スルガ行員からの「融資の見返り要求」LINE入手 第二の“かぼちゃの馬車”「ガヤルド事件」の裏側を元従業員と販売会社が激白スルガ銀行不正融資事件シリーズ(後編)(1/2 ページ)

後編では、スルガ銀行、ガヤルド元従業員、販売会社を取材しました。

» 2018年08月20日 12時00分 公開
[Kikkaねとらぼ]

 スルガ銀行による不正融資問題が世間を騒がせる中、“第二のかぼちゃの馬車”と呼ばれている事件があります。その名は「ガヤルド事件」。ねとらぼ編集部では、被害に遭ったオーナー達の証言(前編)をもとに、スルガ銀行、ガヤルド元従業員、販売会社を直撃。事件はなぜ起こったのか、シリーズ後編では業者側から見た事件の真相に迫ります。


スルガ銀行 スルガスキーム 不正融資 ガヤルド スマートデイズ スマートライフ かぼちゃの馬車 ゴールデンゲイン サクト ガヤルド事件を簡略に表した図(図はシェアハウス物件の場合)

販売会社X社代表「ガヤルドを紹介したのはスルガ銀行」

 シリーズ前編では、被害者オーナー達から「販売会社X社にも責任がある」との声が噴出していた販売会社X社ですが、代表が「身の潔白を証明したい」と編集部の取材に応じました。

――まず販売会社の立ち位置を簡単に教えてください。

X社販売会社は、サブリース会社の物件を顧客に紹介するのが仕事です。契約が成立すれば、サブリース会社から報酬が支払われます。

――スルガ銀行絡みのサブリース案件を取り扱うようになったのはいつごろからでしょうか。

X社2016年の7月ごろからです。当時スマートデイズ(旧スマートライフ)はシェアハウスで業績を伸ばしていたのでとても有名でした。東京でのサブリースの利回りが平均4〜5%のところ、かぼちゃの馬車は7〜8%に設定していましたから、成り立てばかなり良い条件だったと思います。スルガ銀行からも「スマートデイズという売り主がいる」と紹介されました。

――ガヤルドについてはいかがでしょうか。

X社ガヤルドもスルガ銀行ミッドタウン支店からの紹介です。もともと面識はありませんでしたが、スルガ銀行が融資をする物件ということで、安心して顧客に紹介できるだろうと考えていました。しかし結果的に弊社も信用を失うこととなってしまいました。

――ガヤルドのサブリースが破綻したときの様子について教えてください。

X社2017年6月末にガヤルドの床西社長から「明日顧客に通知書を出します」という連絡がありました。内容は、「サブリースの費用、土地の費用、建物が建つまでの費用負担が明日からできません」という一方的なもので、大変困惑しました。

――破綻の予兆はありましたか。

X社ありませんでした。5月までは普通に物件を販売していたのになぜ……と。こんな経験は個人でも会社としても初めてだったのでかなり動揺して、とにかく床西社長に会いに行きました。

――床西社長とは会えましたか。

X社はい。「資金繰りが回らなくなってしまって、申し訳ない」と謝っていました。しかし理由を聞いても「お金がなくなったので払えない」と答えるばかりで具体的には語りませんでした。今後については、「スルガ銀行以外の金融機関やファンドにもあたって、3億円ぐらいはめどがついた」と、正常化に向けて動いていることをアピールしていました。ただちょっとおかしな点もありました。

――おかしな点とは。

X社対応があまりにも落ち着いていたんですよね。数十億単位の案件に関するトラブルを抱えたら、普通は取り乱すと思うのですが、床西社長はかなり冷静で。私がまだ何も言っていないのに、会社の通帳を全部用意して口座に何も残っていないことを確認させたり、ある意味で“手慣れている”と思いました。

――床西社長はどういう人なのでしょうか。

X社もともとは、あるマンションシリーズを販売していたマンションデベロッパーです。過去にも会社を倒産させていて、今となっては今回も計画倒産ではないかと思います。ガヤルドに関しては、スマートデイズのやり方をマネして作った法人なのだと思います。しかしガヤルドは会社というよりも、不動産ブローカーがガヤルドという看板の軒先を借りているという感じで、紀尾井町にあったオフィスはかなり面積が広いのに対し、従業員は数人しかおらず、がらんとした印象でした。

――ガヤルド事件による被害は販売会社にも出ているのでしょうか。

X社先ほどもお話した通り、顧客の信用を失ったというのは非常に大きな問題です。弊社はサブリース案件の紹介だけでなくさまざまな不動産案件に携わっていますが、ガヤルド事件の影響がさまざまなところへ飛び火しています。またガヤルドから支払われるはずだった紹介の報酬も支払われていません。

――ガヤルドに対して何か措置を取る予定はありますか。

X社未払いの紹介料に関しては既に顧問弁護士を通じて民事訴訟を起こしていますが、お金は返ってこないと思います。現在床西社長は顧客から預かった建物の建築費(数億円規模とみられる)と共に失踪しており、弊社ではご実家に連絡させていただいたりして、地道に行方を探しています。

