日本赤十字社(日赤)が関東大震災から100年の節目に展開する、AIを活用することで当時の「人々と“新”証言」を現代によみがえらせるというプロジェクトに批判が寄せられ、日赤は同プロジェクトの中止を決定しました(関連記事1/2)。日赤は批判をどう受け止めたのか。ねとらぼ編集部では、日赤に取材しました。
中止が決定したのは、「100年前の100人の新証言 〜データとAIで紐解く、あの日に起きたこと。」というプロジェクト。当時の日赤の救護活動の様子を描いた1枚の絵画を用い、絵の中にいる避難者100人が当時の各種文献を読み込んだAIを活用し、発災当日に経験したことを「“新”証言」として語る、というものでした。
SNS上では同プロジェクトに対して、「生成AIで作ったものは証言じゃなくてフィクションでしょ」「歴史資料に対して相当に不味いことやってないか」「どうして数多くの証言が存在するのにこんなことをしようと思ったのか」など、問題視する声が広がっていました。
日赤「史実を変更する意図はなかった」
日本赤十字社東京都支部 総務部 企画課は批判の声をどう受け止めたのか。メールでの取材を申し込んだところ、以下の回答が得られました。
――なぜ同プロジェクトを企画したのでしょうか。背景を教えてください。
日本赤十字社東京都支部 総務部 企画課(以下、日赤):同プロジェクトは、当支部のエントランスの壁に飾られている油絵「関東大震災当時の宮城前本社東京支部救護所の模様(二世五姓田芳柳作)」という、約100年前に描かれた関東大震災に関する1枚の絵画を起点に始まりました。
100年という歳月によって震災当時の記憶も薄れ、描かれた当時の様子も絵画だけでは伝わり難くなってきております。AIという新しい技術のサポートを得ることで、「描かれている当時の状況や、そこから見出せる教訓等を想像しやすくなるのではないか」という思いから企画いたしました。
関東大震災に関心をもっていただき、少しでも防災に備える行動をとっていただくことが、同プロジェクトの一番の目的でした。
――SNS上では同プロジェクトに対して批判の声が上がっています。特に多く見られたのは、AIで生成したメッセージは「証言」ではなく「創作(フィクション)」ではないか、という意見でした。
日赤:メールやSNSなどで批判的なご意見を頂戴いたしました。実在していた人物が語るかのような誤解を招いてしまいましたら、深くお詫び申し上げます。申し訳ございません。
史実を変更したり、変えたりする意図や作為はありませんでした。使用した文献中の体験は当時実在した人物によるものですが、AIを介した解釈が入った絵画中の人物が語ることから、「新証言」という表現を使用してしまいました。
そのため、実在していた人物が語るかのような印象を与えてしまい、その結果、本来プロジェクトを通して伝えたかったことが十分に伝えられない状況であると判断し、実施を見送ることといたしました。
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