第52回 「JINS MEME」で何が分かるのか“ウェアラブル”の今(2/2 ページ)

» 2015年12月12日 10時30分 公開
[松村太郎ITmedia]
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本を読むときの姿勢をなんとかした方がいい

 まずは、ボディのデータから見ていこう。

 このように時系列のグラフにすると分かりやすいが、立っているときと座っているときで、如実に緩急がつくのが活動量だ。行きの電車は朝早くにもかかわらず座れなかったため、活動量が上にへばりついている。一方、空港で一息ついた際、そして飛行機の中、運転中も、べたっと活動量がゼロになっている。

 一方姿勢については、クルマの運転中は顔を上げて前を向いているせいか、比較的良い値が出ている。空港に着いてからと飛行機の中は、目を下に落として読書をしていたため、「姿勢が悪い」と評価されてしまった。確かに、姿勢良く読書をするというのは、小学校の国語の授業で音読に当てられたときの、あの姿勢(両手を伸ばして顔の正面に教科書を持ってくる姿勢)ということだろうか。

 青い池でも旭山動物園でも、基本的にはカメラのファインダーをのぞいて写真を撮っていたのだが、そのときの姿勢が悪い、というのはなんだかかっこうが悪いということだろうか。この自分の行動を振り返りながらJINS MEMEのデータを振り返ると、素人であっても、あのときの姿勢は良かった、本を読むときはもっとこうしよう、という反省ができるのだ。

旭山動物園のペンギン 旭山動物園のペンギン。もう少し雪が積もると、おなじみとなったペンギンの行列が見られるとのことだった

朝起きて、読書で集中力が高まっていた

 次はマインドだ。こちらも実際の行動と照らし合わせると、面白い結果を得ることができた。一番面白かったのは集中力だ。

 朝は5時に起きてメガネをかけ始め、出発したのは5時半頃。集中力は中位だったが、移動しながらだんだん目が覚めてきたのか、ターミナルに着いたときにはエンジンがかかり終わった、といったところだろうか。

 その後、ターミナル、機内で読書をしていたため、集中力は高い状態を維持していたようだ。確かに悪いながらもさほど姿勢は変わらず、また視線も本に落としたままだったことが、そういう分析につながっていたのだろうか。

 もちろん、集中力を高めようとしていたわけではなく、ただ本を読んでいただけだが、裏を返せば、姿勢や視線で集中力を高める振る舞いを会得することもできるのかもしれない、という考えも浮かぶ。

 JINS MEME向けにはウォーキングに続いて、コアマッスルを鍛えるアプリも登場予定で、いずれもボディの鍛錬のためのものだが、マインドの鍛錬のアプリ、という可能性も開けるのではないだろうか。

雪上ドライブで集中力が削られている様子も明らかに

 さて、空港に着いてからの集中力は、興味深い。というより、若干ゾッとするデータを突きつけられた。

 11月25日、空港に降り立ったときには旭川は一面の銀世界、−11度という環境。30センチというしっかりとした量の雪が積もり、すでに街中も含めて圧雪路になっていた。筆者の住むカリフォルニア州バークレーは雪が降らない場所なので、そもそも慣れていない雪上のドライブを余儀なくされることになった。

 雪上ドライブはグラフ中の赤い領域で、午前中のうちでも合計2時間ほどの運転をしているが、集中力がぐんぐん下がっていることが分かる。旭山動物園に着いた頃には、朝起きたときよりも集中力が下がっている状態になっていたとは驚きだ。

 決して自分では眠気を感じているわけではないし、疲れたとも感じていなかった。しかしデータの上では、集中力が途切れつつあったことを示している。だからといってすぐに事故を起こすわけではないし、もちろん起こさないよう安全運転を心がけている。しかし自分では感じない変化が起きていたとすれば、それに気づかなかったことが衝撃的だったのだ。

 本来事故を回避したいという点から、事故時のJINS MEMEによる集中力分析を行うのは難しいかもしれないが、集中力の低下と事故の相関関係はぜひ知りたいところだ。ちなみに、JINS MEME ES向けに、運転中の眠気を通知するアプリが既に用意されており、安全運転に役立てる事ができる。

自分の状態を見つめることは、未来のアイデアになり得る

 マインドについては、活力と落ち着き、という2つの指標も取れる。

 特徴的なのは、フライト中の活力の落ち込み方。座れなかった電車移動と対照的である点が面白い。またドライブについても、雪上ドライブ開始時は少しわくわくしていたが、実際の大変さに直面して意気消沈している、という様子までは読み取ることができた。それにしても、ペンギンで活力が上がりきっているのはどうなのだろう。

 本稿では、JINS MEME ESで取得したデータと、スケジュール、筆者の記憶と心象、というあまり科学的ではない相関を比較することにしていたため、JINS MEMEのデータが各種指標のパラメータにどのように関係しているのかには特に触れていない。こちらについても、取材を通じて紹介できる範囲でお伝えできればと思う。

 ただ、自分の中で、スケジュールや行動について、仮説を立てるには十分なデータがそろっているとも言える。例えば朝、いち早く集中力を高めるにはどうすればいいか、運転中の集中力を保てる自分なりのドライブプランの立て方、フライト中の活力アップ法など、考えたり、試したりするきっかけを与えてくれているからだ。

 JINS MEMEのAPIは現在、iOS向けに公開されており、今後Androidも含め、開発者がJINS MEMEのデータを活用するアプリを作ることができるようになっていく。個人的に欲しいのは、マインドやボディのパラメータを意識したスケジューリングアプリがあると面白いんじゃないかと思っている。

 こうした発想が浮かぶことからして、JINS MEMEは単なるウェアラブルデバイスではない、「プラットホームとして面白い存在」になっているのではないか、と感じている。

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