はじめに
関西では年末年始になると、「商売繁盛(しょうばいはんじょ)でササ持って来い」という囃子ことばが聞かれるようになります。エビス様をまつる十日戎(とおかえびす)でよく、このことばが聞かれます。
十日戎はその名称の通り、1月10日をピークとしてエビス様をまつる祭事です。関西ではとくに、西宮神社(兵庫県西宮市)と今宮神社(大阪府大阪市)がにぎわう印象です。
ところで、このエビス様、七福神のメンバーとしても有名で、特に大黒天とコンビを組むことの多い印象ですが、どういう神様かご存じでしょうか?
実は、西宮神社のエビス様と今宮神社のエビス様は、素性が全く異なります。
植田麦
明治大学政治経済学部准教授。研究の専門は古代を中心とした日本文学と日本語学。
エビス様は2人いる?
まず、西宮神社のWebサイトを見てみましょう。

西宮神社は福の神として崇敬されているえびす様をおまつりする神社の総本社です。
(中略)
向かって右からが第一殿で、蛭児大神を祀り、中央が第二殿、天照大御神及び明治初年に大国主大神を配祀、左が第三殿で須佐之男大神を奉斎しています。
天照大御神、蛭児大神、須佐之男大神の三神は日本書紀本文によれば御兄弟の神といわれています。大国主大神は式内社・大国主西神社が西宮であるとの謂れから、明治になって配祀されるようになったと考えられます。
ここでは、エビス様は『日本書紀』に現れるヒルコであるとされています。
一方の今宮神社のWebサイトを見ると、

今宮戎神社は大阪市浪速区恵美須西一丁目に鎮座し、天照皇大神・事代主命・外三神を奉斎しています。
(中略)
戎さまは、ご存じのように左脇に鯛を右手に釣竿をもっておられます。そのお姿は、もともと漁業の守り神であり、海からの幸をもたらす神を象徴しています。
今度はコトシロヌシがエビスであると書かれています。
ヒルコ・コトシロヌシともに『古事記』『日本書紀』に登場する神ですが、2つの書物のどこにもエビスという神は登場しません。もちろん、ヒルコやコトシロヌシがエビスであるとは記されていません。一体、どういう事情でヒルコやコトシロヌシはエビスになったのでしょうか?
この記事では、多くの人が知ってるエビス様がどういう神なのかを解説します。
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