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業火の向日葵

 ……これはですねー、オープニングまでは最高に面白いです。

――「まで」。

 はい。見どころは、コナン史上最も理解ができず、視聴者おいてけぼりの犯人の動機です。歴代犯人の中で一番頭が悪いのではないか。僕は犯人に「CiNii(論文検索データベース)とか使えよ……」と言いたいですし、「大学での教養って大事なんだなあ(棒読み)」と思います。

 本作はタイトル通り向日葵がモチーフになっていて、そろそろ爆破する舞台がなくなったので、オリジナルの変な美術館が登場します。この美術館、見るからに「爆破するために作った美術館だ!」と思わせられる構造をしていて、もちろん爆発します。オリジナルの舞台を採用した弊害は意外なところに出ていて、劇場版コナンは「エンドロールに舞台となっている場所の実際の風景を流す」という通例があるのですが、ないものは映せないのでひたすら向日葵畑をあらゆるアングルで映す。でも尺が足りなくなったので、今度はインスタっぽいフィルターをかけてさらに向日葵畑を流す。この向日葵ラッシュは一見の価値ありです。

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純黒の悪夢(ナイトメア)

 黒の組織の一員・キュラソーをメインに、黒の組織とFBIの思惑が入り乱れるサスペンスアクション。20作目、ついにコナンがミステリをやめました。「アクションだけのコナンってみんな見たかったよね!」と言わんばかりの、出だしからアクション、カーチェイス、クラッシュ、記憶喪失! クライマックスもアクションシーンが出し惜しみなく連発されます。

 本作は、後半ひたすら観覧車を舞台に話が進む異常な構成で、多分これを超えてくる「観覧車もの」はないんじゃないですかね。観覧車ものというと「ああ、観覧車の中に閉じ込められるんだな」と思うところですが、まさか観覧車のフレームの上を飛んだり跳ねたりして戦うとは……。なんで戦ってるんだよ……。「ダブルホイールの観覧車」という設定が絶妙で、「建物1つをいかに破壊するか」に全力を注いできたコナンチームの集大成だと思います。

――本作は一部の層に熱烈に支持されており、大人女子層でのコナン再燃を引き起こした作品ですが、そういった点から見ると本作はどうでしょうか?

 「なんかすごい人気だな」と思い、2人に注目して見返してみましたが、どうしても「今戦い合ってる状況!? 戦う場所ももっと平地でやって!」と言いたくなっちゃいましたね。でも、追いかけるべき敵じゃなくて、今目の前にいる相手を見てしまう……というのが人気なんでしょうね。黒の組織も嫉妬するね……。

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から紅の恋歌(ラブレター)

名探偵コナン から紅の恋歌 (C)2017 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

 最新作です。傑作でしょう! 百人一首をめぐる殺人事件を解決する平次&コナンの「男の戦い」と、平次をめぐる和葉VSゲストキャラ大岡紅葉の「女の戦い」が交差する構成で、複雑なことをやっている割に、あまり大きな破綻がない。何度も事件の構図をひっくり返そうという意欲を感じます。

 そして本作は、完全に平次が主人公ですね。「迷宮」も平次が主人公ではあるのですが、一応平次の恋愛と新一の恋愛が重なる構図になっていた。でも今回はほぼ平次単独! メタなことを言えば、「これであと数年、平次メインの劇場作品はないだろうな……」と思ってしまいましたが。

 さて、コナンはミステリ的なところに力を入れるとアクションがおろそかになりがちなんですが、両者が高いレベルで実現できていて、バランスが取れています。ミステリ要素は、ここ数年ミステリ業界でよく見るパターンのホワイダニットになっていて、「ついにコナンも今時のミステリに接続してしまったか……!」と複雑な気持ちに。一方アクションは基本的に「高い場所からどうやって飛距離を稼いで脱出するか?」ということを繰り返しやっているのですが、平次は人間らしい力技で解決する一方、コナンは「そんなのあり? 目、回らない?」という恐ろしい方法で解決していて、2人の対比ができていてよかったです。

 シリーズファンとしては、過去作品を思い起こさせる要素が多いのが特徴的です。平次たちがメインで京都を舞台にしているのは「迷宮」だし、高い場所からの脱出は「天国」。事件現場に残された意味ありげなアイテムは「14番目」ですね。過去作品の要素をほのめかしつつ、まったく新しい手法や意味を出してくる、集大成的な作品ではないでしょうか。

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結局、何が一番面白いんですか?

――全21作について語っていただきました。ここでやっぱり聞いておきたい……結局、何が一番面白いんですか?

 ごく個人的なランキングを発表させてもらいます。1位「天空の難破船」、2位「天国へのカウントダウン」、そして3位が「から紅の恋歌」

1位「天空の難破船」

――その心は?

 「天空」は、やっぱりミステリやエンタメ作品としての面白さと、「コナン作品のキャラクターでしかできない話である」という点で、めちゃくちゃ評価が高いです。点数をつけるとしたら満点。やや変化球な作品ではあるんですが……!

 「天国」「から紅」は、コナンとしてのエピソードやキャラクターの良さが、ミステリ要素や爆破エンターテインメントとマッチしていて完成度が高いのが推せます。もし「劇場版コナンをあんまり見たことないけど、1作見てみたいな」という人がいたら、爆破の醍醐味が味わえる「天国」をオススメします。

――ありがとうございます。最後に、この記事を読んだコナンファンにメッセージをお願いします。

 コナン映画は初見微妙だなと思ったものでも、もう1回見ると意外な目線から面白さが発見されたりするので、つまらない記憶が残っている作品でもぜひ見返してみることをオススメします!

※本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

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