人から怖い話を聞き出すときには「恐怖体験や心霊体験はありませんか」と尋ねるよりも、「不思議に思った経験や思い出はありませんか」と切り口を変えたほうが、脚色のない奇妙な話を語ってくれるもの。今回ご紹介する作品は、そのように人から聞き集めた「不思議な話」を漫画にしたものです。
作者は漫画家のみつつぐ(@mitutugu)さん。「人から聞き集めた不思議な話」を漫画にした『#人から聞いた不思議な話を漫画にしてみた』と、怪談・エッセイ作家の加門七海さんの日常を、みつつぐさんが漫画化している『七海さんのオバケ生活』が販売中です。
夜釣りが趣味だという男性のお話。当時に通っていたお気に入りの夜釣りスポットには、自分以外にもうひとり“常連”がいたそうです。その姿はぼんやりと人の形をした黒い影で、いつも同じ場所にいて、ただ立っているだけ……男性によれば「おそらく男の幽霊」だと言います。
最初に気がついたときはさすがに驚いたそうですが、このスポットに何年も通ううちにすっかり慣れてしまい、今ではそこにいて当たり前の存在になっていたそうです。
ですがその日は、だんだんと薄くなっている影を見てふと「もうすぐ成仏するのかな」と思ったそうです。そしてなんとなしに缶コーヒーを2つ買い、1つを影のいる方に置いた後「よかったらこれどうぞ」と声を掛けたのでした。
しばらく後、男性は「横に立つ何者か」の気配を感じます。別の釣り人がやって来たのかと思ったのですが……べたべたに濡れた足を見て、直感的に「あの影だ」と察しました。
その後の男性は目を硬く閉じて、心の中でひたすら謝り続けて……しばらくしてその気配が消えた後、ひっそりと周りを見回してみたものの、そこには誰もいなかったそうです。
気配が消えたことにほっとした男性は「この世ならざる存在と、軽い気持ちで関わってはいけないな」と反省したと言います。さて、果たして黒い影はあの場所にまだいるのかいないのか、それはともかくとして……男性は「あの場所には二度と行かない」と決めているそうです。
作品提供:みつつぐ(@mitutugu)さん
たけしな竜美(@t23_tksn)
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