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K-1の創始者である石井和義氏、いわゆる“石井館長”は突拍子もないアイデアを発信し続けてきた人である。正道会館を立ち上げるや、空手の大会にもかかわらず選手入場時にテーマ曲を使用したり、門弟を総合格闘技の団体に参戦させたり、自分が手掛けたイベント「K-1グランプリ」をテレビの人気ソフトに成長させたり、マイク・タイソンをK-1へ参戦させようとしたり……。
そして、またしても突拍子もないことを彼は思い付く。auブックパス『近代漫画』にて4月28日よりスタートしたマンガ『どるから』の原作は石井館長が担当。その設定は、なんと「石井和義が女子高生になる」である。

Facebookにて石井館長は「自分で自賛するのもお恥ずかしいですが、かなり面白いです」とコメントしているのだが、もはや面白い面白くないの次元じゃない。しらふでは冷静に受け止めきれないストーリーだ。
ファンタジー溢れまくりの同作であるが、それでいて現実に目配せされている点も把握しておきたい。何しろこのマンガ、石井館長が静岡刑務所から出所する場面から始まるのだ。石井館長に関するニュース報道を見て「脱税で捕まったオッサンだ」「ノリカおすすめ水素水を飲まないから……」とニヤつく一般人まで描かれており、臭いものに蓋をするつもりは毛頭なさそう。
そして、話は流転していく。独房の中で一人空手の練習に励み「ワシは二度と空手を裏切りたないんじゃ!!」と心に誓う石井館長が、出所するや、あれよという間に女子高生になってしまうのだ。
彼女の名前は「一ノ瀬ケイ」。K-1を立ち上げた石井館長だけに、因縁を感じる響きである。ちなみに、17歳。しかも、中身は石井和義のまま。だから、普通の女子高生じゃない。ただの女の子に見えるけど一瞬で警備員らに打撃をたたき込んだり、3階から俊敏な身のこなしで飛び降りたり……。「プロデューサー」「プロモーター」としての顔ばかりが印象深かった石井館長が、身体能力をここまで存分に発揮するのも新鮮だ。念のために繰り返すが、原作は石井館長本人である。
もちろん、K-1に縁の深い面々も続々と出演する。サイドを刈り上げてトップをツンツン立たせた頭髪の男(佐竹雅昭に酷似)が登場するし、角田信朗本人がテレビに出て号泣する場面も描写されている。同作は、かなり深く現実社会とリンクしているのだ。
「金持ちケンカせず」に近いイメージを携えていたかつての石井館長だが(ビジネス上のケンカは絶えなかったが)、『どるから』では暴れまくる。相いれない大人やよく分からない不良少年らと相まみえる場面が頻発するのだ。何度も言うが、原作を担当しているのは石井館長本人。ひょっとして、プロデューサー時代も内心はウズウズしていた?
このマンガの1話目は、自分を襲撃してくる不良グループと対峙しながら「なんでワシ、女子高生になってもうたんや〜〜ッ!!」と自問自答しながら構えを取る石井館長がラストシーンだった。
「なんでワシ、女子高生になってもうたんや〜〜ッ!!」って、ハッキリ言ってそんなのはこちらが聞きたい。全く、先の読めないマンガである。突拍子のなさが売りだった石井和義の面目躍如だ。
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