10月13日に警視庁が、オンラインゲーム「ドラゴンクエストX」でチート行為に関わったユーザー5人を、被疑者として書類送検したことを発表しました。容疑は「私電磁的記録不正作出・同供用罪」および「私電磁的記録不正作出幇助・同供用幇助罪」。ゲームの公式サイトでも、齊藤陽介プロデューサーが「チート行為はゲーム上の規約違反だけではなく、現実世界の違法行為として罪に問われる場合があります」とコメントしています。

各所の報道によると、27歳の被疑者男性が2015年3月ごろに、ゲームサーバーのセキュリティホール(現在は修正済み)を発見し、不正なアクセスでアイテムを入手する手口を開発。ほか4人の被疑者にも教え、全員がアイテムを他のプレイヤーにゲーム内通貨で販売し利益を得ていたとされています。チート行為の実行と、その勧奨および手助けが、前述の罪に相当すると判断されました。
具体的な手口は、本来製作が難しい武器を、チート用外部ツールで容易に量産するもの。同作の装備品はプレイヤーが「職人」となって生産することができ、ミニゲームの経過に応じて、失敗もしくは「★なし」〜「★★★」と「できのよさ」が異なる成果が出ます。大成功時にできあがる最良の「★★★」製品は、バザーを介して他のプレイヤーに高額で売れるものの、「★★」以下は相場が安くなり、原価割れの価格で取引されることがほとんど。ゆえに、工夫して大成功率を高め利益を増やすのが、職人の腕の見せどころです。
大成功率を高めるうえで、重要なのが「職人必殺技」。これは装備の生産開始時に一定の確率で発動可能となり、適切な局面で使うと大成功が出やすくなるもの。被疑者たちは発動時のデータを解析して不正にサーバーへ送信し、必殺技を常時使い続けられる状態を実現していたとのことです。特に鍛冶職人の必殺技は強力で、もしその状態であれば「★★★」の武器を確実に作れます。
2015年後半には、一部のプレイヤーの間で、両手剣「スレイプニール」の相場が、製作費に対し不当に安いことが疑問視されていました。そして同年11月、被疑者と同様と思われるチートに関与してアカウントを永久停止されたプレイヤーが、ネットで手口を暴露したことから事態は明るみに。これを受けて、運営の技術責任者が公式サイト(12月11日掲載内容)で経緯を説明しています。

提示されたスレイプニールの生産データを見ると、平均50%の「★★★」完成率に対し、チート利用者の完成数が飛び抜けて多いことが分かります。彼らにより平均値が引き上げられていますが、本来は大成功率が30〜40%あれば利益が出たはずの商材。チート利用者が容易に「★★★」製品を量産し安売りしていたことで、正規の方法で生産していたプレイヤーも相場に合わせて価格を下げざるを得なくなり、損失を被っていたことになります。
運営は2015年11月から警察に相談を行い、慎重に捜査結果を待って今回の結末を告知したとのこと。チート行為が原因によるインフレなど、ゲーム内経済全体への影響はほぼないとされていますが、一部の正規プレイヤーが不利益を被ったことは事実です。筆者はいち冒険者として、「規約違反だから」「違法だから」だけでなく、「全プレイヤーが楽しく遊ぶ」ためにもチート行為は厳禁と考えます。
(C)SQUARE ENIX
(沓澤真二)
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