なぜ古代王朝で「富の再分配システム」が成功していたのか？　黄金のバガン遺跡に見る「来世への期待」とは　【特選！Nスペ】アジア巨大遺跡（2）

【特選！Nスぺ】毎回骨太なテーマで楽しませてくれるNHKのドキュメンタリー番組「NHKスペシャル」。中でも特にネット上で反応が多かった回を取り上げ、当時の視聴者の感想と一緒に振り返っていく企画です。

　NHKスペシャル「アジア巨大遺跡」シリーズは、世界各国に遺された古代遺跡を分析し、かつて栄えた文明を解き明かして当時の叡智を探るというコンセプトです。第2集では、ミャンマーに位置し黄金の仏塔をたたえるバガン遺跡について紹介されました。

　第1集のアンコールワット、 インドネシアのボロブドゥール寺院と並び、世界三大寺院に数えられるミャンマーのバガン遺跡を特集した今回。AI分析による視聴者の評価では、「99％」がポジティブなものでした。それでは、当時の視聴者の反応を踏まえ、放送内容を見ていきましょう。

美しい寺院とブッダにまつわる鮮やかな遺物の数々

　金箔に彩られたシュエズィーゴンパゴダをはじめ、美しい寺院や仏塔が立ち並ぶバガン遺跡。その中でも、レンガとしっくい造りで遺跡中最も美しいとされるのがアーナンダ寺院です。ここには東西南北に金色に輝く大きなブッダの像があり、すべての方角から対面できます。また、ローカテイッパン寺院にはブッダが母の脇から産まれたことを示す仏誕図など、ブッダにまつわる鮮やかな壁画がのこされているそうです。

　アーナンダ寺院の金色の仏像には、テンションが上がった人が多数。「最高やな！」「このまま動き出しそうだ」と声が上がったり「日本の仏像も当時はキンキラキンだったんだろうな」と思いをはせる声が見られたり。また、ローカテイッパン寺院の仏誕図は神秘的な壁画なのですが、「ブッダは脇から産まれたのかよ」「なんでだよ」とツッコまずにいられない人がたくさんいました。

数多くのパゴダが造られた秘密は富を回すシステム

　バガン遺跡にある3000以上もの建造物のうち、最も富を有するバガン王が建てたものは30にも満たないといいます。実は、パゴダのほとんどは民衆が建てたものだとか。民衆が農耕などで得た富は税として王に献上され、王は民衆に対して寺院やパゴダ建築を依頼し対価を支払っていました。この仕組みにより民衆も富をたくわえることができ、建造物を人々のために寄進したのです。財産を投げうって寄進する理由は、仏教の教えでそれが大きな功徳であるとされているためです。

　民衆が自ら建造物を作ることについては「強制労働じゃないのか」「まさに公共事業」として、エジプトのピラミッドなどに重ねる人が。また、この富が回っていくシステムについて「富の再分配システムなんだ！」と感銘を受ける声も見られます。一方、ミャンマーで信仰されるのが上座部仏教 （小乗仏教）である点に着目し「自分が成仏するためにお金を出すだろうから」と納得した人もいたようです。

功徳を積み祈りが日常になることで貧富の差が生まれない社会

　仏教の教えのもと、功徳を積むことで富が回り続けたバガン王朝の社会。バガン遺跡の碑文には「私の功徳が5000年続きますように」という一文がのこされていました。そして、現代でもその精神は受け継がれています。ミャンマーでは、仏教徒の男子は一生に一度必ず出家するならわしがあります。ある家では、自分の息子のみならず親戚や貧しい家の男子を出家させる得度式を行うために、日本円で100万円を供したそうです。

　「功徳が5000年続きますように」という、途方もない未来を描くメッセージには「すごいな」「功徳は来世への保障だから」などの声が集まります。一方「来世のことまで考えてる余裕ないよ」と、現実的な声も聞かれました。その他、現代に伝わる出家の得度式ではブッダが王子だったときを重ねて男子に化粧をさせるといい「忌野清志郎みたいな化粧させておる」などと反応する人たちがいました。

まとめ

　かつてのバガン王朝から脈々と受け継がれるのは、富をうまく循環させることで貧富の差を生まず、平和に暮らせる仕組みです。そしてそれは、仏教の教えを熱心に信仰する心からもたらされるものでした。ミャンマーの人々が何気なく行っている祈りの精神には、私たちも学ぶところがあるでしょう。

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