションとして飾っていた標本箱ですが、祖父の終活にともない「昆虫が好きな子どもにゆずれないか」と相談を受けたのが投稿のきっかけでした。ツイートは記事執筆時点で1万3000件のリツイートと1万9000件のいいねを獲得しています。

標本箱
蝶の標本箱

 投稿された標本箱の写真を見ると、均等の距離をとってトンボと蝶たちが美しく並べられています。また、1匹1匹にラベルが貼られており、例えば「アゲハチョウ科 カラスアゲハ ♂ 佐賀県北山 28.5.15」「ヤンマ科 オニヤンマ ♂ 佐賀県北山 09.9.4」と丁寧な字で昆虫の種類と性別、採集場所と日付がしっかりと記録されており、ひと目でwanchanさんの祖父が情熱と愛をこめて1匹1匹採集してきたことが伝わってきます。

トンボの標本箱
トンボと蝶の標本箱

 投稿には多くの応募と反響が集まり、「大変貴重な昆虫標本ですね」「すごくきれいですね。とても貴重なものだし思い出の詰まった標本たち。お祖父様もお別れするのは辛いことですね」「感動しました! 生き物好きの小3の娘に見せてあげたい!!」「素晴らしいですね。図書館、博物館に寄付はいかがですか?」「すごい…ちゃんと管理して受け継いでいってくれる方が引き継いでくれるといいな…」などのコメントが。たくさんの人が称賛の声を寄せています。

祖父の後ろ姿
現在95歳の祖父
トンボと蝶の標本箱

 wanchanさんの祖父は、どのように標本箱を作り上げてきたのか。今回の反響をどう感じているのか。編集部はwanchanさんに話を聞きました。

――昆虫好きだったwanchanさんのために標本箱作りを始めたそうですが、wanchanさんが何歳ごろから始めて、何年ほど続いたのでしょうか?

wanchanさん:本格的に昆虫採取・標本作りを始めたのは小学校にあがってすぐ、6歳位だったかと思います。それから小学校を卒業するまでの6年間は夏休みになると毎日2人で虫取りに。更に「トンボ教室」と呼ばれるかつて佐賀県が主催していたキャンプイベントにも毎年連れて行ってくれました。

 虫好きな私を喜ばせようと、祖父はトンボや蝶について独学し、品種ごとの特性、捕まえるための網の振り方、標本の作り方、価値を損なわないための学術的なデータラベルの書き方まで丁寧に教えてくれました。

 それから中学に上がり私は昆虫採集をしなくなりましたが、祖父は90歳くらいまでは1つの趣味として昆虫採集を続け、標本を作っては子どもたちにプレゼントしていました。祖父は子どもの笑顔が本当に大好きなんだと思います。私はそんな祖父をとても尊敬しています。おかげさまで、その辺を飛ぶトンボや蝶の名前はほとんど分かるようになってしまいました(笑)。

蝶の標本箱
トンボの標本箱

――素晴らしいコレクションですが、元々wanchanさんの祖父は昆虫採集がお好きだったのでしょうか?

wanchanさん:祖父はもともとバリバリの銀行マンで、昆虫などはさほど興味はなかったと思います。ただ仕事柄か非常に几帳面で、ハマったものはとことん追求し、勉強するようなタイプでした。老後に始めたハーモニカもプロ並みでした。標本作りは素人にしてはかなり丁寧な方だと思います。

――お2人の特にお気に入り、思い入れのある標本箱があれば教えてください。

wanchanさん:たった一度だけ出会った「ネアカヨシヤンマ」というトンボです。汗だくで網をふり、祖父と2人で何とか捕まえたのを覚えています。全部で500匹以上ありますが、ほぼ全て佐賀県内で採集した「トンボ」と「チョウ」になります。

 誰もが知る「オニヤンマ」や「アゲハチョウ」から、市街地ではまず見かけない「ヤブヤンマ」「カトリヤンマ」、西日本を代表数する美しい「ナガサキアゲハ」、海を越えて旅をする渡り蝶「アサギマダラ」、本来は九州の南部から南西諸島にかけてのみ生息するはずの佐賀県産「タテハモドキ」(以前は九州に定着していませんでしたが、温暖化の影響か徐々に生息域を広げている)など、どの標本箱にも祖父から教えてもらった知識と思い出が詰まっていて、眺めていると大自然の中を走り回っていたあのころを思い出します。

トンボの標本箱

――今回大きな反響とあたたかい声が寄せられています。wanchanさまと御祖父様の感想があれば教えてください。

wanchanさん:本当に予想外の大反響で私自身、とても驚きました。また、欲しい方がたくさんいらっしゃることを祖父に伝えると、「そげんね」と淡白ながらも喜んでくれました。今回貰い手になっていただいた方は、2歳のお子様を持つママさんです。私と祖父の思い出が詰まった標本箱ですが、仕舞い込む事なくお子様の見えるところに飾ってあげてほしいなと思います。もし将来お子様がイタズラして壊してしまっても、優しく許してあげてほしいです。私も昔、祖父の標本をたくさんダメにしてきましたから(笑)。

 他の標本については、Twitterで多くの方からご助言いただいた通り、教育施設でより多くの方に見ていただける方が良いと思い、募集を締め切らせていただきました。祖父が住む佐賀の博物館や科学館・小学校などを中心に、寄贈先を今一度探したいなと個人的には思っています。ただ祖父の意向を一番に叶えてあげたいので、これからまたしっかりと話をしたいと思います。

 今でも私は生き物や植物といった自然が大好きで、キャンプも続けています。そしてデザイナーであるかたわら「エアプランツ」と呼ばれる植物を広める活動をしています。今思えば、自然と触れ合ったあの濃密な時間は、私の中の原体験として「自然に心を通わせる生き方」を選ばせてくれたのだととても感謝しています。

 祖父は今年95歳になりましたが、今でも勉強熱心で、何でも知っていて、とっても優しい「スーパーおじいちゃん」です!

(了)

 なお、wanchanさんによると祖父は「本人は終活と言っていますが、めちゃくちゃ元気です」とのことです。デザイナー、エアプランツ専門の写真家として活動し、エアプランツ専門情報サイト「エアプランツ、はじめてみた。」を運営しているwanchanさん。その出発点は、祖父の愛情に包まれ、一緒に自然の中を駆け回った日々だったのかもしれません。

 wanchanさんはTwitter(@wanchan_air)、Instagram(@wanchan_0)でもエアプランツの魅力を発信しています。

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