4月某日、下北沢のとあるバーでユニークなイベントが開催された。ホームレスの男性が1日限りで店長を務める、その名も「ホームレスBAR」だ。ホームレスの人が店長……非常に気になる一方で、大変申し訳ないが、きちんと接客できるのか、衛生的に問題はないのかと、おそるおそる参加した。当日の模様、そして主催団体「無職FES」の代表、岩井祐樹さんを取材した。
店長なのに接客の表情は固い
店長のタナカさん(仮名)は杉並区在住、雑誌の販売を行っている。在住といっても、住まいは個室ビデオや漫画喫茶、そして駅の構内。雑誌はホームレスの自立を支援する「BIG ISSUE」。タナカさんは無職、ホームレスなのだ。そんなタナカさんが、この日は下北沢にあるおしゃれなバーの店長になった。これまで飲食店に勤めた経験はない。開店の数時間前に、近くの銭湯で行われた打ち合わせで店内での動き方を頭にたたきこんだ。いかにも料理人が着ていそうな白のエプロンに着替え、胸ポケットにはメモとペンを忍ばせている。言葉は悪いが意外な清潔感を感じ、ひと安心した。

開店してまもなく、店内はお客さんであふれかえった。席が足りず、地べたに座る若い客も。タナカさんも忙しくなってくる。「すいませーん」と、お酒を飲みに来た客から次々と声がかかる。「はい」と小さく答え、オーダーを聞き、急いでメモを取る。オーダーを復唱し、バーカウンター越しにオーダーを通す。接客のときの表情は固く、オーダーを通すときもどこか恐縮しているような感じだ。接客のすきま時間に話しかけても、あまり目を合わせてくれない。警戒されているのではないかと思うほどだ。バーの店長なんて初めてだから緊張しているのだろうか。もちろんそれもあるだろうが、基本的に人と接するとき、タナカさんはとてもぎこちないのだ。
カウンターから出てきたお酒を持って、伝票とテーブル番号を照らし合わせようとするがうまくいかず、店内を行ったり来たりすることも。ただでさえ超満員だというのに、店長がこんな調子だからお客さんは待たされ、乾杯もできない。しかし文句を言う人は誰もいない。みんな、タナカさんに会いに来ているのだ。開店して30分ほどたったころ、タナカさんが客席の中心に呼ばれ、自身のホームレス生活について語り始めた。騒がしかった店内が静かになった。
ホームレス生活の実態

タナカさんは8年ほど前、新宿中央公園に出てきた。「手元にある酒とたばこが切れたら死のうと思っていた」。死に場所を探すために東京に出てきたという。タナカさんは21歳から41歳まで、某メーカーの工場で働いていた。しかし工場長と折りが合わなくなり、クビになって無職の身に。その後、1〜2カ月ほどでお金が尽きた。会社組織の中では働けない、だからといってほかに食いぶちを作る方法もない。「あとはなるようになれ」と身分証明書の一切を実家に置き、親や兄弟にも連絡せずに出てきた。「きっと家族にはもう死んでいると思われている」。これからも連絡を取ることはないそうだ。
死ぬために東京に出てきたタナカさんがBIG ISSUEの販売を始めたきっかけは、公園の炊き出しだった。酒もたばこも尽きかけたころ、公園の炊き出しにBIG ISSUEのスタッフが販売員募集に来て、もう1回やってみようと思ったのだという。現在もBIG ISSUEの販売は続けており、1日にだいたい10冊ほど売る。電車賃を引くと、手元には1日1000円ほどが残るそうだ。朝食はソーセージマフィンが2つ、昼は食べず、夕飯は牛丼。週に1〜2日は個室ビデオ店か漫画喫茶に泊まり、そのときは少なくとも3回はシャワーを浴びる。残りは駅で寝ているが、熟睡はできないそうだ。
コメントランキング
「ちいかわ」で好きなキャラクターは?【2026年版・人気投票実施中】(投票結果) | 漫画 ねとらぼリサーチ
「都会すぎず田舎すぎない」 永住したい“京王線沿いの街(駅)”上位に「街として完成度高い」「住んだことあるけどまじで住みやすい」の声(1/3) | 住まい ねとらぼリサーチ
演技力がすごいと思う「韓国の男性俳優」は?【2026年版・人気投票実施中】(投票結果) | 芸能人 ねとらぼリサーチ
「ほぼ東京なんだよな」 永住したい“千葉県の街”上位に「都内までスイスイ」「色々ちょうど良い」「引っ越す予定はない」の声(7/7) | 千葉県 ねとらぼリサーチ:7ページ目
「まさかの組み合わせだけど……実はウマすぎ!?」 「カップワンタン」に合う“最強ご当地フード”選手権! あなたが一番食べてみたいのは?【人気投票実施中】(投票結果) | 国内 ねとらぼリサーチ