パワーリフティング選手「私は皮と骨になった」 “風邪かと思った”珍しい病気でICUへ→20キロ失い歩けなくなってから復帰するまで(1/2 ページ)
約1年間の努力が実を結び。
復帰に向け1年以上努力を重ねたカナダのパワーリフティング選手ジャレッド・メイナードがInstagramで5月25日に大会へ出場したことを報告。ジャレッドは2023年1月に風邪のような症状からHLH(血球貪食症候群)であることが判明し、体重が約20キロ減少、多くの筋肉を失ったことを公表していました。
ただの風邪だと思っていたら……
ことの発端は2023年1月、季節の変わり目に妻と3人の娘の家族全員が風邪を引いており、自分にも同じような症状があったため当初ジャレッドは軽い風邪を引いているのだと思っていたといいます。しかし1週間後、家族の症状が改善したのに自分だけは悪化し続け、彼が「悪夢の始まり」と表現する2週間を過ごすことに。毎晩1時間程度しか眠れず、首のリンパ節が「山脈のように」腫れ上がり、熱と悪寒が乱高下し、動悸がして血圧が急に上がるといった症状がありました。
たまらず近くの病院へ行くと「伝染性単核球症」と診断され睡眠薬を処方され帰宅。しかし数日後、妻がジャレッドの顔色が黄色くなっていることを指摘し、別の病院で検査を受けたところ、肝臓と腎臓が機能していないことが判明してすぐに入院。6日後には生命維持装置につながれていたとの壮絶な経験を語りました。
HLHとは 壮絶な闘病からのリハビリ生活
ジャレッドが罹患したのは免疫システムが過剰に反応し、正常に機能しなくなるHLHという疾患。遺伝、感染症や悪性腫瘍といった基礎疾患によるものなど、原因はさまざまです。生命維持装置につながれたジャレッドは5週間後にICUで目を覚まし、そのときには「身体中にチューブがつながれていた」状態だったと振り返りました。
それから人口呼吸器につながれ、透析を受けながらジャレッドは3カ月半入院。ICUにいる間に体重が約20キロ減り、食べること、話すこと、立つこと、歩くことを1から学び直さなければならない状態だったと言います。パワーリフティングの選手であった彼は「携帯電話を持つのも苦労した」と述べ、「完全に身体が入れ替わってしまったよう」だったと表現しています。
しかし医師によれば「もともと体力があったこと」が良い結果を招き、ジャレッドはめざましい回復を見せました。2023年3月に入院してから初めて自分の足で歩いた瞬間の動画をInstagramへ投稿し、1メートル歩いただけで「スーパーマンになった気分」だったとそのときの気持ちを表現しました。
いよいよ復帰戦へ
ジャレッドは2023年5月に退院し、6月にパワーリフティングの練習を再開。2023年はじめに入院していたときの体重を大幅に失った自身の写真を投稿すると、「HLHという病気は私の身体をぼろぼろにした。生きていくために必要な治療がさらに身体を傷つけた。治療が終わるころ、鏡に写る自分が誰なのかほとんどわからなくなっていた。髪の毛はなくなった。筋肉は蝕まれた。私は文字通り、皮と骨になった」と闘病生活の中で、これまでの自身が失われていくような感覚をつづりました。
そしてハードな体験をシェアしつつ、似たような経験を持つ人々へ「知ってほしいことがある」とジャレッド。「あなたなら変えられる。簡単だとも、すぐにだとも、約束はできない。以前のままを取り戻せるとも約束できない。でも鏡に写った自分を再び愛することができるようになると約束できる」と力強い言葉を送っています。
そして復帰に向けて約1年間、特訓に明け暮れる姿を投稿し続けながら、徐々に元の身体を取り戻していく様子を人々にシェア。5月25日、いよいよカナダのミシサガで開催されたWRPF(ワールド・ロウ・パワーリフティング連盟)公認の大会へ出場し、復帰を果たしたジャレッドは、見事にベストスコアを更新。掲げていた「楽しむこと」以上の目標を達成しました。
まだ続く病気との闘い
復帰を果たした喜びを分かち合いつつも、他に「少しずつ目が見えなくなっていく珍しい疾患がある」とも明かしたジャレッドは、そのため「もっと力を取り戻す必要がある」とさらに邁進(まいしん)する旨を伝えています。そしてこのように自らの旅路を分かち合うのは、「何十人もの人から私の人生が力になっていると聞いたから」だと明かしており、復帰戦で結果を残せたことについても「多くのすばらしい人々の助けがなければ、私はここにいなかった」と助けてくれた全ての人への感謝を表しています。
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