NTTコミュニケーションズが「漫画村」などの海賊版サイトへのアクセス遮断(ブロッキング)を行うと発表した件を受け、埼玉県の中澤佑一弁護士は4月26日、同社に対しアクセス遮断の中止を求める訴訟を東京地裁に提起しました(関連記事)。
ブロッキング実施を巡ってはさまざまな議論がありますが、なぜこのタイミングでの訴訟だったのか。同日、記者団の取材に答えた中澤氏は「なし崩しにこのままブロッキングが始まってしまうのを防ぎたかった」と説明しました。

ブロッキングを発表した4社のうち、NTTコミュニケーションズを訴訟相手に選んだのは単純に“自分がOCNを利用していたから”。そもそもOCNの利用契約にはブロッキングについての記述はなく(児童ポルノ関連は除く)、もし実際にブロッキングが行われ、サービスが制限されることがあればそれは契約違反であるというのが中澤氏の主張です。
しかし、それよりも大切なのは「インターネットが自由な情報流通基盤であるということ」と中澤氏。「(海賊サイトが)違法といわれてはいるが、あくまで一部の人にとって嫌なサイトでしかなく、司法の判断が下されたわけではない。そういったものを恣意的な判断で遮断するというのは、日本の法体系ではあり得ない」とし、「今後のインターネットの自由を考えるとなんとかした方がいい」「自分でやるのが一番早かった」と、訴訟に踏み切った理由を語りました。

また政府が4月13日に発表し「(海賊サイトへの対策として)ブロッキングを行うことが適当」との考えを示した“緊急対策(案)”については、「政府はブロッキングの違法性が阻却されるとは言っておらず、あくまで“緊急避難の要件を満たせば”違法性が阻却されるという、当たり前のことを言っただけ。この発表自体に何ら効力はなく、ISP側の責任は変わらない」とも。またブロッキングが決定的な対策になるかどうかについては「日本国内からの通信だけ遮断しても根本的な解決にはならない」と指摘。現状では法律が実態に追い付いておらず、まずは法律の改正や、国際協力など正規の手段で追い詰めていくのが妥当であるとしました。
現在はあくまでブロッキング実施を予告されただけなので“予防請求”という形ですが、今後もし裁判を進めていく中でブロッキングが実施されることがあれば、実損が生じるため損害賠償請求に切り替える予定とのこと。勝算については「負ける理屈はないですよね」(中澤氏)。

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