――被害者オーナーたちからは、「ガヤルドから報酬をもらっていないのに、X社が紹介料を支払うのはおかしい」という声も上がっています。

X社ガヤルドから報酬をもらっていない案件があるのは事実ですが、顧客側からすると「新しいお客さんを紹介した」という事実があります。そのため、顧客との信頼関係を保つためにも弊社が持ち出す形で紹介金をお支払いしています。

スルガ銀行から「見返り融資」の提案

――ガヤルド事件ではスルガ銀行の責任も問われています。

X社私は事件の主犯がスルガ銀行だと考えています。多くの行員がパッケージ作りに関与し、むちゃくちゃな融資に加担していました。

――詳しく教えてください。

X社サブリース不正融資問題のキーワードは「1〜2億円までの物件」「東京23区と神奈川県の一部のエリア」「利回りは7〜8%」の3つです。この3つを満たした物件であればスルガ銀行は融資するといわれていました。だからガヤルドを始め、サブリース会社はそうしたプランをスルガ銀行に持っていくのです。それを行員がチェックしてサブリース会社とスルガ銀行が二人三脚で作ったパッケージをスルガ銀行の行員から販売会社に渡していました。今回の問題にスルガ銀行は大きく関わっています。

――サブリースの問題が明るみに出ると、販売会社やサブリース会社が顧客の通帳を書き換えているという不正も発覚しました。

X社スルガ銀行の口座情報の書き換え自体は、サブリース案件以外でもよく知られている話でした。資産証明をコピーで済ませているのはスルガ銀行だけだったので、他の銀行では行えない不正だと思います。弊社は技術を持っていなかったので口座の書き換えを行ったことはありませんでしたが、ガヤルド事件ではガヤルドが口座情報を改ざんしていたと聞きました。


スルガ銀行 スルガスキーム 不正融資 ガヤルド スマートデイズ スマートライフ かぼちゃの馬車 ゴールデンゲイン サクト スルガ銀行が顧客に配布していた資料には「資産は通帳原本などにて確認する」とあるが、実際にはコピーでの融資が横行していた(被害者オーナーBさん提供)

――融資については行員から交換条件を出されることもあったようですね。

X社これもスルガ銀行ならではです。弊社の場合、行員からLINEで「スルガ銀行のクレジットカードを顧客に作らせて」という指示が来ていました。具体的には「スルガのVISAカードのプラチナ年会費6万 ブラック年会費12万どちらか入ってもらいたいです…」「VISAなんとか5000円のにできませんか」という感じです。貸し手側で立場の強い銀行側が「優越的地位の濫用」を行っていると感じました。弊社から「スルガ銀行のクレジットカードに入ってください」という営業はできないので、行員から営業してもらいました。こうした見返り融資は問題だと思います。


スルガ銀行 スルガスキーム 不正融資 ガヤルド スマートデイズ スマートライフ かぼちゃの馬車 ゴールデンゲイン サクトスルガ銀行 スルガスキーム 不正融資 ガヤルド スマートデイズ スマートライフ かぼちゃの馬車 ゴールデンゲイン サクト 行員から送られてきたLINE(X社提供)

――行員について他にも気になる点などはありましたか。

X社ローンの名目を勝手に考えたり、「エビデンス(口座の金額)をいくらにしろ」と指示をしてきたりと問題はありましたが、中でも気になったのは、行員が地方営業に行く際の交通費を販売会社が立て替えていたことです。

――通常は銀行側か顧客側が負担するのではないでしょうか。

X社普通はそうだと思うのですが、LINEで「交通費は販社さんに負担してもらってます」「銀行の建前は、お客さんからもらうことになってるので、経費が出ないんですよ……」というメッセージが送られてきました。


スルガ銀行 スルガスキーム 不正融資 ガヤルド スマートデイズ スマートライフ かぼちゃの馬車 ゴールデンゲイン サクト 行員から送られてきた交通費の支払いを求めるLINE(X社提供)

――交通費は手渡しですか。

X社領収証の画像をLINEしてもらって、行員の個人口座に振り込んでいました。その際なぜかスルガ銀行以外の個人口座を指定されました。


スルガ銀行 スルガスキーム 不正融資 ガヤルド スマートデイズ スマートライフ かぼちゃの馬車 ゴールデンゲイン サクト 行員から送られてきた領収書の画像(X社提供)

――一連の事件で一番問題視されている点はどこですか。

X社不動産売買契約の場合、虚偽の内容が含まれていれば契約自体を白紙にすることができます。しかし、不動産の契約と、銀行との融資契約は別で、顧客側からすると、不動産の契約を白紙にできてもローンだけが残る可能性があるということです。

――最後に、今回取材を受けてくださったのはなぜだったのでしょうか。

X社身の潔白を示したかったからです。顧客の中には弊社とガヤルドが組んで一連の詐欺行為を働いたと思っている方もいらっしゃると思いますが、弊社は善意の第三者として物件の紹介を行ってきました。現状、顧客の中には建築物を完成させたいという方もいらっしゃるので、新しい建築会社を紹介したり、弊社としてできることを続けています。


