テレビ東京のドラマ24「バイプレイヤーズ 〜もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら〜」。第12話は「バイプレイヤーとバイプレイヤーズ」。
11話では「それでいいの?」事案がたくさん出ていました。干されるっておかしくない? 究極の商業映画ってなに? なんで鬼屋敷にこだわるの?
ほんとどうなるのかと思いきや。きっちり全部まとめてくれました。「この6人の、こういうシーンを見たかったんだ」というのをがっちりおさえた、最終回です。
今までのおさらい
名脇役6人が本人を演じるドラマ。遠藤憲一さん、大杉漣さん、田口トモロヲさん、寺島進さん、松重豊さん、光石研さん。
6人が業界の裏ボスに、撮っていた映画「バイプレイヤーズ」を諦めて、究極の商業映画を作れ、と言われたのが前回。大森南朋さんが伝言役として、6人の前に大金を持って登場。
さあどうする、というところでOKを出してしまう大杉漣さん。映画は大ヒット、日本アカデミー賞作品賞を獲得。しかしその壇上で、大杉さんはかつての「バイプレイヤーズ」の監督、鬼屋敷に刺されてしまう。
大杉漣が信じたもの
……という出来事の種明かしが今回。以下ネタバレ。
※以下、ネタバレ注意
ネタバレ1・大杉漣さんの夢だった
大森さんがお金を持って現れた時に寝落ち。「OKをして映画を撮って、刺されて10年後」のパートまでが全部大杉さんの夢。

10年後俳優は辞めてもシェアハウスを続けている、という夢。これはこれで見てみたいけども
伏線として、今まで何度もドラマ内で、大杉さんの寝落ちシーンがちゃんと入っているのがうまい。
わざわざ夢オチにしたのは、大杉さんの本音を表現したかったからでしょう。今までは1話からずっとウソばっかりで、何考えてるのか分からなかったけど、夢の中のことはそのまま受け取っていいはず。
とても印象深かった、夢の中の池松壮亮さんの叫び。
池松壮亮「ふざけんな! 何が楽しいんだよ!」「何回舞台に立っても、カメラの前でどんなにいい芝居しても満足しない、ボロッボロになって、死ぬまで芝居に挑もうとする。それがあんたたちの生き方だったはずだろ!」

「銀と金」で主演の池松壮亮さん、見ていて心臓が縮み上がりそうな迫真の怒りの演技
池松さんの姿を借りていますが、これこそが、大杉さんの叫びでもある。死ぬまで芝居に挑みたい、いい作品を残したい。
今までいろんな虚言で立ち回っていた大杉さん。考えていたのは、命がけで演じたい、の1つだけだったから、こんな夢を見た。コメディとしてまとめてはいるものの、池松さんの演技で、俳優魂のリアルさが跳ね上がっています。

「修学旅行じゃないんだからね(by光石研)」修学旅行でいいと思うんだ
もう1つの大杉さんの夢が、俳優仲間みんなと一緒に寝ること。酸いも甘いも知り尽くした男たちが、枕を並べて寝る。気恥ずかしいったらありゃしないでしょう。
でもいくら年をとっても無邪気にはしゃげる時の安心感は、変わらないよ。「修学旅行の夜」は、何歳になってもあると思う。
今までシェアハウス生活で、同じ釜の飯を食ってきた。大杉さんの言う「めちゃくちゃ楽しかった」がギュッと詰まったシーンでした。

大人になると、なかなかはっちゃけられないからね
ジャスミン含めてみんなでバレーしたり、男たちでサッカーしたり。そして最後は枕投げ。
いかつい任侠系の中年男性たちが、笑顔になっているのを見るのって、癒やしだと思う。だって、人生苦楽ある人もこんなに笑える、って励まされるもの。
鬼屋敷と大森南朋の立場と演技
ネタバレ2・フィルム盗難からの流れが全部鬼屋敷のウソだった
「栗卒村」で、田口さんと遠藤さんが鬼屋敷に会ってから。そこから全部鬼屋敷の演出で全てウソだったというものすごいどんでん返し。道理で辻褄の合わない行動が多かったわけだよ!

