母が子供を守る仕組みはどのようにして生まれたのか？　古代生物のDNAに起きた奇跡を探る　【特選！Nスぺ】生命大躍進（2）

【特選！Nスぺ】毎回骨太なテーマで楽しませてくれるNHKのドキュメンタリー番組「NHKスペシャル」。中でも特にネット上で反応が多かった回を取り上げ、当時の視聴者の感想と一緒に振り返っていく企画です。

　シリーズ「生命大躍進」では、古代の生物から人間となるまでに起きた進化を、最新のDNA研究をもとに検証しています。第2集では、人間が持っている献身的な子育てや母性愛がどこから生まれたのか、その起源を私たちの祖先にさかのぼって紐解く構成でした。

　 AI分析による視聴者の評価は「88.9％」がポジティブなものだった生命大躍進第2集。当時の視聴者の声とともに放送内容を振り返っていきましょう。

「汗」が「母乳」となった？

　ハリモグラは哺乳類でありながら卵を産み、皮ふから母乳を染み出させて、う化した子供に母乳を与えるといいます。この母乳には殺菌作用があるリゾチームと、母乳の栄養分となるαラクトアルブミンが含まれ、双方の構造はとても似ています。DNA研究によると、母乳はもとは卵を守るための殺菌作用を持った汗のようなものだったと考えられ、そこから何らかの変化が起きαラクトアルブミンを生み出すようになったとか。

　まず、ハリモグラが卵生にもかかわらず母乳を出す点について関心を示した人が多数。またハリモグラの授乳シーンを眼福とする生物ファンもいたようです。そして「子育ての起源は鳥類と哺乳類に分かれる以前にあったのか」「恐竜の頃には子育ては一般的だったのか」など、古代生物の子育てに思いをはせる人も見られました。一方、幼生を保護するメカニズムは母性や愛情とは関係ないと言及する声も。

哺乳類しか持たない胎盤ができた驚きの理由とは

　哺乳類は、胎盤を持ちお腹の中に子供を身ごもります。1億6000万年前のジュラ紀に生息した大型の恐竜との生存競争において、お腹に子供を宿すことで卵のように置き去りにすることなく、生存確率が格段に上がったと紹介されました。胎生の秘密は胎盤を作るPEG10遺伝子にあり、ジュラ紀の生物がレトロウイルスに感染したことでウイルスの遺伝子が体内細胞に入り、PEG10遺伝子に書き換えられたといいます。

　視聴者の人の中には、このパートに入る前から「胎盤の発生が謎なんだよな」と疑問を呈する人がおり、その疑問に答えた形となります。胎盤の進化は生き残るためだったのかと納得する人がいる一方「母親ごと食べられるじゃん」という声や、卵生なら卵を捨てて逃げてまた産めばいいから胎生はベストな形ではないと分析する声が。その他「レトロウイルスが我々の進化に関わっていようとは」「また遺伝子の水平伝播か」と、遺伝子の変化についてさまざまな声が飛び交いました。

レトロウイルスがもたらした進化の不思議

　胎盤を作る遺伝子変化をもたらしたレトロウイルスは、生物の体内で働く免疫をブロックするという働きもPEG10遺伝子に組み込みました。その結果、本来自分とは違う生物である赤ちゃんをお腹に宿して免疫が異物と認識しても、免疫からの攻撃をブロックできるといいます。そして長い時間をかけ、哺乳類は安全な母親の胎内で十分に成長することができるようになりました。

　番組中で、母体の免疫からの攻撃をブロックするエフェクトには、アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」に登場したATフィールドと重ねる人がちらほら。また「母親の免疫力が落ちるのは子供を守るためでもあったのか」と、免疫の仕組みに納得した人もいたようです。一方、赤ちゃんが胎内で長期間成長できるようになった点について「体重くなって困っただろうな」と古代生物をいたわる声も。その他「か弱い生物ならたくさん子供産める作りになるもんじゃ」など、進化が完全なものではないことに言及した意見もありました。

まとめ

　母性愛や子育てとはどこから来たのかという着想は、普段ではなかなか得にくいものです。そこにDNA研究から切り込む構成について純粋に興味深く見た人もいれば、そもそも母性愛とは何なのかを問う声や、進化は合理性の産物であり愛情とは別なのでは、という人もいるなど、見方はさまざま。図らずも、愛を定義することについて考える回にもなりました。

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