なぜレジ袋を全国一律で有料化? レジ袋規制の新方針に“納得できない人”が相次ぐ理由

原田環境大臣が2月末の会見で発表した方針。

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原田環境大臣が2月末の会見で発表した方針。

 原田義昭環境大臣が2月26日の会見で、全国一律でレジ袋有料化を義務付ける方針を明らかに―― このような報道に、ネット上では「なぜレジ袋ばかりが、やり玉に上がるのか」「意味があるのか」などの声があがっています。

 「エコバッグ/マイバッグを使おう」というフレーズに聞き覚えがあるように、レジ袋削減の取り組みは以前から進められているのですが、今回の動きに対し、なぜ批判的な人が現れているのでしょうか。全国一律レジ袋有料化が“納得しにくいポイント”をまとめてみました。

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「レジ袋を使ってはいけない理由」のややこしさ

 レジ袋は広島県のメーカー・中川製袋化工が昭和47(1972)年に開発したといわれており、昭和50年以降、スーパーなどの商品持ち帰り向けに定着。しかし、環境省によれば、国内では平成19(2007)年に改正容器包装リサイクル法が施行され、レジ袋をはじめとした容器包装を多用する小売業者に対し、「国が定める判断の基準に基づき」、排出抑制を求めることになったとのこと。

 また、海外に目を向けると、日本よりも早くからレジ袋規制に力を入れていた国・地域が少なくなく、例えば、有料化については、ヨーロッパでは2000年代前半までに大部分の国で、アジアでも2002年に韓国、台湾で実施されています。

 なぜ、このようなレジ袋削減の動きが起こっているのでしょうか。ネット上を調べると「プラスチック製品で自然に還らない」「海洋生物などが誤って食べてしまう」「ごみ削減につながる」「焼却処分は地球温暖化につながる」「石油資源の消費抑制」など、地球環境と結び付けた解説が数多く見られます。

 ただ、“環境問題の常”とでも言うべきか、「家庭ごみを占めるレジ袋の割合は小さい。もっと取り組むべき問題があるのではないか」「代わりに使うエコバッグの方が環境負荷が高い可能性は?」「生分解性プラスチックを使えばよいのでは?」といった反対意見も存在。その真偽はさておいて、「情報が錯綜しており、ややこしい問題になっている」といっても間違いではなさそうです。

 ちなみに、環境問題以外の理由が掲げられていることもあり、海外では「レジ袋が散乱すると景観が悪くなり、観光業に悪影響」「投げ捨てられたビニール袋で排水管が詰まり、雨季に洪水が発生するリスクがある」「ヒンズー教で神聖視されている牛が食べ、死亡するトラブルが多発」といったものも。

 あえて一言でまとめるなら「レジ袋削減の動きはさまざまな理由から世界各地で進められており、日本も例外ではない」といったところでしょうか。

「国家レベルのプラスチック製バッグ禁止、発泡スチレン規制」についてまとめた図(国連環境計画(UNEP)が2018年に発表した、使い捨てプラスチック問題の報告書「Single-use Plastics: A roadmap for Sustainability」より)
州や市など、準国家レベルでの対応に関してまとめられた図(「Single-use Plastics: A roadmap for Sustainability」より)
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有料化で“メリットがなくなる協力者”がいる

 環境省が2018年にまとめた「プラスチック資源循環戦略(案)」には「(レジ袋の)有料化義務化(無料配布禁止等)をはじめ、無償頒布を止め『価値づけ』をすること等を通じて、消費者のライフスタイル変革を促します」という記載があります。

 すでに一部自治体では「レジ袋を使わない消費者に対し、特典などを与える」というようなアプローチが採用されているのですが、なぜこのような「レジ袋を断るとプラス」ではなく、「使うとマイナス」になる有料化を進めようとしているのでしょうか。

一例を挙げると、福岡市では有料化のほか、「マイバッグの提供」「レジ袋を使用しない来店者への特典の提供」などを認めています(同市Webサイトより)

