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娘氏、誘われるままにYouTuberになってしまう

 筆者にはDさんというYouTuberの友人がいるのだが、「ロードバイクのYouTubeチャンネル、始めたら?」と散々誘われていた。映像の世界に興味のなかった私は「いや~、べつに興味ないっす~」とはぐらかしていた。

 そんな会話を何度か交わしていたある日、Dさんは「娘さんがロードバイク始めたんでしょ? だったら、彼女にやらせてみたら?」と提案してきた。たぶんNOと言うと思うけど……と思いつつ水を向けると、意外にも興味津々で「やってみたい!!」と乗り気。

 Dさんにアドバイスをもらって完全にやる気になった娘は、すぐチャンネルを開設し、スマホで撮影&編集した動画を1週間後に公開した。

「今見ると、顔から火が出るほど恥ずかしい」らしい(本人談)

 クオリティはともかく、電光石火のごとき行動力には驚かされた。撮影も編集もしたことがない素人がなぜ? と思ったのだが、思い当たるフシはあった。

 娘は幼少期から工作と絵画が大好きで、赤ん坊のころは数時間もくもくと画用紙に落書きをし続けていたし、小学生時代はホームセンターで木材を仕入れてアニメのキャラや武器を自作し、中学時代は美術部だった。

 デジタルかアナログかの違いはあれど、ゼロから何かを作る作業がハマったのだと思う。そして、これを境に、YouTube関連の書籍を読み漁っては撮影と編集に没頭し、毎週欠かさず動画を投稿する日々が始まる。

 まあ、ここまでは「一人の若者がYouTubeにハマった」だけで珍しくはない。しかし、YouTube開始から半年後、さらに親子の想像を超えた出来事が降りかかる。

~娘のコメント~
ゼロから何かを創り出すことが小さい頃から大好きだったので、動画制作は私の性格にピッタリはまりました。当時は深く考えずにとりあえず始めてみた程度でしたが、動画の世界を知るきっかけを作ってくれたDさんには感謝してもしきれません。

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娘氏、勤務先のインターン生となる

 2020年1月、筆者の勤務先でYouTubeチャンネルを始めることになった。自分ひとりでチームを発足させたものの、自分を含めて社内には動画編集できる人材がいない。

 編集業務だけアウトソースするか~と思案中に、ふと「娘にやらせればいいのでは?」と思いついた。半年の運営経験で撮影・編集・サムネ作成・投稿・分析のすべてができるようになっていたので、適任だと思ったわけである。

 娘と会社を引き合わせると、とんとん拍子に採用が決まり、自社YouTubeの『ミエルカチャンネル』のメンバーになった。……と、その時点でハタと気づく。

 「待てよ……? 娘と仕事するの……? 上司と部下として?」

 メンバーになった以上、父子ではなく上司部下の関係である。ある意味、事故のような形で父娘チームが編成されてしまい、内心「えらいことをしてしまったかもしれん……」と焦っていた。完全にこのことが抜け落ちていたが、時既に遅しである。

 我が子が父親の会社にインターンとして入社するだけでも珍しいが、さらに「上司部下」になるのは極めてレアだろう。

撮影構図のセッティングを考える図

 というわけで、二人三脚での企業YouTube運営が始まった。娘にとっては、自転車のほうのチャンネルもあるので、2チャンネル同時運用となった。

 企画→構成→撮影→編集→公開→分析……のサイクルが家と職場の両方で続くのは、傍から見ていてもかなり大変そうではあったが、めちゃくちゃ楽しんでいる様子でもあった。

~娘のコメント~
父にインターンの話を持ちかけられた時、速攻で「やりたい!」と思いました。SEOは全く無知だったけれど、純粋に面白そうだからと直感しました。上司部下の関係になることは、正直私は気にしていませんでした。それよりも、実際に働き始める前に「編集スキルをもっと上げなきゃ」と焦って、YouTubeの書籍を再読したことを覚えています。

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娘(※部下)にSlackで詰められる父

 こんな風にして始まった、娘と一緒に仕事する日々。実は現時点で、既に1年半ほども続いている。全体の感想は後ほど書くとして、まずは最近の様子を見てほしい。

 親子が上司と部下になると、どうなるか。予想できたことではあったが、まず「会話が仕事一色」となる。Slack、LINE、Facebookメッセンジャーのやりとりが膨大に増えるのだが、内容は仕事が99%だ。※お互いリモートワークなので会話はオンラインがメイン

 交わす言葉は、親子とは思えない業務的な内容ばかり。

 こちらの作業が遅いと、叱責されることも。

 これがオンラインだけでなく、リアルでも延々と繰り広げられる。

 一家だんらんの場でも、旅行の移動中も、家族で外食中も、延々と仕事の話ばかり。どちらからともなく企画案を出し合ったり、アナリティクスのデータをスマホで見て分析会議が始まってしまう。

 たまに妻から「家族なんだから、他愛のない会話もしなさい!」とキレられることも(苦笑)。

 笑い話だが、2020年の大みそかを実家で過ごしたとき、年越しそばも食べず、紅白歌合戦も見ず、TVでいろんなYouTubeチャンネルを再生しまくり、使えそうな編集技術や企画の切り口を探して議論することに没頭していたら日付を越えていて、

 「あれ? もう2021年? そっか……あけましておめでとう……」
 「お、おぅ……」

 となったこともあった。

~娘のコメント~
一見、ずっと仕事で疲れそう……と思うかもですが、紅白歌合戦や映画を観るよりも、色んなYouTuberを見て分析したり、ネタ出しする方が楽しい……! とこのとき感じました。
 あと、もはや良くも悪くも「父親」として見れなくなりました。今の関係を一言で表すと、「価値観がめっちゃ合う仲の良い仕事仲間」って感じです(笑)。プライベートでの会話が減ったことは、寂しいとも残念だとも思いません(そもそも親子の会話が少なかったので汗)

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