神戸連続児童殺傷事件を起こした「元少年A」による手記「絶歌」出版の是非をめぐって物議をかもしている中、出版元の太田出版は6月17日、代表取締役社長の岡聡名義で「『絶歌』の出版について」と題したコメントを発表。出版に至った経緯と批判に対する理解を求めている。

コメントでは「なぜ遺族の了解を取らずに出版したのか」「遺族の気持ちをどう考えているのか」「なぜあのような猟奇的殺人者の本を出すのか」といった批判があったことを紹介。手記は「本人の弁解の書」でもなければ、「猟奇殺人を再現したり、忌まわしい事件への興味をかき立てることを目的にしたもの」でもなく、「加害者本人の手で本人の内面を抉り出し、この犯罪が起きた原因について本人自身の言葉で描いたもの」であると反論している。
事件が前例のない残虐で猟奇的なものだったため特殊な事例と思われるが、「どこにでもいる普通の少年」であり、「そこには大人の犯罪とは明らかに異なる少年期特有の性的衝動、心の揺れなどがあった」と出版側は分析。「根底には社会が抱える共通する問題点」が潜んでおり、今後同様の犯罪が起きないためにも「そこで何があったのか、たとえそれが醜悪なものであったとしても見つめ考える必要」があったとし、「加害者の考えをさらけ出すことには深刻な少年犯罪を考える上で大きな社会的意味がある」と考え、最終的に出版に踏み切ったと説明している。
遺族に対して出版を知らせなかったことについては、「出版それ自体の反響として大きくマスコミに取り上げられるであろうこと」やそれに伴い「遺族の心を乱す」と分かっていながら出版を断念することは考えなかったとも。出版の意義を理解してほしいと呼びかけている。
手記が出版されてからは「事件を知る上での貴重なサンプルとなる」と評価する声がある一方、「遺族の気持ちを踏みにじった」「事件を金儲けにした」といった批判が多く、その波紋は収まっていない。
遺族側から手記の回収要請が出されていたが、「多くの方に読まれることにより、少年犯罪発生の背景を理解することに役立つと確信しております」とあるように、回収する意向はなく、今後も継続して重版を重ねてしていくことを示したものと思われる。

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