バットマンやワンダーウーマンなど、DCコミックスを代表するスーパーヒーローたちが一同に集結する映画「ジャスティス・リーグ」。その本編内容をめぐり、「降板したザック・スナイダー監督によるディレクターズ・カット版を製作してほしい」という声がファンや作品スタッフから上がっています。

署名は12万人を突破
ディレクターズ・カット版を求めるChange.orgを使った署名活動には11月25日時点で12万人以上が賛同。ザック監督自信、SNSサービスのVero上で、この署名に言及したユーザーに「いいね」を送ったことも話題になっています。
※署名活動ではザック監督と共に降板になった作曲家・ジャンキーXL(トム・ホーケンバーグ)による劇伴の使用も求めている。

ザック監督は署名活動に参加したユーザーに「いいね」を送っている。本人もディレクターズ・カット版製作に乗り気?
加えて、同作で撮影監督を務めたファビアン・ワグナーさんが21日、米ハリウッド・レポーターのインタビューで「公開版の尺は予想以上に短かった」「カットされたシーンを収録したディレクターズカット版に期待したい」「(ザックによる)ディレクターズ・カット版は長くなる傾向がある。だがそれは彼が物語を伝えるのに必要な時間だ」と、公開中の映画が当初ザック監督が意図した形になっていないことに触れ、署名活動を加速させています。
過去作と毛色が違う作品に仕上がっていた
同作はスーパーマンが主人公の「マン・オブ・スティール」に端を発するDCEU(DCエクステンデッド・ユニバース)シリーズの流れをくむ映画。米国では11月17日、日本では11月23日に公開されました。
DCEUの主柱ともなっているのが、「マン・オブ・スティール」と「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生(以下「BvS」)」の2作品。両作はいずれもザック監督の手によるもので、当初は「ジャスティス・リーグ」でも継続してメガホンを取っていました。
ところが今年(2017年)5月、ザックさんは家族の不幸に伴い降板。後任として、「アベンジャーズ」シリーズなど、同じくヒーロー映画の大家として知られるジョス・ウェドンさんが選ばれました(クレジット上では、監督はザックさんのみ)。
監督交代に伴い、配給のワーナー・ブラザーズは、撮影はほぼ完了しており、いくつかの追加シーンの撮影は行うものの、ザック監督のテイストを残した作品になると強調していました(関連記事)。
しかし完成した作品が公開されるや、やはりシリーズ過去作とは毛色が異なることが話題に。過去2作では神話性や荘厳さを感じさせる独特の世界観が特徴でしたが、最新作はどこか「アベンジャーズ」シリーズをほうふつとさせる軽妙なセリフの掛け合いやテンポの良い展開が目立つ快作に仕上がりました。

(C)2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC
「ジャスティス・リーグ」単体として見れば「面白い」
単体として見たときに「決して悪くない」ことが事態をややこしくしているともいえます。そもそもザック監督の作風は熱心なファンを獲得してきたものの、必ずしも万人に支持されていたわけではありません。良く言えば「荘厳」な雰囲気も、一方では「暗すぎる」といった批判を浴びていました。
映画評価集計サイト大手のRotten Tomatoesを見ると、特に2作目「BvS」への批判は顕著で、「ジャスティス・リーグ」の“Fresh(良かった)”評が41%であるのに対し、「BvS」はわずか23%と、かなりの酷評を受けました(※これは批評家による点数で、ユーザーによる評価は「ジャスティス・リーグ」が83%、「BvS」が63%)。国内の映画評価サイトYahoo!映画でも、「ジャスティス・リーグ」が5点満点中4.03点とまずまずの高得点であるのに対し、「BvS」は5点満点中3.23点と、やはり今作に軍配が上がります(評価は全て11月24日23時ごろに確認)。
「BvS」もディレクターズ・カット版は評価されていた
劇場公開版が「監督の当初意図したものではない」として、ディレクターズ・カット版に期待が集まるのは今回が初めてではありません。悪評高かった「BvS」も、劇場公開版から削られた30分ほどのシーンがあり、後にDVD/BD化の際にディレクターズカット版にあたる「アルティメット・エディション」が作られました。追加シーンにより、一部から支離滅裂と批判されていた展開もスッキリと整理され、初めから監督の意図通り公開していれば……とファンの嘆息を誘ったのでした。
しかしながら、「BvS」は劇場公開版の本編尺が約2時間30分もあり、「アルティメット・エディション」は約3時間の超長尺に。劇場における集客回転率低下のリスクを考慮し、配給側が2時間30分に抑えたのは十分理解できる対応でもありました。
今後の対応は
ハリウッド・レポーターの記事ではザック監督によるディレクターズ・カットは3時間〜3時間10分ほどのボリュームになると説明しており、配給側が監督降板を好機とばかりに本編時間の短縮を図ったことは想像に固くありません。米ウォール・ストリート・ジャーナルは関係者筋からの証言として、ワーナー・ブラザーズのCEO・ケビン辻原さんが本編を2時間以内に収めるよう要請したとも伝えています。
いずれにせよ、ザック監督により完遂していれば、かなり違ったものになっていたことは間違いないとみられ、ファンの心境は複雑。また、未収録となった幻の1時間分の映像がどの程度撮影済みだったかも定かではなく、仮にディレクターズカット版が製作されたとしても、当初の構想通りのフィルムが実現できるかは不透明です。署名を受け、ワーナーがどういった対応を取るのかに注目が集まります。
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