スルガ銀行 スルガスキーム 不正融資 ガヤルド スマートデイズ スマートライフ かぼちゃの馬車 ゴールデンゲイン サクト X社が独自に調査して作成した被害者リストの一部

スルガ銀行「行員が地方に行く際交通費の請求をすることはない」

 こうした状況について、ねとらぼ編集部はスルガ銀行に取材を打診。質問状を送ったところ次のような回答が送られてきました。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2501/29/news009.jpg 高校生のときに出会った“同級生カップル”→「親に頼らん!」と必死に貯金して…… 19年後、現在の姿に反響
  2. /nl/articles/2501/31/news120.jpg 大野智さん巡る悪質“逮捕デマ”巡りSTARTO社が発信者情報開示請求 「株式会社嵐」代表は「一呼吸おいてよく考えて」と心境吐露 
  3. /nl/articles/2501/31/news085.jpg “自分を醜い”と感じてきた49歳女性が…… “別人級の大変身”に感動 「衝撃的だった」「信じられない」
  4. /nl/articles/2501/31/news185.jpg 大谷翔平、“消防士たちとの5枚のショット”に反響 「どの消防士より屈強」「これは期待の新人」
  5. /nl/articles/2501/30/news026.jpg 普通の折り紙1枚を、パタパタ折っていくと…… プレゼントにぴったりな美しいアイテム完成に「すげぇつくりたい」「かわいい」
  6. /nl/articles/2501/31/news014.jpg 手芸で余った大量のハギレ → あまさず活用する“驚きの方法”に反響 「ナイスアイデア」「考えたこともなかった」
  7. /nl/articles/2501/31/news050.jpg 「許されると思ってんの?」 スマホのアラームを設定→翌朝…… “絶望の通知内容”が430万表示 「ほんとこれ」
  8. /nl/articles/2501/30/news047.jpg 「死ぬほど笑ったw」 “ほろよい”限定デザイン → 人気ゲームの“例のロゴ”に見えると話題に まさかの公式も反応「ほろよい うま」 投稿者に話を聞いた
  9. /nl/articles/2412/09/news077.jpg 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  10. /nl/articles/2501/29/news187.jpg 「一生自慢できる」VTuberの配信中に“33万分の1の奇跡”が発生 ななしいんく・柚原いづみ、視聴者全員を驚愕させ大反響「徳の積み重ねが実った」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 風呂に入ろうとしたら…… 子どもから“超高難易度ミッション”が課されていた父に笑いと同情 「父さんはどのようにしてこのお風呂に入るのか」
  2. DIYで室温が約10℃変わった「トイレの寒さ対策」が310万再生 コスパ最強のアイデアへ「天才!」「これすごくいい」
  3. 岡田紗佳、生配信での発言を謝罪 「とても不快」「暴言だと思う」「残念すぎ」と物議
  4. スーパーで買った半玉キャベツの芯を植え、5カ月育てたら…… 農家も驚く想像以上の結末が1300万再生「凄い」「感動した」
  5. 東京藝大卒業生が油性マジックでサンタを描いたら? 10分で完成したとんでもない力作に「脱帽です」「本当にすごい人」
  6. 定年退職の日、妻に感謝のライン → 返ってきた“言葉”が約200万表示 大反響から7カ月たった“現在の生活”を聞いた
  7. 【ヤフオク】“3万円”で購入した100枚の着物帯 →現役着付師が開封すると…… “まさかの中身”に驚き
  8. 「立体的に円柱を描きなさい」→中1の“斜め上の解答”に反響「この発想は天才」「先生の優しさも感じます」 投稿者に話を聞いた
  9. 「すんごい笑った」 “干支を覚えにくい原因”を視覚化したイラストが勢いありすぎで1700万表示の人気 「確かにリズム全然違う!」
  10. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. ドブで捕獲したザリガニを“清らかな天然水”で2週間育てたら…… 「こりゃすごい」興味深い結末が195万再生「初めて見た」
  2. 「配慮が足りない」 映画の入場特典で「おみくじ」配布→“大凶”も…… 指摘受け配給元謝罪「深くお詫び」
  3. 母「昔は何十人もの男性の誘いを断った」→娘は疑っていたが…… 当時の“モテ必至の姿”が1170万再生「なんてこった!」【海外】
  4. 風呂に入ろうとしたら…… 子どもから“超高難易度ミッション”が課されていた父に笑いと同情 「父さんはどのようにしてこのお風呂に入るのか」
  5. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  6. 市役所で手続き中、急に笑い出した職員→何かと思って横を見たら…… 衝撃の光景が340万表示 飼い主にその後を聞いた
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. DIYで室温が約10℃変わった「トイレの寒さ対策」が310万再生 コスパ最強のアイデアへ「天才!」「これすごくいい」
  9. 「こんなおばあちゃん憧れ」 80代女性が1週間分の晩ご飯を作り置き “まねしたくなるレシピ”に感嘆「同じものを繰り返していたので助かる」
  10. 岡田紗佳、生配信での発言を謝罪 「とても不快」「暴言だと思う」「残念すぎ」と物議