絵本のなかの「恋」は、どれもお姫様が王子様と結婚して「めでたしめでたし」で終わるものばかりだった……そんな記憶に息苦しい思いを抱いている人は、少なくないのではないでしょうか。岩崎書店が5月21日より刊行する「恋の絵本」は、「脱・プリンセス・ストーリー」を掲げた絵本のシリーズです。第一弾として、文・桜庭一樹×絵・嶽まいこ『すきなひと』(1500円/税別、以下同)、文・辻村美月×絵・今日マチ子『すきっていわなきゃだめ?』(1500円)の2冊が予定されています。

お姫様と王子様だけが「恋」じゃない。
富と地位を持つ「王子様」に守られ求婚される「お姫様」の物語は、今なお読みつがれている一方、子どもたちに性別に縛られた古くさい「理想の幸せ」を押し付けてきた側面もあります。シリーズを企画・編集したライターの瀧井朝世さんは、「恋愛観や結婚観、ジェンダー観が変わりつつある今の世の中で、「好き」という素朴な感情を肯定しつつ、現代の感覚に響く恋の絵本があってもよいのではないか」と考え、「恋の絵本」を立案したそうです。
また、ターゲットは子どもに限らず、大人にも響く内容になっているとのこと。瀧井さんは「大人にとっても、今も心の中にある痛みや切なさに響くもの、慰めや励まし、ときめきにつながるものが出来上がったと自負しています」と述べています。

『すきなひと』表紙
「GOSICK」シリーズなどを手掛けた小説家・桜庭一樹さんの初めての絵本となる『すきなひと』は、「もうひとりのわたし」に出会ってしまうふしぎな夜の物語。「わたしなりの大河ロマン」を1冊に圧縮したそうです。絵は『なんてことないふつうの夜に』などの嶽まいこさん。やわらかい青で描かれた夜のカットが先行公開されています。

『すきなひと』本文カット

「もうひとりのわたし」と「わたし」


(左)桜庭一樹さん(右)嶽まいこさん
『ツナグ』『かがみの孤城』などの著作がある辻村深月さんも、絵本を手掛けるのは今回が初めてだそう。辻村さんが文を担当する『すきっていわなきゃだめ?』は、「子どもの頃、「好きな人、誰?」という話題が苦手でした」と語る辻村さんの違和感が出発点になった作品です。絵は『いちご戦争』『cocoon』の今日マチ子さん。やわらかな影をともなった子どもたちのカットが印象的です。

『すきっていわなきゃだめ?』表紙

『すきっていわなきゃだめ?』本文カット

掃除の時間のどきっとする雑談


(左)辻村深月さん(右)今日マチ子さん
なお、今後は2020年に『まっくろいたちのレストラン』(島本理生・作/平岡 瞳・絵)、『こはるとちはる』(白石一文・作/北澤平祐・絵)、『タイトル未定』(村田沙耶香・作/米増由香・絵)の刊行が予定されています。
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