 同省によれば、「世界でも既に60カ国以上がレジ袋の有料化等の制度を導入している状況」で、国内では「有料化によってマイバッグの携行が浸透することなどにより、レジ袋辞退率が9割を超える実績」もあるとのこと。つまり、「定番の手法で、効果も期待しやすい」というわけですが……現時点で特典などを受け取っている人にとっては、ちょっと喜びにくい話かもしれません。

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すでに全国的に行われているのに、「全国一律」体制に移行する理由

 環境省の「レジ袋に係る調査」(平成28年度)によれば、レジ袋削減に取り組んでいる都道府県は47カ所。つまり、現時点で全国的に行われていることになり、原田環境大臣が述べた「全国一律」方針の重点は「一律」にある可能性が考えられます。

 経団連は、先述の「プラスチック資源循環戦略(案)」へのパブリックコメントを公開しているのですが、そこでは「事業者間に不公平感が起こったり消費者が混乱したりしないように、法的な措置をとって全国一律の制度にする必要がある」という見解が示されています。

経団連のパブリックコメント。「政府が前面に立つのは構わないが、やるならしっかり」という立場のようです

 特に“事業者間での不公平”については都道府県も問題視しているようで、環境省に以下のような報告を行っています。

  • 栃木県:同業種(食品スーパー)の間でも足並みがそろわず、売り上げの減少を懸念して二の足を踏む事業者が多い
  • 愛知県:ある店舗がレジ袋有料化を中止し無料配布を再開すると、近隣店舗でもそれに追随する傾向がある
  • 京都府:大手スーパーが有料化に難色を示しているため、その他スーパーでの有料化が厳しい

※いずれもレジ袋に係る調査(平成28年度)にて「レジ袋削減に係る取組を進めるにあたっての課題」として回答

 また、「地域全体の事業者が足並みをそろえるには、政府による規制強化が必要」という意見もあるとのこと。一般人には分かりにくいところですが、自治体の間では“手詰まり感”が広まっているのかもしれません。

 なお、報道によれば、原田環境大臣はレジ袋有料化について「法律的な措置も必要」と述べたとのことですが、実は、今から10年以上前、小池百合子環境大臣(当時)も同じ問題について発言したことが。その際は「(レジ袋有料化の)法制化というのは、それこそ憲法問題にまでいってしまう話しなんで、どうすればいいのか」としており、一筋縄にはいかない問題であることが伺えます。

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一部自治体も訴える「実施目的、根拠の分からなさ」

 レジ袋に対するよくある批判の1つに「購入した商品を持ち運ぶわずかな時間しか使わないから無駄」というものがあるのですが、実際にはごみ袋代わりに使える地域も存在。また、ごみ箱の内袋として利用している人もかなり多いのでは? このような事情から「レジ袋が必要視されている実態がある」と認めている自治体もあります。ある種の“生活必需品”になっているというわけです。

 現在の状況から、レジ袋の使用量をさらに減らしていくためにはどうすればいいのか。このような課題に対する自治体の回答で散見されるのは「消費者、事業者の理解を得る」というもの。経団連もまた「政府・地方自治体等が率先して国民理解の醸成に努める」べきだとの立場を示しています。

 しかし、「レジ袋に係る調査」(平成28年度)で、一部の都道府県は次のような回答を行っており、「レジ袋削減の取り組みは、そもそも何のために行われているのか」と疑問を抱いてしまう人がいるのも当然かもしれません。

  • 秋田県:説得力のある呼びかけを行うため、レジ袋の削減による二酸化炭素排出量の削減効果を明確に示したデータ(資料)を提示・公表していただきたい(県内市町村からも要望あり)
  • 埼玉県:レジ袋削減の目的、施策の位置付けを踏まえ、国における今後の取組についてご教示いただきたい
  • 北海道:レジ袋の削減のみを普及啓発するのではなく、購買全般における簡易包装の推進や容器の再利用等も取り入れた普及啓発も検討した方がよいと思われる

※いずれも「その他の課題に対する回答」より

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