なかば疎まれ役で、本人自身も自分を卑下していた鬼屋敷監督、最後の最後で株爆あげ
なるほど、だから文春とかが取り上げなかったのね。見直すと、過去回の色んな所に伏線があります。
鬼屋敷が撮った内容が、「バイプレイヤーズ」の脚本的に「正しい」かどうかは、この際どうでもいい(もともと大杉さんの脚本はいまいち、と何度も言われていますし)。それよりも「みんなが満足のいくラストシーンを撮るために、動く」ということに価値があった。
なんで大杉さんが、多方向に迷惑かけてまで、鬼屋敷監督にこだわったのかが、よく分かりました。ここまで仕込んで、俳優たちをだませるのならば、それは名監督だ。役者たちに、よっしゃ撮影続けるか、という気を起こさせるのも、監督の力量だ。

今回の大森南朋さんにほれてしまった人多いのでは
大森南朋さんの立ち回りが、あまりにも素晴らしい。完璧なヒールとして、悪役経験豊富なバイプレイヤーズをだましきりました。
死んだような目の、常に気にくわなさそうな顔で、淡々と汚れ役をこなす大森さん。種明かししたあと、みんなで笑いながら飲みに行ったりしてほしいものです。
ジャスミンの目
最後「なんで役者やってるの?」と言うクリティカルな質問を聞けるのはジャスミンしかいない。
彼女、10年前の「バイプレイヤーズ」に参加しており、6人のソウルを知る数少ない人間でした。参加者であり、観察者。

ジャスミンと役所広司さんも含めて、何の隠し事もない笑顔
ジャスミン視点は、かなり視聴者寄せでした。
「バイプレイヤーズ」は見せ方の難しい作品。そもそも「すごい経歴の人達」の集団なわけで、「シェアハウスを外から見ています」だと、距離が遠く感じてしまう。ファン目線で終わるのは、もったいない。だからと言って、6人の感情に寄せすぎるのも難かしい。俳優経験がないと、共感ができない。
そこで、ジャスミン。6人の生活の中にずけずけ入っていくことができて、かつ距離を置いて箱庭を見ることもできる。
大杉さんがなぜ彼女を家に入れ続けていたのか、という理由は明確には語られませんでした。でも最後のジャスミンの謎解明で、もうそれはいいかなと。だってねえ、10年たってジャスミンの中のモヤモヤも晴れたと考えたら、超大団円じゃん。
第1話の役所広司さんまで。「七人の侍」の話をここで再展開していますが、あれってウソじゃないの? この後作っちゃうの?
見たかったのは「大人の仲良し」

男たちはいつもかっこよくて、そして時々笑顔でキュートだ
うっすらと二期の可能性をほのめかして終わった「バイプレイヤーズ」。
見たかったのは、仲良しなところ。おじさんたちが、時に気を使ってぎこちなく、時にわがままに、時にプロとして、時にゲラゲラ笑いながら。
大杉さんの暴走についていくみんなは、素直すぎるかなと思うことも多かった。でも最後までみんな仲良しで、分裂しなかった。それがこのドラマで一番うれしかったところ。
毎回入っていた「バイプレトーク」など、実際の6人の素顔が入ることで、その仲良し具合にキュンとくる。無邪気に見えて、ありがとうとさよならを一つにしたような深みもある。
BuzzFeed Japanのインタビューでは、大杉さんが「また6人で集まるとしたら、ひとつだけ条件がある。この同じスタッフでやってほしい」「若くて至らないところもたくさんあるけど、いいところもたくさんあるんだよ」と涙ぐんだそうです。ああ、ドラマそのままみたいだ。
ドラマでも、ドキュメンタリーでも、旅番組でもいい。二期目があることを、期待してますよ!
(C)「バイプレイヤーズ」製作委員会
(たまごまご)
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